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識者が語った「実用化に向けたポイント」、 UiPathウェビナーレポート

AIエージェント実用化は“限界の把握”から 2025年はユースケースを血眼で探す年

2025年02月18日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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AIエージェントを適用すべきタスク

 続いては、そもそもAIエージェントとは何かという話だ。太田氏は、「目標に向けて環境とやりとりしながらタスクをこなす知能(インテリジェント)システム」と定義する。

 AIエージェントらしいポイントは、知能であるLLMが目標に向けて自律的に計画を立てること。行動まですること。特定の環境における情報を理解すること。そして、結果から問題を認識して、計画を修正してまた行動する“サイクルを回す”ことだという。

AIエージェントとは

 このAIエージェントは何に応用できるのか。基本は「人間も複数ステップを要するプロセス」があるタスクだという。例えば、構成決めから情報の検索、データ分析、図の作成、レポートとしてのまとめなど、複数のステップを要するレポート作成も、そうしたタスクのひとつだ。

 

 AIエージェントの応用で得られる価値は、まず、生成AIと同様の「不透明な業務プロセスの刷新や効率化」が挙がる。ただ、生成AIと比べて、業務を棚卸しして置き換えられる範囲が幅広いのがAIエージェントの特徴だ。加えて、専門人材の対応をAIエージェントが担うことで人手不足を解消するなど、「AIがまるで従業員のように働く世界」を実現しうるものである。

AIエージェントの応用例

 太田氏は、今後AIエージェントの鍵となるのは、「知性」と「自律性」だと強調する。知性とは「いかに従業員らしくふるまうか」、自律性とは「いかに専門的な処理をこなせるか」を指す。

 この知性と自律性を2軸に置いて分類すると、現在のR&Dの主戦場は、自律的にソフトウェア開発やコンピューター操作をするような「知性と自律性が高いもの」であり、実用化はまだ先の話となる。その反対に、プロダクトの主戦場は「知性も自律性もまだまだ低いもの」で、状況に応じてAPIを使う、定められたワークフローを選ぶなど、ゴールまで2ステップ程度の単純なものが多くを占めるという。

 一方、企業のPoCの主戦場は「知性は高いが自律性は低いもの」だ。具体的には、専門的な知識を要し、業務のコンテキストも理解できる、実業務に役立つようなAIエージェントである。太田氏は、「今後色々なニュースが出てくる中で、どの領域の話をしているかを見極めるべき」と呼びかけた。

AIエージェントの鍵となる「知性」と「自律性」

2025年は「血眼になってユースケースを探す年」に

 最後は、今後の業務実装に向けて何を考えていけば良いかだ。太田氏は、「AIエージェントのユースケースを血眼になって探すことが、2025年の象徴になる。ただ、市場からの高いプレッシャーが“誇大広告”を生み出すのも事実」と指摘する。

 加えて、日本企業の従業員の代替を目指すとなると、AIエージェントの技術はまだまだ成熟していないという。LLMは理解力が足らず、仕事を割り振るには、考え方や進め方をイチから教えなければいけない。新卒社員に引き継ぐようなレベルで、人間が業務ドキュメントを整理する、といった準備が必要となる。

 そのため、現時点で実運用を目指すには、代替業務の範囲を狭くするといった“妥協”が不可欠だ。太田氏がおすすめするのは、単一部署で完結する業務から取り組むことで、時間を要する複数部署や子会社との調整や業務プロセスの全体把握などの工程を省くことができる。

 太田氏は、「2025年は、社内の業務プロセスを理解して、AIエージェントを試作して、“限界が分かるまで”評価・改良することが重要。今できなくても、将来的にはLLMが賢くなって変わるかもしれない。時間が経てばできることなのか、できないことなのかの境目を今知っておくべき」と強調する。

 最後に、AIエージェントの利用方法だ。選択肢は3つある。ひとつ目は、既存のAIエージェントを利用すること。例えば、DevinやGenSpark、Perplexity、OpenAIのDeep Researchなどが挙げられる。2つ目は、AIエージェントの構築を支援してくれるエージェントビルダーを使うこと。開発スキルがなくても利用できる一方で、業務特化な用途には物足りないところがある。最後は、フルスクラッチで作ること。特定業務を効率化するには有効だが、開発と検証に数か月を要する。太田氏は、AIエージェントの開発は「RAGとは異なり、簡単には作れず、相当なエンジニア能力が必要になる」と述べた。

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