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今後の成長戦略に自信、「Google Cloud Next 2025」発表の狙いを幹部が語る

クラウドベンダー選択も「AI」が新たな軸に Google Cloud CEOが優位性をアピール

2025年04月28日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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顧客のクラウドベンダー選択、「AIの能力」が新たな基準に

 ここからのラウンドテーブルは、グーグル・クラウド・ジャパンの幹部も参加してトピックごとに行われた。トピックごとに各氏の発言をまとめる。

グーグル・クラウド・ジャパン 上級執行役員 カスタマー エンジニアリング担当の小池裕幸氏、同社 日本代表 平手智行氏、同社 パートナー事業本部 上級執行役員 上野由美氏

○競争とIaaSの進化

 先に触れたとおり、Google Cloudは“3大クラウド”の一角をなすものの、市場シェアの面ではAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureに差を付けられている。クリアン氏もそれは認めつつ、過去5年間は「世界で最も急成長しているグローバルなクラウド企業だ」と述べた。

 「(Google Cloudは)他社からかなり遅れてスタートした。他社のシェアが高いのは、われわれよりもスタートが早かったからだ。シェアだけで現在の実力は評価できない。売上の伸びや受注残高などを見ると、Google Cloudが健全に成長していることを理解いただけるはずだ」(クリアン氏)

 AI関連ニーズが急速に伸びていることで、IaaS市場の競争も変化しているようだ。クリアン氏は、AIの存在が「どのクラウドを選ぶか」の意思決定に影響を与えていると指摘する。

 「これまでのクラウド選びは、ほとんどの場合が『コスト』を基準としていた。(AIが新たな基準となったことで)AIのイノベーションを顕著に促進しているGoogle Cloudが選ばれるようになっている。実際に、これまでわれわれの顧客ではなかった企業が、Google Cloudを選ぶようになっている」(クリアン氏)

 平手氏は、AI領域におけるGoogle Cloudの優位性を、「マルチモーダル、RAGやグラウンディングによる事実性の担保、ロングコンテキスト、セキュリティ」と4つのキーワードで表現した。特に、Geminiのコンテキストウィンドウが最大200万トークンに対応していること、マルチモーダル対応で非構造化データに強いことを強調する。

○セキュリティ

 平手が優位性の1つとして挙げたセキュリティは、Google Cloudが強化を続けてきた分野だ。3月にはイスラエルのCNAPPベンチャーであるWiz(ウィズ)を、320億ドル(およそ4.7兆円)で買収する計画を発表した。これが成立すれば、同社にとって過去最大規模の巨額買収となる。

 クリアン氏は、Wizをセキュリティポートフォリオに統合することへの大きな期待を語った。今回のNextでは、統合セキュリティプラットフォーム「Google Unified Security(GUS)」も発表されたが、このGUSでGoogle Cloudのセキュリティを統合し、Wizがこれを補完する役割を担うことになるという。

「Google Unified Security(GUS)」の全体像

 平手氏は、日本の企業や組織がサイバー攻撃のターゲットになる事態が増えており、日本市場でのサイバーセキュリティへのCIOの関心が高まっていると語る。「生成AIの取り組みを通じてデータが集まれば、セキュリティはさらに重要になる。Google Cloudは“AIを守る”“AIで守る”の両方を行う」(平手氏)。

○ソブリン

 前述したとおり、今回はGoogle Distributed Cloud(GDC)がGeminiの稼働をサポートしたことが発表された。

 同日、KDDIはAI領域におけるGoogle Cloudとの戦略提携を通じて、KDDIの大阪データセンターに配置したGDCにGeminiを組み込むことを発表した。平手氏は「GDCはわれわれにとって戦略的な製品」だと述べ、日本市場において、データをオンプレミスに起きながらAIで活用したいというニーズに応えていくと述べた。

○AIエージェント

 AIエージェントは、この1年で一躍中心に躍り出たキーワードだ。

 グーグル・クラウド・ジャパンの小池氏は、昨年(2024年)のNextではまだLLMビルダーの展示が多かったが、今年はAIエージェントを展示するブースが急増したと、大きな変化を語る。「日本でも、LLMの構築よりもエージェントの需要が増えてくるだろう」(小池氏)。

 実際に、顧客企業においても技術面の課題はクリアされつつあり、Google Agentspaceなどを使ったエージェント構築は「価値の出るユースケースから」進んでいると、平手氏は紹介する。

 「米国の調査では、(エージェントが)業務完遂するためには、5~6個のデータソースを利用する必要があるケースが89%を占めると言われている。Agentspaceには200個近くのコネクタがあり、権限管理の機能もある。まだまだ人手に頼っている日本の状況を考えると、エージェントのプラットフォームというAgentspaceのアプローチはとても親和性が高く、多数の顧客に興味を持っていただき、導入や検討が進んでいる」(平手氏)

 また上野氏は、すぐに利用できるエージェントがGoogle Cloud Marketplaceで公開されていることを付け加えた。

 エージェント間のやり取りを行うプロトコル「Agent2Agent(A2A) Protocol」も発表した。複数のエージェントどうしが協調動作する“マルチエージェント”の道筋を示すものとなる。平手氏は「エージェントとエージェント、業務と業務を繋ぐことで、顧客のプロセス全体の効率が上がる。日本でも大きなニーズがある。ビジネス上の優位性が生まれるところになる」との見解を示した。

 Google Cloudは2月にSalesforceとの提携を発表しており、基調講演ではSalesforce CEOのマーク・ベニオフ氏がビデオメッセージを寄せた。Salesforceは、A2Aプロトコルに賛同するおよそ50社の1社である。小池氏は、A2AプロトコルによりSalesforceのAgentforceとGoogle Cloud上のエージェントをつなぐニーズに応えると説明した。

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