すでにカルチャーの領域に達しているG-SHOCK
定番ではない異色のデザインのG-SHOCKを衝動買いした
スマホが時刻を知らせてくれる便利さが当たり前な現在、「今さら腕時計?」と思う人も多くいるだろう。現代の腕時計の役割は昭和な頃とはまったく異なる。令和の今は機能そのものより「装着する楽しさ」や「語れる個性」が求められる時代だ。中でもG-SHOCKは、腕時計でありながらカルチャーでもある。
G-SHOCKと聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは「定番のあの顔」。黒くてゴツくて無骨な独特のデザインだろう。だが今回予約衝動買いしてしまった「GA-V01A-8AJF」(以降、イガイガG-SHOCK)は、そんなG-SHOCK像を鮮やかに裏切ってくる。
まるでSF映画の小道具、あるいは未来のインセクト型ロボットのようなこのイガイガG-SHOCKは、なぜ今このタイミングで登場したのか? それはG-SHOCKというブランドが、定番に甘んじず挑戦を続けている証かもしれない。
耐衝撃性能を高めるためのバンパーを
機能美から攻撃的造形美へと変化させた
筆者自身、今回のイガイガG-SHOCKに手を伸ばす前、似たような衝動に駆られた経験があった。それが、G-SHOCK史上最大サイズの1つと称される「GXW-56-1BJF」だ。これは太陽光発電を搭載したソーラーモデルで電波腕時計。液晶部分を守るため、周囲に超堅牢バンパーを配した構造だ。腕に装着したときの「重厚感と存在感」で圧倒してくる一本だった。もちろん今も愛用している。
そのGXW-56と今回のGA-V01Aを比較してまず驚くのは、あの「内部で守る」構造が、今回「外に向かって主張する」デザインにトランスフォームしている点だ。
GXW-56では耐衝撃構造のために採用された液晶周囲を護る内部バンパーが、GA-V01Aでは外装の「突起」「凹凸」「トゲトゲ」として再生し、あたかもそれ自体が鎧や外装のプロテクターのような存在感を放つ。これはもはや「機能美」から「攻撃的造形美」への進化と言えるかもしれない。
デザインのルーツは何か? ネット上では「未来生物なのかも」「宇宙人の腕にありそう」「90年代のSF映画で見たような……」といった声が上がっている。筆者としては、大昔のIBMセレクトリック・タイプライターに使われていた「タイプボール」に既視感を感じた。世界中の文字に対応するための球体フォントモジュール。それは無骨でありながら美しい工業デザインの極致であり、今回の時計にも通じる「無駄のない頂点を極める異形感」がある。
また、少しふざけた視点かもしれないが、かつて筆者が企画に関わった「KACHA」や、現在Temuなどで販売されている多角形の「暇つぶし系フィジェット系のガジェット」にも似た感覚を受ける。ついつい指でカチカチ、ガチャガチャしたくなるデコボコ感、意味のある機能以上に“触りたくなる形状”がここにはある。

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