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最新トレンドから見たデータセンター選び・2025年版

単純な“デジタル需要の拡大”だけではない理由、2025年の最新動向

増え続ける地方のデータセンター、知っておきたい「本当のワケ」

2025年10月01日 11時50分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 近年、日本国内でデータセンター新設/拡大の動きが続いている。大まかに言えば、それは「社会や産業のデジタル化が進んでいる」ことが理由なのだが、そこには単純な需要拡大だけではない“変化”も生じている。

 具体的にどのような変化が生じているのか、また「地方へのデータセンター分散」といった新たな動きが生じているのはなぜか、「知っておきたい2025年の最新事情」をまとめてみたい。

データセンター建設ラッシュの裏側にある“位置付けの変化”

 日本では、数年前から“データセンター建設ラッシュ”と言われるようになったが、この動きは2026年以降、さらに加速する見込みだ。IDC Japanの調査予測(2025年4月発表)によると、国内のデータセンター建設投資額は、2024年のおよそ4000億円から、2026年には6000億円、2028年には1兆2000億円規模にまで拡大するという。

 その背景にはもちろん、国内におけるデータセンター需要の拡大がある。たとえば、国内のデータセンターが提供するサービスの売上規模(国内データセンターサービス市場)をまとめた富士キメラ総研の調査予測(2025年3月発表)では、2024年にはおよそ4兆円だった同市場が、2028年には5兆円を超え、2029年には5兆4000億円規模まで成長するとしている。年平均成長率は6%程度だ。

データセンターサービスの国内市場 2023~2029年予測(出典:富士キメラ総研)

 ただし、こうした需要拡大を「社会や産業のデジタル化が進んだため」と単純に捉えてしまうと、現在起きている“データセンターの位置付けの変化”を見落としてしまうかもしれない。

 富士キメラ総研の予測では、データセンターサービスをカテゴリ別でも分類している。カテゴリ別に見て、特に成長が見込まれているのが、メガクラウドベンダー(ハイパースケーラー)が提供する「IaaS/PaaS」と、GPUホスティングサービスの需要拡大を背景とした「ホスティング」だという。

 つまり「クラウドとAIが需要拡大を後押ししている」わけだが、ここにもさらに細かな要因が影響している。たとえばIaaS/PaaSニーズの伸びに関しては、海外にデータを持ち出さず国内で保管する「ソブリンクラウド」需要も後押しになっているという。また、自治体がガバメントクラウド(IaaS/PaaS)に移行して個別のサーバー運用(ハウジング)を縮小する一方で、大規模なAI活用を行う企業が自社専用のAIインフラを新たにハウジングする、といった動きも出ている。

データセンター向けGPUサーバーや、その冷却に必要な液冷関連製品の高い伸びも予測している(出典:富士キメラ総研)

 このように細かく複雑な動きを見れば分かるとおり、ひと言で「データセンター需要の拡大」といっても、その需要の内実はかつてとは(たとえば10年前とは)大きく違うものになっている。

 そのため、現在およびこれから新設/拡大されるデータセンターは、新たな需要をふまえた特徴を持つことになる。たとえば、大量のAI/GPUサーバーを配置するために欠かせない大容量の電力供給や冷却設備(液冷を含む)の設置、パブリッククラウドや他のデータセンターとの柔軟なネットワーク接続性といった特徴だ。

 そして、利用する側の企業では、「立地」や「価格」だけではない特徴をふまえたデータセンター選択が必要になっている(関連記事:2025年からのデータセンター選びは「5つのトレンド」を押さえよう)

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