識者が語った「実用化に向けたポイント」、 UiPathウェビナーレポート
AIエージェント実用化は“限界の把握”から 2025年はユースケースを血眼で探す年
2025年02月18日 08時00分更新
世界的な生成AIブームを経て、2024年の後半から市場において急速に認知が進み、期待が高まっている「AIエージェント」。一方で、ガートナージャパンは、2025年1月時点で、「ユーザーが何も設定等をせずに、企業ユーザーにとって気の利いた対応が出来るAIエージェントは、現時点では世の中には存在しません」と指摘している(参考記事:ブームに流されるな 期待高まる「AIエージェント」にガートナーが警鐘)。
では、現場寄りの識者は、AIエージェントの実用化についてどう分析しているのか。本記事では、2025年2月7日に開催されたUiPath主催のウェビナーから、電通総研のXイノベーション本部 AIトランスフォーメーションセンター AIエンジニアである太田真人氏によるセッションを紹介する。

(左から)UiPath Product Marketing Manager 山崎麟太郎氏、電通総研 Xイノベーション本部 AIトランスフォーメーションセンター AIエンジニア 太田真人氏、UiPath Generative AI Solution Architect 隈元大樹氏
今、AIエージェントが注目されている理由
太田氏は、電通総研でAIエージェントの開発などを担当し、2024年4月から毎週AIエージェントに関する情報発信(Weekly AI Agents News)を続けている人物だ。セッションでは、AIエージェントの現在までの動向と、業務での実用化を目指す上でのポイントが語られた。
まず太田氏は、現在のAIエージェントブームは2回目だと指摘する。1回目のブームは2023年3月頃。エンジニアが中心となり、ChatGPTを推論エンジンとする自律型システムが作られた。ただし、そのブームは1年もたたず収束する。自律性を求めたゆえに、タスクの成功率が不安定で実用にはほど遠く、コードも難解で初心者が扱うには厳しかったからだ。
2回目のブームは、2024年5月、Googleが開発者向け会議「Google I/O」でAIエージェントのデモを披露したことがきっかけとなった。これにより、ビジネス的にもAIエージェントが認知され始める。
その後、GoogleだけではなくAWSやMicrosoft、SalesforceなどからAIエージェントを構築するための「エージェントビルダー」がリリースされる。日本でも2024年11月以降、SI企業などから“業務特化型”のAIエージェントが続々登場して、第2回目のブームが訪れたという流れだ。
ビックテックによるAIエージェント関連サービスの提供状況をみると、「人間がソフトウェアの操作をしなくてもよい世界を目指している」と太田氏。これまで人間が複数のソフトウェアを立ち上げて、切り替えながら作業していたものを、AIエージェントが代行するという世界だ。
太田氏は、2回目のAIエージェントブームが本格化した理由を3つ挙げる。
ひとつ目は、「生成AIの性能アップ」という技術的な要因だ。これにより、課題であったタスク成功率が向上。JSON形式の構造化出力やAPIを呼び出すFunction Calling機能の強化など、安定性が高まる機能改善も進んでいる。さらには、OpenAIの「o3」のような、論理的思考能力を強化したモデルも登場している。
2つ目は、「RAGによる業務効率化の限界」だ。特に国内において、RAGと社内資産を用いた業務課題の解決が一通り試された。RAGでは解決できない“限界”が見え始め、AIエージェントに目が向き始めた。
3つ目は、海外における「ソフトウェアの付加価値創出」のためのAIエージェントの発展だ。結果、“海外からの圧力”として日本でもブームに発展した。
