エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀のまち散歩 第34回

世界が注目している山口県に新しい観光を! 高校生が「メタ観光」を学んで実践的な観光ワークショップを体験

文●玉置泰紀(一般社団法人メタ観光推進機構理事)

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 「若者活躍による観光力パワーアップ事業」(山口県観光連盟)第2回ワークショップが、2025年9月15日、JR新山口駅近くのKDDI維新ホールで開催された。

 このワークショップは、一般社団法人メタ観光推進機構が運営のサポート、提案に対する審査協力などを手がけ、山口県下5校の高校生たちと開催したものだ。

 ワークショップでは、高校生たちが、午前中にメタ観光モデルコースの作成、午後には海外からのインバウンド観光の事業化プロジェクト造成に取り組んだ。

 プロの事業者やいわゆる“おとな”の議論とは違う、ストレートで新鮮なアイデアが多く飛び出し、審査員として参加した筆者も大いに刺激になった時間を過ごした。

参加した5校の高校生やメタ観光推進機構の6人の理事、株式会社3in、山口県観光連盟、山口県の職員、街づくりに関わる地元企業など皆で記念写真をパチリ

KDDI維新ホール会場で筆者

会場になったKDDI維新ホール

 この企画は、山口県内5エリア(下関市、長門市、周南市、山口市、岩国市)の高校生を対象に、「メタ観光」の視点を取り入れた地域資源の再発見と新たな観光振興策の創出を目指すもの。

 高校生ならではのユニークな視点と発想力を活かし、従来の観光とは異なる魅力的な地域資源を発掘・活用することで、地域への愛着を育み、将来的な観光振興に貢献することを目的としている。

 参加する高校は、下関商業高校、長門高校、山口高校、新南陽高校、岩国総合高校の5校で約30人が、メタ観光を基に新しい観光について考えた。

 2025年8月2日には、第1回キックオフとワークショップを開催。高校生たちとメタ観光マップを作り、新しい観光資源の掘り起こしと観光事業の創出を行う取り組みを行った。わたしの名所ワークショップ、メタ観光スタディーズ(暗渠、ドンツキ、電線)を実際に体験してもらった。

 実作業としては、まず、「わたしの名所」を紹介し、観光マップを試作。さらに、高校生が専門家と共に街歩きをし、観光資源発掘のレクチャーを受ける。そして、オリジナルの「メタ観光マップ」の作成に取り掛かり、自分のプロジェクトを作り込むというもので、これを踏まえて、第2回に改めて参加してもらった。

 山口県の観光といえば、2024年1月にニューヨークタイムズ紙の「行くべき52ヶ所」で、山口市が選ばれたのも記憶に新しい。山口市の山口高校では、山口市にインバウンド観光客を取りこむプロジェクトを発足。YAMAGUCHIの知名度を世界に広げ、「西の京都」とも称される街の奥深さを味わってもらうために、地元はもちろん福岡空港にまで足を運び、独自のリサーチを実施した。

 特に欧米からの観光客は、街に住む人々との何気ない対話に惹かれるという仮説を導き出し、県内の高校生を山口市に集めて観光客と対話する企画を実施した。

 12月25日にもプレゼンテーションが予定され、若者たちが考案した独自の旅行商品やプロモーションツールを、山口県知事や観光事業者などに対して企画提案する予定。

 また、これらのイベントを受け、地域に戻った高校生たちが、地元大学生や観光事業者と連携しながら、事業やプロジェクトの本格的な社会実装をめざしていく。

 メタ観光はこれまでの「観光」にとらわれず、多様化する人々のニーズに対応し、「アニメ聖地」「写真映え」「地形」など、地域に潜在する多様な魅力を観光資源として多層レイヤーのオンライン地図「メタ観光マップ」に可視化することで、地域観光の活性化に寄与する新しい概念。

 参加したメタ観光推進機構の理事は、牧野友衛氏(代表理事) 、真鍋陸太郎氏、菊地映輝氏、伏谷博之氏、齋藤貴弘氏、玉置(筆者)の6名。玉置、伏谷氏、齋藤氏は、9月15日のプログラムのみ参加した。

 「メタ観光スタディーズ」専門家として、吉村生氏・高山英男氏(暗渠マニアックス)、石山蓮華氏(電線愛好家・文筆家・俳優)、齋藤佳氏(ドンツキ協会会長)が参加し、齊藤氏は9月15日も参加した。

 9月15日のワークショップでは、最優秀賞に下関商業高等学校1班、優秀賞に山口県立岩国総合高等学校2班が選ばれた。

最優秀賞の下関商業高等学校1班

優秀賞の山口県立岩国総合高等学校2班

 以下は、当日のワークショップの様子。真鍋理事や菊地理事も各グループの質問に答え、さまざまなサジェスチョンを与えて回った。

 最後に牧野代表理事は以下のように2回のワークショップを振り返った。

「皆さん、本日はお疲れ様でした。

 朝から長時間にわたり、ありがとうございました。私たちがこの企画を依頼された際、最初に言われたのは、『本気で、きちんとした形でやりたい』ということでした。そこで、今回は自治体や国の審査員を務めるような、ナイトタイム観光に精通したメンバーを集めました。

 特に今日のテーマは、夜の観光やインバウンド、つまり外国人観光客向けの内容に焦点を当てています。この機会が皆さんにとって有意義なものになれば、そして良い経験になればと願っています。最優秀賞や優秀賞など、さまざまな議論がありましたが、正直に申し上げて、現時点で『これが正解』というものはありません。

 皆さんがそれぞれ正解を出したと思っても、それで大丈夫です。私たちはむしろ、2030年に向けて、どのようにすればより多くの外国人観光客に来ていただけるかを考えるフェーズにあります。

 今日出てきたアイデアも、試しに実行してみて、どんどんブラッシュアップしていくべきものです。正解や不正解といった概念にとらわれず、自由に考えて進めていただければと思います。

 もうひとつお伝えしたいことがあります。それは『多様な見方』を持つことの大切さです。今回のイベントを通じて、皆さんに新しい視点や気づきを得てほしいと考えています。

 例えば、前回も『電線』『暗渠』『どんつき』といった言葉が出てきましたが、こうした言葉を聞くと、電線や特定の場所に興味が湧いたり、新しい発見があったりすると思います。

 今日も『暗渠』や『どんつき』に関する話題が出ましたが、そういった視点に気づくことで、街の見方が変わってくるのです。これまで知られていた観光スポットも、皆さんの新しい見方によって異なる魅力が引き出されるかもしれません。

 今回の2回のイベントを通じて、多様な見方を身につけていただければと思います。皆さんが直接観光に関わるかどうかはわかりませんが、もし観光に携わる機会があれば、この新しい見方を活かして、訪れる観光客に伝えていただきたいです。

 また、皆さん自身が日本や世界を旅行する際にも、ガイドブックに載っている観光スポットだけではなく、自分たちで楽しみ方を見つけることで、どんな場所ももっと楽しくなるはずです。ぜひ今回の学びを活かして、観光や旅行をより豊かなものにしてください。皆さん、ありがとうございました」

牧野代表理事

■一般社団法人メタ観光推進機構公式サイト
 https://metatourism.jp/
 

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