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「AWS Summit Japan 2025」レポート

カプコン担当者「リージョンにあるインスタンスを使い切ってしまったことも」

「モンハンワイルズ」の舞台裏 数百万同時接続の“超高負荷”に耐えるクラウド構築テクニック

2025年07月18日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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サービスメッシュにApp Meshを採用、しかし突然の「サービス終了」告知…!

 APIサーバーのインフラには、ノード管理が不要な「Amazon EKS on Fargate」を採用した。ただし、サーバー(pod)の立ち上がりに1分ほどかかり、DaemonSetの技術が使えないのが難点だったという。「なぜコントロールプレーンをECSにしなかったというと、リアルタイムサーバーでミドルウェアの『Agones』を採用するため。APIサーバーだけをECSにするという手もあったが、バージョン管理などの手間を考えて統一した」(筑紫氏)

 API GatewayやApp Runnerなどを用いたサーバーレス構成も検討したが、常にトラフィックが発生し続け、リクエスト数も多いため、コストが増大してしまう。コスト面を考えて、EKSを選択したという。

 サーバー間通信をインフラ層で制御するサービスメッシュにおいても、管理コストを減らすために、AWSのマネージドサービス「AWS App Mesh」を選択している。この技術によって、サービス障害時に該当サービスのインフラだけを制御する「サーキットブレーカー」や、新バージョンの公開範囲を段階的に広げる「カナリアリリース」などが実装できる。

 しかし、モンハンワイルズのオープンβテスト(2024年10月)の直前に、App Meshのサービス終了(2026年9月30日で終了)が告知された。やむを得ず、App Meshと同様にサービス間通信を制御できる「Amazon VPC Lattice」に置き換えることにして、負荷試験などをやり直した。

 「(Latticeは)マイクロサービス以外での利用やVPC間の通信に強みがある、モンハンワイルズにとってはリッチなサービス。ただし、プロキシサーバー(envoy)が不要となり、その分のpodのリソースが浮く。サービスディスカバリーやアクセス制御、トラフィック制御など、(App Meshとは)完全に別物として扱う必要があったが、管理コストを減らすために、OSSではなくVPC Latticeへの移行を決断した」(筑紫氏)

Amazon VPC Lattice

 App Meshのサービス終了までは猶予があったものの、第2回のオープンβテスト(2025年2月)までに、なんとか置き換えを完了させた。プロキシサーバーがなくなったことで、消費リソースは減少したが、代わりにレイテンシが増加してしまった。筑紫氏は、「これまでは1リクエスト30msec(ミリ秒)のレイテンシだったが、150msec程度に上昇した。ただ、それでもなんとか許容範囲だった。ゲームではUI表示に時間がかかるため、ユーザーへの影響はほとんどなかった」と振り返る。

App MeshのVPC Latticeへの置き換え

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