マルチクラウドKubernetesのTaikunを買収、データ基盤への統合で実現するものは
いま多くのAIプロジェクトが失敗している理由 Clouderaに「成功の条件」を聞く
2025年08月26日 12時30分更新
AIの普及に伴い、データ管理の重要性にあらためてスポットが当たっている。データプラットフォーム大手のCloudera(クラウデラ)も、創業17年目にして大きなチャンスを感じているようだ。同社はこの1年、Kubernetes/コンテナ管理のTaikun、データカタログ/リネージのOctopaiなどの買収を通じて、AI時代のデータのニーズに応じる土台を整えてきた。
そんなClouderaを、AIへの注目を通じて知名度を高めたNVIDIAにたとえるのは、同社でCPOを務めるレオ・ブランニック氏だ。2025年8月初旬、シンガポールで開催されたアジア向けイベント「EVOLVE 2025 Singapore」で、CEOのチャールズ・サンスベリー氏とブランニック氏に、AI時代におけるClouderaの戦略を聞いた。
多くの事例から見る「AIプロジェクトが失敗する理由、成功する条件」
多くの企業がAI導入に向けて積極的に動いているが、順調に進んでいるAIプロジェクトは必ずしも多くはない。Clouderaが実施した顧客調査によると、顧客の96%がAIエージェントによるアプリケーションの構築を計画している一方で、その半数が「失敗に終わる」と予想されているという。
なぜAIプロジェクトは失敗するのか。サンスベリー氏は「『AIを展開すること』だけにフォーカスして、ビジネスプロセスを十分考えることなく急ピッチで進めようとするから」だと分析する。こうした失敗を防ぐために、Clouderaでは“成功企業の知見”を提供していくという。
「成功している顧客から得た知見が(Clouderaに)蓄積されてきた。ビジネスプロセスと技術の両方の観点から、テンプレートやレシピのように実装への道筋を示すようなものを提供する。これを使うことで成功の可能性が高くなるようにしたい」(サンスベリー氏)
ブランニック氏は、成功のためには「データ整備」が重要だと付け加える。
「数年前、生成AIが突然注目を浴びたとき、企業はデータの整備をおろそかにしたままで、こぞってチャットボットを導入して“我々はAIをやっている”とアピールした。AIエージェントの時代になった今も、企業は多額を投じてPoCを展開しているが、データが整備されていないため、本番環境に移行できない」(ブランニック氏)
イベントでは、地元シンガポールの大手銀行であるOCBC(オーバーシー・チャイニーズ銀行)のデータオフィストップが登場した。同社では、プライベートクラウド環境にデータレイク、データサイエンスプラットフォームを構築してAIを活用する土台を整備しており、「すでに新しい売上につながっている」と話した。詐欺検出チームがAIを活用して脅威を識別する作業を効率化したことで、それまで数百人いたチームのメンバーは他の業務にあたっているという。
マルチクラウドKubernetes/コンテナ技術のTaikunを買収した理由
データ関連分野では、SalesforceによるInformatica買収合意の発表など、動きが激しい。これについてサンスベリー氏は、「従来の業務アプリケーションベンダーは、自分たちのテリトリーである業務アプリケーション層が必要でなくなる未来を懸念しているのではないか」と読み解く。AIエージェントは、業務アプリケーション経由ではなくデータを直接操作するようになるため「データ分析の重要性が増している」。
そしてClouderaの強みを次のように強調する。Clouderaは「Cloudera Data Platform」(CDP)を展開するが、「Clouderaが管理するデータ量は25エクサバイト以上。これは“データグラビティ”をもたらす。つまり、データが大量にあり、それを管理できるClouderaのようなシステムが重要であると考える企業が増えている」。
ブランニック氏は、Clouderaを「データがどこにあっても管理できる技術を提供する、数少ないベンダー」と表現する。「DatabricksやSnowflakeもデータは管理できるし、オンプレミスにもデータはある。Clouderaはデータがどこにあっても管理できる。この価値に企業が気がつき始めている」。
そこで、8月に発表したTaikun買収は戦略的に重要な意味を持つという。Taikunは、コンテナ管理などのプラットフォーム技術を有している。
「(Taikunとの統合によって)必要に応じてClouderaやその他の技術を抽象化し、オーケストレーションすることができるようになる。Clouderaの技術がより使いやすくなり、データプラットフォームの作成が容易になる。他のオープンソース技術やプロプライエタリな技術との組み合わせも簡単に実現できる」(サンスベリー氏)
Taikun技術の統合については、数カ月間のデューデリジェンスを行ったうえで、実際に2社のチームがラボで一緒に作業を行い、統合後の姿を試したという。今回のイベントでは、Taikun環境にCloudera製品を展開するデモも披露した。顧客企業にも、すぐにメリットが提供できると強調する。










