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“スイート・アズ・ア・サービス”など、製品を大きく刷新するSAP

「SAPはアプリからAIの会社に」 SAPジャパン鈴木社長が語る、Business Data Cloudがもたらす変化

2025年07月16日 09時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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「スイート・アズ・ア・サービスの時代」というメッセージの意味は

――Sapphireの基調講演では、CEOのクリスチャン・クライン氏、プロダクトとエンジニアリングトップのムハンマド・アラム氏が「ベスト・オブ・ブリードは過去のもの。これからはスイート・アズ・ア・サービス(Suite as a Service)の時代だ」と発言しました。その意味は。

鈴木氏:スイート・アズ・ア・サービスの“スイート”とはSAP Business Suiteのことであり、これを本格的に“サービスとして展開していく”というメッセージだと理解しています。

Sapphire 2025の基調講演で、CEOのクライン氏が掲げた「Suite as a Service」のメッセージ

 これまでSAPはERP、人事のソリューション、経費精算のソリューションといったSaaSを提供してきました。これからはすべてのアプリケーションを1つにして、スイートとして提供し、企業変革の基盤となる仕組みにしていただく。しかも、このスイートはどんどん進化します。これにより、お客様がデータをクリーンにしながらAIのもつパワーを最大限引き出すことができるよう支援します。

 日本でも“Better Together”として、2024年10月に買収完了したWalkMeを含め、さまざまなアプリケーションと密に連携しています。(企業には)1つ1つご紹介するのではなく、「CxOの課題に対してSAPのスイートがどのように貢献できるのか」の視点を持って活動しています。

Jouleによって「SAP導入のやり方がガラッと変わっていくだろう」

――「Joule」もグローバルでは発表から1年半が経過しました。日本でのJouleの動向は? グローバルと、使い方などで違いはありますか?

鈴木氏:4月に日本語対応のJouleをリリースしました。グローバル企業は(日本語版に)先駆けてPoCなどの取り組みを進めていますが、本格的な展開はこれからと予想しています。

 JouleはSAPユーザーが使うJouleの他に、コンサルタントと開発者向けにそれぞれ「Joule for Consultants」「Joule for Developers」も提供しています。コンサルタントや開発者がこれらを活用して、実際の導入プロジェクトそのものを効率化することができます。JouleがすべのSAPのマニュアル、導入手法を学習しており、新しい機能が増えればそれも学習するため、特定の要件に対してどのようにコンフィギュレーションすればいいのかなどの疑問に対して、すぐに回答が得られます。SAP社内でもコンサルのメンバーが使っています。

 例えば、なるべくクリーンコアで進めたいが、個別の要件も出てくる。その時にJoule for Consultantsを使ってどの部分を固有の要件として実現するかを切り分け、その要件をJoule for Developersに伝えると生成してくれる、というような使い方ができます。

 SAP導入のやり方がガラッと変わっていくだろうと期待しています。すでに多くのパートナーさんが我々の方針を理解いただき、Jouleの活用に取り組んでいらっしゃいます。

――SAPジャパンの代表取締役社長に就任されて6年目を迎えました。これまでの振り返りや今後の目標についてお聞かせください。

鈴木氏:この5、6年を振り返ると、クラウドが当たり前になったと感じます。

 着任当時はコロナ禍に突入したタイミングで、先行きに不安もありました。しかし、奇しくもリモートワークをはじめ、デジタルの重要性を再認識するきっかけになりました。当時は基幹システムがクラウドで大丈夫かというような声もありましたが、現在そのような声はまったく聞かなくなりました。

 このシフトもあって、SAPもビジネスモデルの変更を経験しました。現在我々のビジネスモデルは、お客様がSAPをしっかり使い倒していただかないと我々のビジネスが成り立たない、というモデルに変革しています。我々自身のマインドも、いかにお客様に使っていただいて効果を出していただけるかに変化しています。さらには、そこから追加で我々がお手伝いできる範囲を広げていただけるような活動をする、これを全体に浸透できたことが、振り返ってみると一番大きいと感じます。

 現在、それをベースにAIやデータといった新しい領域が出てきています。そういう意味では、毎年毎年エキサイティングな年を送っています。これだけ変化を体験できる環境はなかなかありません。社員の皆さんもよくついてきてくれて、力を発揮してくれています。その結果は、業績を見ても明らかです。

 目指してきたことは、日本企業がSAPを使って生産性を上げていただくこと。世界にひけを取らないリーンな経営に変わっていただいて、日本の強みであるサービスやものづくりの品質を発揮していただきたい。

 今後の注力の1つが、BDCです。

 SAPにとってERPが第1世代とすると、第2世代が「HANA」で、BDCはその次にくるイノベーションです。そのぐらい、(BDCは)大きなイノベーションだと感じています。アプリケーションの会社からAIを提供する会社に変わる、このきっかけを作るのがBDCと思っています。

 BDCを日本でしっかり展開していく、それによりSAPジャパンが変革し、日本企業の変化に貢献できる――そのように考えています。

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