専業主婦から一念発起!〝現代テーブル茶道家〟として新しい茶の湯のスタイルを探求
〝時代に合わせた自然体の茶の湯〟をテーマに、モダンから伝統まで多彩な出張茶道、認定講師の育成支援、オリジナル抹茶の販売などを行なっている「お抹茶Happylife」の大澤美智子さん。〝現代テーブル茶道家〟として、精力的に活動する大澤さんがライフシフトを決意したのは40歳を目前とした時。専業主婦として2人の子どもの成長に寄り添うという充足感に、「自分の人生はこのままでいいのか」という焦燥感が芽生え出したのがきっかけだった。最初はママ友向けに自宅で始めた小さな抹茶教室だったが、いつしか世界的大企業からのオファーがくるまでに成長。それはつねに前へと進み続けるため、貪欲に学びを続けてきた大澤さんの努力の結晶だった。
すべての画像を見る場合はこちら子育てと両立できる自身のキャリアを模索し、起業という道を選択
大学で国際関係学を学んだ大澤さんは、卒業後に精密機械メーカーへと就職。「海外との架け橋となれるような仕事がしたい」と海外営業部を志望し、貿易事務全般、既存の海外代理店フォロー、新規の海外代理店の開拓などに従事した。「残業も海外出張も楽しく、とてもやりがいを感じていた」という彼女だったが、結婚を機にふと、立ち止まってしまった。
「子育てと両立しながら会社でキャリアを積む自分の姿が想像できなかったんです。当時、男性中心の社会や融通が利かない働き方への不安があったため、このまま一つの会社で勤め上げるイメージもできず…」
加えて、子どもを授かったら、自分は子育てを中心に家族を支えたいとも思い悩んでいた。そこで、子育てと両立できる仕事で新しいキャリアを積むことに挑戦すべく、退職へと踏み切ることにした。もとより、「自分の身を助けるものを探し、やりたいことを試す」という姿勢で、多彩な習い事や資格取得に挑戦していた大澤さん。退職後は〝自宅で開業できるので主婦にもおすすめ〟というフレーズに惹かれ、社労士の資格取得を目指してスクールに通い始める。
「士業ならやりがいも収入も期待ができそうと思ったんです。当時は、自宅で社労士事務所を開き、子どもが小さい時は仕事量を調整し、子どもが成長したら士業に専念するのもいいかもしれないという淡い期待を抱いていました」
社労士試験に無事合格し、実務経験を積むべく社労士事務所でアルバイトをスタートするも、そこで数々の厳しい現実に直面する。
「アルバイトとして働くうちに、社労士は主婦が自宅開業して、子育てしながら仕事ができるほど甘くないということを思い知りました。よほどの大きな覚悟や周りの協力がないと、主婦業との両立は難しく、自分にとって理想のライフスタイルが築けないんだと…。その後、1人目の妊娠がわかり、事務所を辞めて専業主婦になりました」
専業主婦となった大澤さんは、子ども中心でまわる生活に疑問を感じつつも、日々忙しさに追われ自分のことを後回しにしていたという。そんな状況が日常となっていたある時、40歳の節目を間近にして「このままでは終わりたくない!」という焦りから起業を決意する。
「『自分と同じ悩みを持つ人も多いのでは?』という思いから、母でも妻でもない〝みんなが自分らしく輝ける居場所〟を作りたいと考えるようになったんです。とはいえ、起業を決めたものの、なにをテーマにするかは未定で。そこで、まずは自分の棚卸しを行い、条件に合うものを絞り込むことにしました」
前述したようにさまざまな習い事や資格取得をしてきた大澤さんだが、「いずれは何か教える人になりたい」という思いがあったとか。幼少期から長く続けてきたピアノとバレエに加え、大学時代は茶道とテニス、社会人になってからも着物の着付け、英語、紅茶、料理、製菓、製パン、フードコーディネイターなど多岐にわたる。
「子育てと両立できる働き方を模索しながら、自分のライフスタイルの条件に合うものを考えた結果、紅茶と抹茶が残りました。当初は紅茶中心の予定でしたが、周囲の主婦層に直接ヒアリングすると『抹茶をやってみたい』という声が多かったんです」
2013年、大澤さんは自身の茶道経験を生かし、子どもが学校に行っている時間に〝テーブルでできる気軽なお抹茶教室〟を自宅で開講。生徒はママ友が中心で1講座1500円と小規模ではあるが、これが「お抹茶Happylife」の始まりだった。
「最初は不安もありましたが、悔いのない凛とした生き方をしよう!と心に決めたことで、大きな一歩を踏み出せました。また、方向性を決めるまで約2か月かかりましたが、〝できること〟や〝やりたいこと〟で安易に決めず、それらに〟ニーズ〟を掛け合わせて考えたのが成功の鍵だったのではないでしょうか。抹茶に本腰を入れる決断ができたのも、皆様の声に耳を傾けたからこそ。この経験から今でもお客様との対話を大切にしています。その後、ビジネスやマーケティングを学びつつ、生徒さんやメニューを増やしていき、法人向け出張茶道など、活動の幅を徐々に拡大。こうして、〝現代テーブル茶道家〟としての専門性を磨いていきました」
〝現代テーブル茶道家〟とは、起業時に大澤さんがオリジナルで考案した肩書きだ。
「茶道というと、着物で正座をして行うなど、敷居が高く別世界のものに思われがち。そこで、テーブル・洋服の現代生活に、茶道のエッセンスを無理なく加えられる〝時代に合わせた自然体の茶の湯〟を目指す、〝テーブルでできる現代的な茶道〟の専門家として自ら名付けました。主に講師業やコンサル、茶道アーティストとしての活動をしていますが、今は洋服でも着物でも、そしてテーブル&椅子だけでなく、和室で正座でも幅広く活動しています」
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