歴史的建造物と高層ビルが融合! 都市開発マニアが案内する「丸の内建築ツアー」 第18回
日本の歴史に残るあのビルは今でも現役で稼働中
日本を揺るがす大事件の記憶を持ち、今も丸の内を見守る「丸の内二丁目ビル」
三菱重工爆破事件
三菱重工ビルヂング全体の竣工から約1年が経過した1974年8月30日午後0時45分、昼休み中の丸の内で突然、爆発事件が発生しました。三菱重工ビルヂングの丸の内仲通り側正面玄関前に設置されていたフラワーポット付近に仕掛けられた2個の時限爆弾が爆発し、1階ロビーは大破。建物内にいた社員が死傷したほか、爆風は周囲にも及び、同ビルの窓ガラスは9階まで破損しました。さらに、丸の内仲通りを挟んだ向かい側の三菱電機ビルや丸ビルなど周辺のビルでも窓ガラスが割れ、道路にはガラス片が飛び散り、街路樹の葉は吹き飛ばされ、停車中の車両も破壊されるという大惨事となりました。
この爆発により、8人が死亡、376人が負傷し、戦後日本最悪のテロ事件となりました。爆発に使用された爆弾は、列車爆破用の高威力なものを転用したもので、その質量の大きさも被害を拡大させた要因となりました。また、昼間の都心部であったことも被害を拡大しており、ビルの谷間を爆風の衝撃波が吹き上げたことで、窓ガラスが粉々になって降り注ぎ、さらなる被害を引き起こしています。さらに、衝撃波はビル内部にも入り込み、階段などを伝って他の窓から噴出し、内部構造にも大きな損傷を与えました。爆心地には直径30cm、深さ10cmの穴が開いており、被害の甚大さを物語っています。
この爆弾テロ事件は「三菱重工爆破事件」として知られ、丸の内で発生した連続企業爆破事件のひとつです。犯行は、極左テロ集団「東アジア反日武装戦線『狼』」によって実行されました。彼らは日本企業の海外進出を「経済的な侵略」だと批判し、テロを起こしました。「海外に進出していた日本企業によって東南アジアの貧困が進んでいる」として、戦後も日本を代表する重工業メーカーであった三菱重工業も標的になったのです。
テロ事件では、三菱重工ビルに時限爆弾が仕掛けられ、爆発によって大きな被害が発生しました。ビル内部では多数の負傷者が出たほか、建物のガラスが広範囲にわたって破損し、早急な復旧が求められました。
復旧作業は当日夕方から始まり、被害状況の調査やガラスの撤去、養生作業が進められました。作業には、ビルの建設に関わったゼネコンやサブコン各社が協力し、復旧用ガラスは翌朝から大量に搬入されました。台風の接近に伴い、窓をベニヤ板で仮補修する工事も並行して実施され、事件から約3日後には、約3,700枚のガラスの入れ替えと建物内部の清掃などが完了し、ビルは日常の姿を取り戻しました。
現在の丸の内二丁目ビル
21世紀に入った2003年に三菱重工業は、品川に竣工した再開発ビル「品川グランドコモンズ」に移転し、その後、名称が「三菱重工ビルヂング」から「文部科学省ビル」を経て、現在の「丸の内二丁目ビル」へと変更されています。
その後21世紀に入った2003年、三菱重工業は品川に竣工した再開発ビル「品川グランドコモンズ」へ移転しました。その後、建物の名称は「三菱重工ビルヂング」から「文部科学省ビル」を経て、現在の「丸の内二丁目ビル」へと変更されています。東京都心では、21世紀に入ってから、都市再開発が活発化しています。三菱重工業が退去したあと、2004年から2008年までは文部科学省、その後にみずほフィナンシャルグループの本社、2015年から2018年まで東京商工会議所が各々のビルの建て替え途中の仮移転先として丸の内二丁目ビルに入っており、1期が竣工してから約60年以上が経過した現在は一般の貸しビルとして機能しています。
そして、三菱地所による2020年代の丸の内エリアのまちづくり「丸の内NEXTステージ」の取り組みの中で、まちの賑わいや回遊性を創出するリニューアル「Marunouchi Bloomway(丸の内ブルームウェイ)」というものが行われており、丸の内二丁目ビルも1階通路空間や外構部に大規模な花壇が設置されたほか、月替わりで季節の植物が彩るなど、リニューアル工事が行われています。
以上で今回の建築ツアーは終了。超高層化が進む丸の内にあって、大通りには面しておらず目立たない存在ながら、このビルは丸の内の歴史の一ページを飾ってきました。リニューアルもしっかり施され、築60年以上を経た現在でも、なお現役で活躍しています。ビルの中は通り抜けができるので、みなさんもぜひそんな歴史に思いを馳せながら歩いてみてはいかがでしょうか。
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