Google Cloud上の共通データ基盤で選手のプレーを可視化・コンテンツ化
日本プロ野球でもいよいよスタート! 試合の楽しみ方を変える“ホークアイデータ”の裏側
2025年08月06日 10時00分更新
試合展開で急増するGPUリソースをオートスケール
NPBおよび全球団の共通基盤であるDMPやCMSを支えるクラウドインフラとして選ばれたのが、Google Cloudだ。
採用の決め手となったのは2つ。Google CloudがすでにMLBのパートナーとして、ホークアイデータのリアルタイム分析基盤を提供していること。そして、膨大なデータの高速処理やCGコンテンツ化、それらの運用コストの最適化を実現できる技術的優位性を持っていることだ。
NPBのDMP・CMSは、Google Cloudのサーバーレス・コンテナ実行環境「Cloud Run」や、リレーショナルデータベース「Cloud SQL」、オブジェクトストレージ「Cloud Storage」などで構成されている。特にポイントとなったサービスが、Google Kubernetes Engine (GKE)の Autopilotモードで利用できる、GPUのリソース管理サービス「GKE Autopilot GPU」だという。
Google Cloudのテクノロジー部門 技術部長である安原稔貴氏は、NPBとソニーがシステム構築で苦労した点として「増減するリソースの管理」を挙げた。CMSのCGコンテンツ生成は、試合数や試合状況によって処理量が急増する。そのぶんのリソースを事前に確保しておけば確実だが、当然、コストが膨れ上がってしまう。
そこで、GKE Autopilot GPUによる、GPUリソースをオートスケールする仕組みをフル活用している。これにより、試合中には大量のCGコンテンツを短時間で生成し、試合のない時間にはコストを抑えられるシステムとなった。また、DMPからのデータ配信に用いるAPIは、API管理プラットフォームの「Apigee」によって構築。APIの管理やアクセス解析、ポータルサイト構築などの機能を使い、開発を効率化している。
さらに、DMP・CMSの開発においては、Google Cloudの内製化支援プログラムである「Tech Acceleration Program(TAP)」を活用した。
同プログラムは、開発の内製化を目指す企業・組織に向けて、数日かけてのアジャイル型ワークショップを提供する日本独自の施策だ。Google Cloudのエンジニアがプロトタイピングやアーキテクチャ設計を伴走支援してくれる。同プログラムの参加によって、DMP・CMSをほぼ1年で完成させるという、短期間での実装につながった。
「プロ野球の魅力を360度展開で広げる」取り組みへ
DMPとCMSの提供開始から数か月が経つが、これらのデータ活用基盤は安定稼働を続けている。NPBの丹羽氏は、「選手からも、『自ら投げたボールに対する変化量が可視化された』などと好評」だと語る。各球団のSNSや球場でもコンテンツの利用が始まり、プロ野球ファンからの反応も上々だという。
今回のシステム構築によって、いつでもどこでも詳細なデータや自動生成したコンテンツにアクセスできる環境が整った。まずは、放送局などデータの提供先事業者を増やす取り組みを進めつつ、ファンがデータを手元のスマートフォンなどで見るようなサービスの提供も検討している。
丹羽氏は、「データを活用した新しいエンターテインメントの開発に伴い、市場が大きくなり、新たなビジネスチャンスが生まれていくのを期待する。プロ野球の魅力を360度展開で広げていきたい」と締めくくった。











