「自治体システムの標準化」とは、2025年度末までに地方公共団体(自治体)の基幹業務システムを標準仕様に移行させるという、政府主導の取り組みである。現在、事業者のリソース不足などにより、移行が間に合わないシステムを「特定移行支援システム」と位置付け、2030年度末まで支援策を延長している状況だ。
こうした中で、デジタル庁が整備する「ガバメントクラウド」を含め、標準準拠システム移行後の“運用コストの増大”が顕在化している。その要因は、デジタル人材のひっ迫といった外部要因から、度重なる制度改正などの構造的要因まで多岐にわたる。この問題に対してデジタル庁は、見積精査の支援やモダン化の推進といった対策を講じつつ、財政措置のあり方を検討している。
本記事では、デジタル庁が2025年11月13日に開催した主要政策に関する報道機関向けのブリーフィングの中から、自治体システム標準化とガバメントクラウドの現状に関する説明について紹介する。
自治体システム標準化のここまでの歩み
自治体システムの標準化については、デジタル庁のデジタル社会共通機能グループ 参事官である橘清司氏から語られた。
まず前提として、2000年の地方分権一括法の施行により、国と自治体は対等な関係となり、情報システムの構築は自治体の権限と財源に委ねられるようになった。こうした中で現在進められているのが、自治体の基幹業務システムを統一・標準化する政策だ。基幹となる20業務を対象に、国(業務ごとの所轄省庁)が標準仕様書を定め、2025年度までに標準準拠システムへの移行を目指している。
橘氏は、「自治体がどのようなシステムで効率化をするかは、大手ベンダーや地場ベンダーと個別に相談しながら、独自に開発・調達してきた。その過程で、自治体にも高度な専門知識が求められるようになり、かつ職員の数も減少しており、持続可能とは言い難い状況にある。その改善策として検討されたのが“標準化”」と説明する。
契機となったのは、2018年の「2040構想研究会」にて、スマート自治体への転換に必要な要素として、システム標準化が挙げられたことだ。その後、諮問機関である第32次地方制度調査会にて検討され、2021年に「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(標準化法)」が成立・施行。翌2022年に、「地方公共団体情報システム標準化基本方針(標準化基本方針)」が閣議決定されている。
この標準化法は、デジタル庁と総務省の所管である。デジタル庁が“司令塔”として、共通となる標準化基準の策定や移行支援、ガバメントクラウドの提供などを担い、総務省は、自治体との連絡調整や進捗管理、財政を含む支援策を担う。
特にデジタル庁は、技術的な観点での支援を展開し、自治体と“顔の見える関係”を構築するための「標準化リエゾン」を都道府県に1名設置。加えて、標準準拠システムに関わるベンダーと共に事業者協議会を設け、国の方向性や進捗を共有しながら、「意思疎通しながら方向性を決めてきた」(橘氏)という。
実際に標準化が進むことで、制度改正などによる新機能は標準仕様書に沿って開発されるようになり、費用削減と迅速な実装につながる。加えて、システム毎に異なるデータの持ち方や連携項目が一意となり、円滑なデータ移行や連携も可能だ。さらに、「標準化という世界観では、ベンダーロックインで経費が増加していた側面も解消できる」と橘氏。
ただ現状、一部のシステム移行は期間内での完了が困難と見込まれており、加えて移行後の運用コストの増大も問題視されている。「目下の状況としては、有識者からも、本来は10年はかかると言われていた中で、5年で進めるということになり、その期限が今年度末(2025年度末)。各自治体が標準化にシフトして、ガバメントクラウドにリフトする中、『運用経費が増加した』というお叱りの声もいただいている」(橘氏)













