堅実そうに見えて、無茶もいろいろ 変わらないDNAを探る

ヤマハネットワーク製品の30年 「チャレンジだらけの軌跡」を振り返る

文●大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

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ネットワークの多様化に対応するスイッチ、ファイアウォール、無線LAN アクセスポイント

大谷:ヤマハネットワーク製品の30年を振り返って、ISDN時代が第一期、ブロードバンド時代が第二期だとすれば、第三期はネットワークの多様化が大きなテーマだと思います。なによりスタート時から基本的にはルーター一本でやってきたヤマハが、2010年代からスイッチや無線LANアクセスポイントを投入するようになった。ここらへんの背景を教えてください。

小島:営業の現場に立ち会うと、「LANにつなぐ機器が増えてきたんだよね」という声が増えてきました。流通のお客さまも、今までは店長のPCと発注端末、POS端末の3台つながればよかったのに、つなぐ端末が増えてしまった。ルーターのLANポートでは足りず、スイッチが欲しいというニーズはずっとありました。。

これだけ接続台数が増えてくるといよいよ管理も大変になります。ルーターの下につながっているLANの端末も管理できなければ、多拠点を管理しているお客さまも困ります。そういう背景から生まれたのが、2011年に出した「SWX2200シリーズ」のスイッチです。

大谷:あくまでルーター前提だったんですね。

小島:当時は「ルーターのLANポートを増やす」のが目的でした。だから、SWX2200シリーズは、ルーター側からでしか設定もできません。ヤマハルーター前提で簡単に設定できるというのが価値だったんです。実際、最初に飛びついてくれたのは、ルーターのポートが足りないと感じてくれていたユーザーでした。

ヤマハのスイッチ「SWX2200-8G」と最新の「SWX2322P-30MC」

大谷:2012年にはファイアウォール製品を出しているんですよね。

小島:はい。やはりインターネットを使うにあたっては、セキュリティは避けて通れません。2007年に出した「SRT100」は、ルーターの延長にあるパケットフィルタリングでしたが、とにかく「設定をいかに簡単にするか」にチャレンジし、GUIの階層状にフィルターをかけられるポリシーフィルターを実装しています。

ただ、セキュリティに関しては、専門性が高く、われわれだけでは難しかった。そこで他社と協業し、セキュリティサービスと連携できる製品として開発したのが「FWX120」になります。

大谷:ヤマハとしては珍しい赤い筐体が印象的でした。

小島:正直言って、セキュリティに関しては、自社開発だけではお客さまの課題を解決できると思っていません。それくらいセキュリティの脅威は多様化しており、進化も速い。こうした背景から、そもそも製品ごと他社にお願いしてできたのが、現行のUTX100/200になります。

大谷:やはりヤマハとしては、自社開発に強い思い入れがあるんですね。

小島:はい。できれば自分たちで作りたいというのはあります。ただ、「選択と集中」という言葉もありますが、特定分野においてはパートナーとの協業も大切だなと思っています。セキュリティに関しては、まさに各パートナー企業のご協力をもって製品提案させていただいている分野です。

ヤマハの機器をクラウドから管理できるYNO 魅力は大規模ユーザーにも

大谷:2015年以降になると、ADSLからFTTHへの移行が進み、ギガビットやWi-Fiが当たり前になります。前述したVNE事業者経由でのIPv6の利用も増え、端末もスマホが爆発的に増えてきます。

無線LANアクセスポイントもラインナップが増えてきた

小島:はい。ここまで多様化してくると、つながるのがヤマハが想定したネットワークだけというのは、もはや現実的ではありません。2017年に出した「RTX830」を企画したとき、お客さまから聞いたのは、とにかく「クラウドにつながなければならないんだ」という声でした(関連記事:クラウドと仲良いこれからのルーター「RTX830」の魅力)。

だから、インターネットの先にあるクラウドとの接続も見越したRTX830を世に出し、ついにハコではない仮想ルーターの「vRX」も作ってしまった。クラウドにヤマハのルーターを持っていけないかという声に応えて、AWS上で仮想化したルーターを使えるようにしたんです。あのときInteropで展示したときも、あらゆるクラウドにつなげるみたいな世界観をアピールしていたと思います。

大谷:たぶんイベントで大谷も登壇した頃ですね。

小島:あとはクラウド経由でネットワーク機器の管理を実現する「YNO(Yamaha Network Organizer)ですね。当初出したときは、数拠点の管理サーバーを用意できない中小企業を対象にしていました。あくまで「大きい会社はいいよねー」という中小企業が前提だったので、ユーザーインターフェイスもとてもシンプルだったんです。

でも、ふたを開けてみると、多拠点で大規模にデバイスをばらまいている企業のニーズも高かった。管理サーバーを用意できるくらいの規模の会社でも、設定もWebブラウザからできるし、記録もとっておけるし、便利だということに気がついてくれました。その意味で、クラウドの利便性を体現してくれたサービスだと思います。

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