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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第843回

NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する?

2025年09月29日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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GPU側に24MBの2次キャッシュを搭載
少ないように感じるが性能的には十分な量

 ダイ内部の詳細が下の画像だ。C2CというのはNVLink C2Cのことである。C2C I/Fは600GB/秒程度の実効帯域があるとする。

ダイ内部の詳細。G-Dieletの左上にVideoとあるが、これはビデオエンコーダー/デコーダーのことと思われる

 もしこれがUCIeベースの物理層の上にNVLinkのプロトコル層を載せているのだとすれば、UCIeが32Gbpsだとすればバス幅は最低150bit、実際には160bit以上を利用しているかもしれないが、インターポーザーを前提としたUCIe Advanced PackageならBump Pitchが25~55μmなので160bit幅だとしても4mm~8.8mmでこれを実装できることになるので、十分現実的な数値である。

 ちなみにGPU側には24MBの2次キャッシュが搭載されているとする。GB200の2次キャッシュは128MBなので、だいぶ少ないという見方もできるが、性能比(ざっくり20分の1)を考えると、むしろ相対的に多いという考え方もありそうだ。

 ところで先程ConnectXは要るのか? という疑問を呈したが、それに対する答えが下の画像である。ConnectXがCPU Dielet側のPCIe経由で接続されているので、GPU DirectといってもCPU側を通ることにならざるを得ないはずだ。

ConnectXは要るのか? に対する回答。ConnectXがCPU Dielet側のPCIe経由で接続されているので、GPU DirectといってもCPU側を通ることにならざるを得ないはずだ。なお、GPU Directの実装方法は不明

 実際に複数台のDGX Spark Systemをネットワークで連携させることを想定しているように見えるが、どこまでこれが現実的なのかはよくわからない。

 下の画像がそれぞれのユニットと、それを誰が提供しているのかを示している。CPU Dielet側はほとんどがMediaTekというか実際にはArmのIPがかなり使われているが、NVLink C2Cと、ディスプレー出力のみNVIDIAからIPの提供を受け、これを組み込むような形になっているようだ。協業にあたっての両社の作業分担がわかりやすくて興味深い。

オレンジがMediaTekないしArmのIP、グリーンがNVIDIAのIPである。ディスプレーコントローラーとNVLink C2CのIPは事前にNVIDIAからMediaTekに提供され、これを利用してS-Dieが構成された

NVIDIAとインテルが協業を発表
GB10のCPUをx86に置き換えた製品が出る?

 ところでなぜ今回GB10の話をしたかといえば、NVIDIAとインテルが協業すると9月19日に突如発表されたためである。GB10はArmベースのSoCだが、両者が共同で開発する「『NVIDIA RTX GPU』を統合した個人向けのx86系SoC」というのは、まさにこのGB10のCPUをx86に置き換えるような構造になる可能性が高い。

 正直言えば、それがBlackwellの世代で湧いてくるのか? というとやや疑問である。おそらくインテルはNova Lake、NVIDIAはRubinの時代にこれを投入するはずだ。ただ技術的には、Arrow LakeにBlackwellも不可能ではない。

 Arrow Lake-Sは下の画像のような構造になっているが、ここからGPUタイルを省き、I/OタイルをPCIe対応からNVLink対応に作り直せば(あとDisplay IPを追加すれば)接続できるだろう。

Arrow Lake-Sの構造。ここからGPUタイルを省き、I/OタイルをNVLink対応にすれば、理論上はBlackwellを載せられる

 ただ問題は、Arrow Lakeの内部ファブリックが600GB/秒に耐えるような帯域を持っていないことだ。I/OタイルはPCIe 5.0 x16+Thunderbolt 4×2の接続を想定しており、全部足しても74GB/秒程度でしかない。これは実効600GB/秒からかなり遠い数字であり、残念ながら非現実的である。

 インテルとの協業でどんなチップが出てくるかはまだわからない。やはり名前はGB86になるのだろうか? 来年以降のお楽しみといったところだろう。

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