ドライブベイも拡張スロットも必要最低限でよし
ミドルタワー=パワーはもう古い 静音PCの雄・サイコムが謳う「今こそ小型ゲーミングPC」の説得力
2025年05月21日 10時00分更新
組み立ての難しさが小型ゲーミングPCの参入障壁?
小型ゲーミングPCに需要があるとわかれば、ほかのBTOパソコンメーカーも追従してきそうなものだが、現状そうはなっていない。サイコムが独走しているような状態だ。その理由は、組み立ての難しさにあるのではないかという。
「うちの場合、標準的なBTOパソコンの組み立て時間は1台あたり25分くらいです。Premium Lineの小型PCだと45分を目標に生産していますが、作業が難しいこともあって、どうしても時間がかかってしまうんですね」(佐藤氏)

Premium-Line B860FD/Tで採用しているPCケースは内部スペースが極端に狭く、PC自作に慣れ親しんだ人でもかなり手こずる
今はすべてのスタッフが45分以内に作れるようになったというが、当初は達成できるスタッフも少なかったそうだ。そして、組み立て時間が長いPCは当然生産効率の低下をまねく。小型PCの注文が増えてしまうと、生産台数への影響が大きく、納期も長引いてしまうだろう。
かといって、ラインや人を増やせば今度は生産コストが高くなり、それはPCの価格にも跳ね返ってくる。このジレンマを、サイコムはスタッフの組み立てスキル教育に力を入れることで解決している。
「単純な組み立て速度だけではなく、クオリティーの担保とかも重要です。正直、スタッフの組み立てスキルの高さがあるからこそ、こういった小型PCが出せていると思います」(佐藤氏)
とはいえ、当然スタッフによって得意不得意があるため、生産スピードには差がある。そのため、受注数が多い時などは、通常サイズのPCを優先して組み立てるスタッフもいるそうだ。
「組み立て部門のリーダーが小型PCばかり作ってたりする時もあります。組み立て難易度が高いPCだとやはり頼りになるベテランなので。もちろん、どのスタッフも作れるのですが、生産効率や時間を考えてしまうと、そういうシフトになりがちです……」(佐藤氏)
組み立てスキルの高さで評判のサイコムですらこうなのだから、ほかのBTOパソコンメーカーがそうやすやすと手を出せない理由がうかがい知れる。この生産効率の問題が小型ゲーミングPCの参入障壁として存在しているわけだ。
イベント参加や運営、スタジオにも好感触の小型ゲーミングPC
小型ゲーミングPCは個人のみならず、イベント関係やゲーム/映像スタジオなどからも反響があるという。
「イベント時の搬入がものすごくラクです。取っ手のあるG-Master Velox Miniなら手持ちでも2台いっぺんに運べますし、台車なら4台とか6台とか載せられます。ゲーム大会の運営さんに貸し出しても、小さくて扱いやすいと喜ばれました」(佐藤氏)
デュアル水冷のLepton Hydroシリーズにも小型モデルがある。同シリーズの歴史は長く、サイコムの顔とも言える存在で、CPUのみならずビデオカードまで独自に水冷化し、静音性と安定性の両立をウリにしている。
「ゲームスタジオさんだと作業は手元のPCで行いますが、大がかりなレンダリングとかはサーバールームみたいなところで計算しているそうです。その部屋には何十台もPCが並んでいるわけですが、Lepton Hydro Cubeはそこでも活躍しています」(佐藤氏)
サーバールームのようなスペースがあるなら、サイズよりも性能にこだわったPCを揃えたほうがいいのではないか。と、思う方もいるだろうが、不動産は有限だ。省スペース性を重視するスタジオも少なくないのだろう。

「Lepton Hydro WSZ890 Cube」は、サイズ202(W)×451(D)×286(H)mmのキューブ型PC。小型ながらもCPUもビデオカードも水冷で安定冷却できる
なお、現在Lepton Hydro WSZ890 Cubeの水冷ビデオカードはGeForce RTX 40シリーズ版が完売し、新GPU版を開発中とのこと。GeForce RTX 50シリーズ版の登場に期待したい。
なお、GeForce RTX 5090搭載モデルに関しては、従来とまったく違う形になるという。どういったモデルになるのか、気になるところだ。
最新GPUでも静音ビデオカードや水冷モデルを開発中
小型ゲーミングPCは高性能なPCパーツを詰め込むため、静音性の面では見劣りしてしまうこともある。とはいえ、長年静音PCに取り組んできたサイコムだけに、驚くほどウルサイということはない。
独自の静音ビデオカード「Silent Master Graphics」(以下、SMG)の存在も大きい。こちらもGeForce RTX 40シリーズを採用したモデルは完売し、現在注文できない状況となってしまっているが、安心してほしい。次期モデルはすでに動き出している。
「次期モデルとして開発調整中の製品は3つあります。NVIDIAのGeForce RTX 5060 TiとRTX 5070、RTX 5070 Tiですね」(山田氏)
SMGはベースとなるビデオカードに、長尾製作所製のカバーとNoctua製の静音ファンを搭載する。しかも、単純にクーラーを交換して終わりではなく、負荷テストを念入りに行い、動作音がどう変化するのか、性能はどこまで出るのかなどを徹底的に検証している。
なお、消費電力が高いGeForce RTX 5080はそのままでは難しいが、設定の見直しでなんとかならないかチャレンジ中とのこと。TGPが360WのGPUだけにかなり厳しいと思うが、期待したいところだ。
まとめ:「静音PCのサイコム」はもちろん、「小型PCのサイコム」へ
静音PCに関して言えば、動作音が静かなPCパーツを使用するだけではなく、独自のビデオカードまで作るほど力を入れている。さらに、第三者機関で計測した数値を公開するという、徹底的なこだわりを見せているSilent Masterシリーズはもはやサイコムのお家芸とも言える。
「長年労力をかけ、静音PCに力を入れてきましたから、“静音PCならサイコムかな”と思ってもらえるところに来たと思っています。今度は“小型PCならサイコムかな”です。それにはまだ2~3年はかかると思いますが、そうなりたいですね」(山田氏)
PCゲーム市場は今年も当たり年と言ってもいいほど、多くのビッグタイトルが控えている。それだけに、ゲーミングPCに興味が出る人も多いだろう。昨年後半から今年初めにかけては「モンスターハンターワイルズ」需要でかなり売れたそうだ。
また、前回ゲーミングPCがよく売れた時期は、新型コロナ感染症の影響下の4~5年前とのこと。この頃購入したPCの買い替え時期がちょうど今という人も少なくない。Windows 10のサポート終了にともない、新調する人もいるだろう。
そんな方なら、ぜひこの機会にサイコムの小型ゲーミングPCをチェックしてほしい。個性豊かなラインアップの中に、きっとお気に入りの1台が見つかるはずだ。
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