苦労も失敗もすべての経験を糧にして切り拓いた時短家事アドバイザーとしての道
家事の効率化を追求する時短家事アドバイザー、ライターとして活躍する、やまがたあやこさん。自身も家事の負担を大幅に軽減した家で生活を送りながら、仕事はもちろん子育ても趣味も全力で楽しむシングルマザーだ。しかしながら、情報誌の営業職やECコンサルタントなどを経てライターとして独立した直後は、ワンオペ家事&育児で家の中は乱れ放題だったという。はたして彼女はどのように時短家事アドバイザーという道を切り拓くにいたったのか。決して順風満帆ではなかったが、その分、ただがむしゃらに突き進んできた。そんな彼女の転機となった道のりに触れたい。
すべての画像を見る場合はこちら営業職での学びや気づきを生かして、導入事例ライターとして独立を決意
1978年、広島生まれのやまがたさんは大学を卒業後、地元のゴルフメーカーに就職するも、営業職を経験してコミュニケーションスキルを磨きたいと思い、転職を決意。3年間の期間限定契約社員(KS/旧CV職)としてリクルートに入社する。同社では結婚情報誌「ゼクシィ」の営業として、記事広告の販売を担当。単なる広告販売ではなく、集客プランや誌面の提案も行った。
「体力的にも精神的にもハードな仕事でしたが、ここでの経験が、今の私のスキルの土台になっています。特に記事広告の内容を考える中で、〝お客様の声〟を記事に掲載すると集客数が伸びる、ということに気づいたんです。この発見が、後に導入事例ライターとして独立する大きなきっかけになりました」
3年間の雇用期間満了と同時に、リクルートを〝卒業〟した年に結婚した彼女は、夫の住む大阪へ移住。新婚生活がスタートすると同時に、楽天のECコンサルタント(広告営業)として再就職した。
「私が担当していたのは、出店店舗さんの売上アップをサポートするため、広告や学習制度を提案する仕事。そこで個人事業主の方々と接する機会があり、『自分の力で生きている人がいるんだ!』と衝撃を受けました。それまで私はBtoB(企業間取引)の仕事しか経験がなく、家族も会社員だったので、そういう生き方があることすら知らなかったんです」
その一方で数字や結果を求められる営業職のため、広告を必要としていないであろう店舗にも提案しなければならない場面が。「そのたびにモヤモヤとした気持ちを抱えていた」とやまがたさんは当時を振り返る。さらに、多忙なあまり毎日帰宅が遅くなったことで、家庭にも影響が及び始めた。
「ついには夫が『会社を辞めろ』と怒り出してしまい。仕事と家庭の間での調整に疲れたし、もし子どもができても、この生活ではうまく育てられないと感じて…。それに、『この仕事は私じゃなくてもできる』と思ってしまったんです。そう気づいた時に、退職を決意しました」
退職したものの、根っからの〝仕事好き〟というやまがたさんは「次はなにをしようか」と日々考えながら、さまざまな本を読み漁った。
「そんな時に出会ったのが、経沢香保子さんの『自分の会社をつくるということ』という本でした。その中で、導入事例ライターという仕事があることを知ったんです。今でこそ当たり前のマーケティング手法ですが、当時はほとんど知られていない仕事でした」
導入事例ライターとは、企業の商品やサービスを導入したクライアントの成功事例を取材し、具体的な成果や導入の流れを記事化するライターのこと。実際にサービスを利用した企業や個人のリアルな体験談を通じて、潜在顧客に「この商品やサービスを導入すれば、自社でも同じような成果が出せるのでは」と感じてもらい、導入のメリットを伝え、興味や関心を喚起する役割を持つ。
「リクルート時代に〝お客様の声〟を記事広告に掲載すると集客数が増えた経験があったので、これこそ自分がやるべき仕事だ!と直感。導入事例を書くことで、お客様の売上に貢献できると確信しました」
しかしながら、記事広告を扱ってはいたものの、実際にライティングの経験はなかったやまがたさん。「本当にライターという仕事が自分に務まるのか?」という不安がよぎった。
「でも、すぐに『日本語だし、なんとかなるか!』と。楽天時代に、個人でお店を運営する店主さんたちに出会ったことで、〝個人レベルで起業〟という選択肢も現実的に感じられるようになったことが、大きな後押しになりました。さらに夫も働いているので、起業直後に収入が少なくても即、生活に困ることはないわけですしね。昔のことを振り返る時、私はこの起業スタイルを〝パラサイト起業〟と冗談交じりに呼んでいます(笑)」
こうして、やまがたさんは導入事例ライターとして独立の第一歩を踏み出す。参考にした経沢氏の書籍によると導入事例を制作する会社が東京に1社だけあり、調べてみると同社が外注ライターを募集していた。すぐに彼女は同社へ連絡を取り、一度だけ先輩ライターの取材現場に同行する機会を得る。この経験をもとに、取材や撮影の進め方、構成をどうするかなどを独自に模索し、実践へとつなげていった。
「文章術や取材術に関する本もたくさん読みました。当時のバイブルは、上阪徹さんの『書いて生きていく プロ文章論』。初期のころは、この本に書かれていることを忠実に守りながらライティング。難しかったですが、時間をかけて学んでスキルを磨き、その後、ブックライターを目指すために上阪先生の塾にも入塾しました」
やまがたさんが独立した2008年当時は、まだSNSで仕事を獲得するという方法が一般的ではなかった。そのため、まずはホームページビルダーを使用し、手探りでホームページを作るところから始めた。
「地元で立ち上がったばかりの営業や情報交換を目的とした〝IT飲み会〟にも参加しました。そこで自己紹介をしたところ、『そんな仕事があるんだね!』と興味を持ってくれたのが、飲み会の主催者でもあったチャットワークの創業者の方。その場で導入事例の仕事を発注してもらえたんです」
順調なスタートを切ったかに見えたが、間もなく妊娠・出産を迎え、思うように仕事が続けられない状況となった。
「子どもが粉ミルクを受け付けず、常にそばにいる必要がありました。ワンオペ育児だったので、とにかく忙しくて落ち着く暇もなく、目も離せない。仕事に集中する時間も取れず、体を休める余裕もほとんどなく…。部屋は散らかり放題で、もともと掃除は得意ではなかったし、『今すぐ命に関わるわけじゃない』と思って後回しに。でも、そんな状況なのに夫はなぜか助けてくれなくて…正直、がっかりしました」
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