“スイート・アズ・ア・サービス”など、製品を大きく刷新するSAP
「SAPはアプリからAIの会社に」 SAPジャパン鈴木社長が語る、Business Data Cloudがもたらす変化
2025年07月16日 09時00分更新
AI時代に向けて、SAPが製品を大きく刷新している。そのキーワードは“AIファースト、スイートファースト”だ。
5月に開催された年次イベント「SAP SAP Sapphire 2025」では、そのメッセージが強く打ち出された。同イベントの会場で、SAPジャパンを率いる鈴木洋史氏に話を聞いた。
「SAP Business Data Cloud(BDC)」は重要な製品
――業績が好調です。成長はどこからきているのでしょうか。
鈴木氏:グローバルでは2024年、2025年第1四半期と、素晴らしい業績を発表しました ※注。さらに日本は、2024年、2025年第1四半期ともに、グローバルの数字を上回ることができました。このように、グローバルでも日本でも順調に推移しています。
※注:SAPの2024年の業績は、すべての財務見通しを上回った。前年比で純利益は10%増、クラウド収益は25%増、クラウドERPスイートの収益は33%だった。また、2025年第1四半期(2025年1月-3月期)の決算でも、前年同期比で純利益が12%増、クラウドバックログが28%増、クラウド収益が27%増、クラウドERPスイートの収益は34%増と発表している。
成長の大きな要因は、クラウドへのシフトが進んでいることにあります。ここ数年、クラウドはある意味で“当たり前”になりました。「RISE with SAP」「GROW with SAP」などを利用して、クラウドへのシフトが急ピッチで進んでいます。AIを活用いただくためにはクリーンなデータが重要です。(クラウドシフトを通じて)プロセスそのものを標準に合わせる”フィット・ツー・スタンダード”アプローチによるアップグレード、あるいは新規にSAPを導入するという機運が高まっています。
――今年のSapphireでもさまざまな発表やメッセージがありました。日本市場で最も重要だと感じたポイントは何ですか。
鈴木氏:2月に発表された「SAP Business Data Cloud(BDC)」は重要な製品だと考えています。日本では3月に発表しましたが、その後、非常に大きな反響をいただいています。
データ統合基盤「SAP Business Data Cloud(BDC)」の概要(同社発表会資料より)
SAPは、BDCと「SAP Business Suite」の発表により“AIファースト、スイートファースト”戦略を進めており、日本でもその方向性は同じです。AI活用ではクリーンなデータが鍵を握りますが、BDCはそれを実現する製品になります。
BDCは、SAPのアプリケーション群をシームレスに連携し、セマンティックでAIが学習できるデータにするといった機能を備えており、それを活用してインサイトを見いだすことができます。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、非SAPデータも対象にするとなると課題が多かったところを、BDCが解決します。
非SAPデータの部分でDatabricksと提携することは2月の段階で発表しましたが、SapphireではPalantir Technologiesとの提携も発表しました。日本でも今後、具体的な発表を行う予定です。
、Databricksとの戦略提携に基づき統合されたデータレイク「SAP Databricks」の概要(同社発表会資料より)
――BDCは“業務アプリケーション一筋”でやってきたSAPにとって新しい領域の製品になると思います。社内の体制づくりやパートナー戦略はどのように進めていくのでしょうか?
鈴木氏:SAPは50年以上、業務アプリケーションを主な領域としてきました。業務プロセスやアプリケーションの知見には強みがあると自負しています。それを踏まえて、実際のデータをどのように利活用するかが今後の重要なテーマになります。SAP内だけでなく、それ以外のシステムからのデータをどう活用するかは、我々にとっても新しい領域となり、社内で人材の育成を進めています。
今回のSapphireに来ているSAPジャパンの社員は皆、BDCについてのトレーニングを受け、試験に合格した社員です。このように、社内でも「BDCをしっかりやっていく」というメッセージを伝えています。
パートナーについては、もともとSAP/非SAPにかかわらず、データの統合やデータレイク、データウェアハウスなどでデータ利活用の仕掛けを作るのは、日本のSIerさんの得意分野です。特に、SAPが提携したDatabricksについての知見がある大手SIerは、数多くいらっしゃいます。そうしたSIerの方々がBDCにも関心を持っていただいており、イネーブルメントを進めているところです。
Palantirについても同様で、Palantirに強いパートナー企業から強い関心を持っていただいています。








