単純な“デジタル需要の拡大”だけではない理由、2025年の最新動向
増え続ける地方のデータセンター、知っておきたい「本当のワケ」
2025年10月01日 11時50分更新
政府が主導し、地方データセンターにも“位置づけの変化”が
ハイパースケールデータセンター、AI/GPUデータセンターと並んで、現在起きているもうひとつの動きが「データセンターの地方分散」だ。従来は東京/大阪を中心に「大都市からアクセスしやすいエリア」に建設されるケースが大半だったが、現在はそれ以外の地方での建設が増えている。
ここには、データセンターを“デジタル社会を支える重要インフラ”と位置付ける政府の意向が大きく影響している。
政府が2023年4月に改訂版を発表した「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」では、国内全域のデジタル基盤整備に向けて、固定ブロードバンド(光ファイバー網など)やワイヤレス/IoTインフラ(5Gなど)の整備拡大と合わせて、「データセンターの地方分散配置」が重要な施策と位置付けられている。
地方データセンターの具体的な整備方針として、政府では「5年程度で十数カ所の地方拠点を整備」すると説明している。具体的にはまず、すでにデータセンターが集中している東京や大阪を補完/代替する「第3/第4の中核拠点」の整備を促進していく方針だ。そのための補助金(デジタルインフラ整備基金)交付なども行っている。
こうした動きは、南海トラフ地震などが懸念される“災害大国”日本でもデータを安全に蓄積できること、さらにはアジアにおける「国際的なデータ流通ハブ」の役割を果たすことを目標として、デジタルインフラを強靱化することを目指したものだ。また、データセンターの地方分散と同時に、日本海側を結ぶ海底ケーブルの敷設、国内/国際海底ケーブルの陸揚局の分散配置も同時に進める方針としており、ネットワークの側面でも強靱化を進める。
データセンターの地方分散化は政府主導で進んでいる(出典:総務省 総合通信基盤局)
データセンターの地方分散に対する政府の後押しは、もうひとつ別の方向からも始まっている。
政府では、2025年2月に閣議決定した「GX2040ビジョン」において、経済活動における脱炭素エネルギーの活用、環境負荷低減の促進を目指す“GX(グリーントランスフォーメーション)”政策を具体化した。これに基づき、脱炭素エネルギーの電源地(発電所)付近に産業集積地を設け、新たなGX産業の発展を目指す「GX戦略地域」制度が創設されており、具体的なGX産業のひとつとして「GX型データセンター」が挙げられている。
現在は、GX型データセンター集積の候補地となる、全国自治体からの提案を募集している段階だ。脱炭素エネルギー(たとえば原子力、風力、太陽光など)の電源地が近隣にあること、データセンター集積に必要な広い敷地が用意できることなどの条件を考えると、おのずとこちらもデータセンターの地方分散を促す結果になるものと考えられる。
GX産業戦略のひとつとして、GX型データセンターの集積地づくりが挙げられている(出典:内閣官房 GX実行推進室)
先に触れたとおり、GPUサーバーを使ったAI処理には大量の電力が必要になる。脱炭素エネルギーの電源地付近にデータセンターを設置し“電力の地産地消”を進めれば、送電時の電力ロスや送電網敷設のコストを抑えることができて効率的だ。
利用する側にとっても、データセンターコスト(土地代)も電力料金も安い地方データセンターが出来れば、十分に魅力的な選択肢となるはずだ。技術的にも、長距離間を低遅延で接続できるオール光ネットワーク(IOWN APN)が登場しており、都市部の企業拠点と地方データセンターを極めて低い遅延時間でつなぐことも現実的になっている。数年もすれば、データセンターを利用する側でも、これまでの“地方データセンター=DR(災害復旧)対策向け”という固定観念を捨てる日が来るかもしれない。
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データセンターは、今や社会にも産業にも欠かせないデジタルインフラとなった。ただし、その位置づけは常に変わり続ける。データセンターを利用する側でも、より戦略的な視点からそれぞれの特徴を把握していく必要があるだろう。








