組織をつくる・変えるための「人と心の動かし方」をリクルートMSが解説
「実はコスパが高い」 今も昔も“なりたくない”管理職に対する3つの誤解
2025年01月27日 07時00分更新
組織を変える:人の「変わりたくない」を跳ね返すベースは「人としての尊厳」や「自己決定」
管理職は、組織の土台を作った後も、パフォーマンスを上げるために、組織開発を進めなければいけない。そこで学ぶべきなのは“人の集団”としての習性である。
例えば、人は模倣が上手く(社会的学習)、組織においては周りが怠惰であれば、自分も怠惰になる傾向がある。また、周りと同じような行動をとる「同調圧力」も人の集団的な習性だ。問いへの解が明確であっても、周りが不正解を選択すると合わせてしまうことがあり、特に日本では同調圧力が強まる傾向があると言われている。
他にも、集団になると周囲を見て手抜きをする人が現れ、一人あたりの作業量が低下する「社会的手抜き」にも注意が必要だ。「組織が運悪くうまく動いていない時には、(メンバーが)上手くいっていない行動を模倣したり、同調したりする。リーダーや組織に対する不信感や社会的手抜きが発生すると、それも同調され、組織が崩れていく」(古野氏)
こういった習性を踏まえて、組織、そして人や集団の行動を変えなければいけないが、一方で人が持つのが「変わりたくない」という習性だ。なぜ人が変化を嫌うというと、「馴染みのない行動は分かっていてもできない」、「馴染みがない行動が好きではない」、「自分の信念を支持する情報を集めがち」、「変わることは自身の否定につながると感じる」といった、さまざまな傾向からだ。
この習性を跳ね返して行動を変えるベースになるのが、「人としての尊厳」や「自己決定」だという。ある工場で実施された実験では、経営者が作業手順の変更を事細かに指示したものの、変化とやらされ感で従業員の士気が低下、生産性も3分の2まで落ち込んだという。一方で、作業手順の問題に対する解決策を従業員に考えてもらった結果、最初は生産性が落ちたものの、最終的には向上した。
組織を変えていくには、この工場の事例のように、メンバーやチームが自己決定するようなワークショップなどを実施して、「当事者感」を醸成することが有効になる。そして、その際に前述した対話を活用して、「他者が変わるなら自分も」と思わせることが効果的だという。
古野氏は、「外から新しいリーダーを連れてくれば、組織は変わり、容易な手段としてインパクトがあるのも確か。しかし、ベースは『メンバーにとって意味のある目的』や『人としての尊重』、『自己決定』、『対話の活用』、『同調圧力』などを上手く利用して、ハードイシューやソフトイシューのデザインをしていくのが、組織を変えるということ」と締めくくった。










