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苦労も失敗もすべての経験を糧にして切り拓いた時短家事アドバイザーとしての道

文●杉山幸恵

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家事の悩みを解決したい! あらゆるノウハウを身に付け、WEBメディアで発信

 仕事がしたいのにできない…そんな辛い状況が続く中、助けの手を差し伸べてくれたのが、彼女に導入事例を依頼していた会社の社長だった。「広報にも力を入れたいから」と、プレスリリースの執筆を定期的な仕事として発注してくれることになったのだ。

 「家の中でもできる仕事だったので、本当にありがたかったですね。こうして、当時としては最先端だったチャットツールを使って業務連絡をしながらの仕事が始まりました。今でいうテレワークとほぼ同じ働き方ですね。でも、このころはまだこうしたスタイルで仕事をしている人はほとんどいなくて、珍しかったと思います」

 当時、収入のほとんどは高額な認可外保育園の費用に消えていたが、それでも仕事を辞める選択肢は彼女にはなかった。かつて自身の給与で家族の危機を乗り越えた経験があり、「自分でお金を稼げる力を持ち続けたい」という強い思いがあったからだ。そして、子どもを保育園に預けられるようになると、取材を本格的に再開。導入事例に取り組む企業が年々増え、取引先からの紹介を通じて新たな企業とのつながりが生まれ、仕事の幅が広がっていった。

 数年後、所属していた大阪のコワーキングスペースで、新事業としてアフィリエイトスクールが立ち上がることに。そこでやまがたさんは〝書く仕事の延長線〟として勢いで参加し、そこからウェブメディアの運営をスタートさせた。

 「このウェブメディアでは、宅配クリーニングなど家事をラクにするサービスを実際に利用して、そのレビュー記事を書くことでアフィリエイト収入を得られるようになりました。これも広い意味で〝お客様の声〟を伝える仕事ですよね。同時に、ウェブでの文章の書き方や伝え方のスキルもどんどん磨かれていきました」

アフィリエイトスクールで学んだ後にWEBメディアをスタート。家事代行の作り置きなど、日々の家事をラクにするサービスを体験し、レビュー記事を作成した

 この実績をもとに、「自由な時間をつくる。」を理念として掲げ、2019年にカシオペイア株式会社を設立。社名の「カシオペイア」は、ミヒャエル・エンデによる児童文学「モモ」に登場するリクガメの名前に由来。作中で主人公を導き、豊かな時間を取り戻す手助けをする存在である。そして、ほぼ同時期に夫とは離婚。ワンオペ育児の負担が大きかったことに加え、人生の目標や価値観が大きく異なることを実感したからだった。現在も子どもは協力して育てている。

リビングで子どものケアをしながら仕事をしていた時の様子

 コロナ禍を経た2022年、その後のキャリアを左右する新たな取り組みをスタートさせる。それが現在につながるWEBメディア「時短家事 大百科 カジコレ®」のリリースだ。

 「仕事に全力を注ぎたくても、ワンオペ家事に追われて思うように動けない。部屋をもっと清潔に保ちたいのに、時間も余裕もない。そんな過去の自分を振り返った時、同じ悩みを持つ人の役に立つ情報を発信できればと思ったんです。それはカシオペイア株式会社の理念とも重なるし、これまで培ってきた家事系サービスの知識も活かせる。しかも、自宅でできる仕事という点でも自分のライフスタイルにマッチしていました」

 こうして、家事の時短に関する本や雑誌の情報を実際に試し、その効果を記事にまとめる日々が始まった。続けていくうちにやまがたさんは、掃除や洗濯が驚くほどラクになっていることに気づく。最初はここまでの変化を想像していなかったが、実践を重ねるうちに「整理収納と時短家事は切り離せない関係にある」と実感。この考えを深めるために、整理収納アドバイザーの資格も取得した。

さまざまな時短家事や整理収納などのノウハウを自ら実践していき、「カジコレ®」の記事にまとめていった

時短家事のノウハウを取り入れたことで、自身の住まいも掃除・洗濯がそれぞれ1日5分で終わるように

 「でも、新しいメディアの立ち上げにはとても苦労しました。SEO(検索エンジン最適化)が厳しくなっていた時期で、権威のない素人が立ち上げたサイトだったからか…。記事のクオリティをこれまで以上に高めて書いたと思っても、泣かず飛ばず(笑)。さらに、InstagramなどSNSも大苦戦でした」

 資金がどんどん減っていき、「時短家事には本当に需要がないのではないか」「大手メディアだけが上位表示されているのではないか」と、悩み続ける日々が続いた。「この事業はうまくいかないのかもしれない」とまで思いつめたこともあったという。それでも、時短家事に救われた一人として、諦めることができなかった彼女は、そのアイデアを実践し、それを記事にしてSNSで発信することを繰り返す。その傍らでウェブメディアの運用方法を学び直し、サイトを改善した。

 「そうした日々の積み重ねの中で、ふと〝時短家事の全般的な知識〟をかなり深く持っている自分に気づいたんです。その瞬間、私は〝時短家事アドバイザー〟と名乗ることを決めました。そして、そのノウハウをもとに、掃除に関することをまとめた『掃除の苦労を9割へらす本』を2024年に電子書籍で出版。予想外に好評で、Amazonではタイムマネジメント部門でかなり長い間1位を獲得しました。この本がきっかけで、テレビや雑誌からも取材の依頼をいただくようになったんです」

「実際に本の内容を実践した方々からは、『掃除がラクになった』『苦じゃなくなった』『楽しくなった』といううれしい声をいただいています」とやまがたさん

テレビの情報番組や情報トークバラエティ番組にも時短家事アドバイザーとして出演

電子書籍を出版したことで有名起業からの取材依頼も増えてきた

 「時短家事アドバイザーとしての活動はまだ道半ばです」と話すやまがたさんだが、それでも「家事の時間を、自由時間に変える。」という理念のもと、今後は主力事業として大切に育てていくという。すでに「洗濯の苦労を9割減らす本」の執筆や、時短家事を実践的に学べるスクールの開講の予定もある。

時短家事に関するコンサルティングから、講演、セミナー、企業とのタイアップまで、精力的に活動している

 そしてさらに10年後には、〝家事は苦労して頑張ってやるもの〟〝ワンオペでやるもの〟という考え方ではなく、〝サクッと終わるもの〟〝家族みんなで協力してやるもの〟として当たり前になるよう、世の中に貢献していきたいと言葉を続ける。

 「清潔で、家事がラクで、家族のパワースポットのような家に、誰もが当たり前のように住んでいる。そんな世界を、時短家事の事業を通じて実現したいと考えています。私は、仕事を通じて学び、お金を稼ぎ、そのお金で子育ても旅行も家族の危機も乗り越えることができました。

 そして、今の仕事で私が大切にしているのは〝お客様の問題解決〟と〝自分を大切にすること〟。不思議に感じるかもしれませんが、自分を大切にするほど、家事の負担は減っていきます。そして心にも体にも余裕が生まれます。その良い循環を回しながら、人生の終わりに『楽しかった!』と言えるように、これからも挑戦を続けていきます」

WEBメディアを始めてからは時間にも生活にも心にもゆとりが生まれ、大好きな旅行にも出かけられるようになった

ダイビングが趣味というやまがたさんは、海の中を撮影するのも好きだそう

 最後にライフシフトをしたいけど迷っている人へのメッセージとして、自分の経験を踏まえてこうアドバイスしてくれた。

 「人生には成功も失敗もあるのは当然のこと。失敗しても、それは経験として積み重ねられるから価値があるし、やらずに残るのは後悔だけかもしれません。私もこれまでたくさん失敗してきましたが、それらは100%何らかの成長につながっています。そして、たまに成功と思える経験をした時、その成功は過去の失敗を帳消しにしてくれるほど素晴らしいものでした。

 だから、もし起業や転職を考えているなら、自分の心に従って実行するのがいいと思います。我慢することは心にも体にも良くないですし、今はパソコン一つでできる仕事がたくさんあります。IT環境も整っていて、低リスクで始められる仕事も多いです。そんな〝はじめの一歩を踏み出しやすい環境〟を活用しないのはもったいないのではないでしょうか」

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