「もはやソフトウェア開発にAIは不可欠」、それでも変わらないもの
GitHub CEOに聞く―「Project Padawan」の狙いは? 未来のソフト開発はどう変わるか?
2025年04月01日 12時30分更新
AIが進化しても「開発者は必要」であり「人数も減らない」その理由
――Project Padawanもそうですが、AI技術の進化に伴って、ソフトウェア開発の姿も急速に変化しています。これまでの変化をどのように見ていますか。
ドムケ氏:われわれは2021年6月、世界初の"AIペアプログラマー"として、GitHub Copilotをプレビューリリースしました(正式リリースは2022年6月)。開発者には順調に受け入れられ、Copilotができることも拡大しています。もはや「ソフトウェア開発者はCopilotなしにコードを書くことはない」と断言しても良いと思います。
そして現在は、SWEエージェントにより多くの作業を任せるという新たな波が来ています。
自動運転車にたとえると、ゆくゆくは人間の運転手なしで目的地に行くことができるようになると思いますが、その未来は一足飛びには実現しません。自動運転技術が段階的に進化し、人々がそれを受け入れる過程を通じて、徐々に普及していくはずです。まだ完全な(無人走行できる)自動運転車は購入できませんが、サンフランシスコでは「Waymo」という完全自動運転のタクシーサービスが実現しています。
おそらくSWEエージェントも同じような道をたどるでしょう。ご存じのとおり、ソフトウェア開発の世界はとても複雑です。われわれはSWEエージェントの完成度を高めつつ、その利用を少しずつ拡大していく、そのフェーズが始まると考えると良いでしょう。
――あなたは「開発者は今後も必要だ」とおっしゃいますが、一方で、AIで作業を代行できるならば「現在ほどの人数は必要ない」と考える組織も出てくるのではないでしょうか。
ドムケ氏:まず、AIを「オープンソースソフトウェア(OSS)」に置き換えて考えてみましょう。OSSは過去20年以上にわたってソフトウェア開発の世界を変えてきました。現在では、Linuxやオープンソースのライブラリ、フレームワークを活用することで、自分の手で開発するよりも早く、より多くのことが達成できるようになっています。
それでは、OSSの普及によって開発者は減ったか? 減っていませんよね。AIでも同じことが言えると考えています。ある意味で、ソフトウェア開発には「完成」や「終わり」がないからです。
AIとOSSを使って作業する開発チームは、それなしで作業するチームよりも多くのソフトウェアや機能を開発し、完成度も高められるので、より大きなビジネス成果が得られます。実現したい機能のアイディアが無限にあり、レガシーコードや技術的負債もまだまだ残っているかぎりは、組織としても開発者を減らすのではなく「より価値の高いソフトウェアを開発しよう」という方向に向かうのではないでしょうか。
ONE PIECEのように「未来を変える権利は皆にある」
――日本には現在、GitHubの利用者が350万人います。日本の開発者コミュニティにどんなメッセージを伝えたいですか。
ドムケ氏:日本は“2025年の崖”という問題に直面していると聞いています。この問題の解決を加速するために、日本にはもっと開発者が必要です。“崖”をよじ登り、自らの手で未来をつかむチャンスがあります。わたしが大好きな日本の漫画「ONE PIECE」のように、「未来を変える権利は皆にある」ことをお伝えしたいです。皆さんは自分を変えることができる、そして日本を変えることができる、ということですね。
今回の来日中には顧客企業とも会いますが、そこでは「AIトランスフォーメーション」がテーマです。皆さんもDX、そしてAIトランスフォーメーションを進めてください。AIは明らかにゲームチェンジャーな技術です。すべての人、組織、国家が自分たちを再定義できるチャンスがそこにあります。
――最後に、GitHubが今後目指すところ、取り組みの計画について教えてください。
ドムケ氏:今現在、ソフトウェア開発におけるAI活用に懐疑的な人はいません。ソフトウェア開発にAIは不可欠なものになっています。GitHubとしては、今後もAIのジャーニーをリードしていきます。まずは年内にProject Padawanを市場に投入します。
われわれの親会社であるマイクロソフトは、ちょうど50歳(50周年)を迎えました。ほとんどの人が忘れていると思いますが(笑)、マイクロソフトの最初の製品は「Altair BASIC」というインタープリタ、つまりプログラミング言語でした。それ以来、われわれはずっとソフトウェア開発の歴史を刻んできたわけです。GitHubが市場で提供するすべての技術革新が、われわれ自身がより良いソフトウェア開発者になることを支援しています。これは大きな機会だとみています。










