習慣化のカギは「面倒くさい」の使い方。人生の可能性を広げるタイムコーディネート実践法

文●源詩帆  編集/山野井春絵

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 前回までの記事(シリーズ1・2)では、時間術の専門家(タイムコーディネーター)の吉武麻子さんに、時間の主導権を取り戻す考え方や、自分らしく時間を整えるための視点についてお話を伺いました。

 今回はその実践編として、「やりたいことを実現したい」「これから見つけたい」、そう思いながらも、どこから手をつければいいかわからないという方のために、まず始めるべきこと、朝・日中・夜の時間帯別の見直し方、無理なく続けるためのコツなど、具体的な手法を吉武さんに伺いました。(シリーズ3/3)

やりたいことは『振り返り』と『心地よさの貯金』から見つける

 「やりたいことを実現したい」「やりたいことを見つけたい」というミドル世代女性は、まず何から始めたらいいのでしょうか。吉武さんに伺いました。

 「共通して言えることは、振り返りの時間を習慣にすることです。やりたいことが明確で、かつ見切り発車で動くことが好きな方もいますよね。行動力は大切な強みですが、うまくいかなかった時に振り返らないまま次へ進んでしまうと、同じところをぐるぐると回り続けてしまいます。

 やりたいことを見つけたい方の中には、ゼロの状態から考えようとする方が多くいます。でもそうすると『稼げるかどうか』『今の自分には無理かも』といった条件やジャッジが先に出てきてしまい、本当にやりたいことが見えにくくなります。

 振り返り自体が難しいと感じる場合は、まずは今日あったことを材料にして考えてみてください。楽しかったこと、心地よかったこと、もやっとしたこと。こういった日々の小さな気づきを言葉にしていくことで、やりたいことを自然に見つけていくヒントとなります。楽しかったことには意識して時間を使い、もやっとしたことは少しずつ手放していく。いわば『心地よさの貯金』の繰り返しが、自分にとって心地よい時間の使い方を明確にしていきます。

 慣れてきたら、振り返りを自分との作戦会議と捉え、次の3つのポイントを意識してみてください。

 ① 成果:何ができていたのか

 ② 改善:何を変えたらよいのか

 ③ 手放し:やらないことを決める

 この3つの観点で書き出すことで、目標に向かって軸をぶらさずに進んでいけるようになります。その際、『タスクができたかどうか』だけでなく、『やってみて自分はどう感じたのか』という感情の振り返りも意識してみてください。それが自分の心地よい時間の使い方を探求するポイントになります。

 振り返りは自分が心地よいと感じる方法で構いません。お気に入りのノートやペンにこだわってもいいですし、裏紙に書いて毎日捨ててもいいですね。

 また、振り返りの時間はイライラした時にも応用できます。イライラを、その場で解決しようとせず、落ち着いてから状況を整理し、なぜそうなったのかを振り返る。例えば家庭内で起きたイライラの場合、この振り返りのワンクッションを挟んでから、家族に伝えることで、勢いで感情的に伝えることが減っていきます。そういった親の関わりが、子どもが友人関係のトラブルに直面した時に、自分の思考を整理する力にもなっていきます。

 日々、家族がそれぞれ自分の気持ちを観察して言葉にする。その習慣が、自分自身の理解を深めるだけでなく、家族がお互いをより深く理解し合うことにもつながっていきます」

「朝礼を前夜に終わらせる」が、朝のダラダラをなくす

 朝・日中・夜における具体的な時間の過ごし方を教えてもらいました。

 「まず朝について。家族がまだ起きていない早朝は時間の主導権を持ちやすく、一日の中で最も頭がクリアな時間帯です。

 やりたいことが明確な方は、朝をアクションタイムにしてください。自分がやりたいことのためだけに朝の時間を使うことができると、一日の充実度が上がります。やりたいことがまだない方や疲れが溜まっている方は、心身と頭のリセットの時間にすることを意識してください。特に起きてすぐのスマホは避けましょう。朝のクリアな脳を情報処理に使ってしまうのはもったいない。朝スマホをやめるだけでも、一日の疲れ方が変わり、やりたいことに向き合う余裕が生まれます。

 日中は、決めたことを実践する時間です。何をすればいいか曖昧な状態がダラダラ時間の原因になるので、事前に『今日やること』を1〜3つは決めておきましょう。前回の記事でお伝えした、緊急になる前に家事や仕事を前倒しで進めておく時間に当てることもおすすめです。決めたことを淡々とこなす、まずはそこから始めてみてください。

 夜は翌日の準備と振り返りの時間です。翌日やることを夜のうちに決めてから眠ると、朝目覚めた時点で『今日はこれをやる』と決まっている状態になり、ダラダラした時間がぐんと減ります。夜に時間が取れない場合は、まず朝に整理することから始め、慣れてきたら夜に移行してみてくださいね」

できない日があって当然。習慣化のカギは「面倒くさい」の使い方

 習慣を無理なく続けるためのポイントは?

 「何かを習慣化するカギは意志の力ではなく、『面倒くさい』という感覚をうまく使うことです。やめたい習慣にはあえて面倒な状況を作り、続けたい習慣には始めるまでの手間をなくす。例えば、夜に甘いものを食べてしまうなら食後すぐ歯を磨く、朝に本を読む習慣をつけたいなら枕元に本を置く。環境を整える方が、意志に頼るよりずっと楽に継続できます。

 ただ、習慣化する上でまず知っておいてほしいのは、できない日があって当然ということです。毎日完璧に続けられる人はそこまで多くありません。乗用車とスポーツカーで同じ走り方はできないのと同じように、人はそれぞれ骨格も体力も違います。人と比較したり、完璧を目指してしまうと、できない自分に落ち込んで、全部投げ出してしまうことになりかねません。長い目で見た時に、ゆるやかに続けていくことの方がはるかに大切です。

 風邪で寝込む、前日の夜遅くに予定があるなど、そういうことは必ず起きます。だからこそ、そうなった時の戻り方を、あらかじめマイルールとして決めておくことをお勧めします。例えば『夜遅くなった翌朝は、いつもより少し遅く起きてもいい』というルールがあるだけで、継続へのハードルが下がります。

 途切れても再開できるなら、『続かなかった』という概念そのものがなくなっていきます。自分なりのちょうどいい続け方を知って、できない日も自分を責めない。それが長く続けるための一番の近道です」

それでも「目がまわるように忙しい時」はどうしたらいい?

 どれだけタイムコーディネートをしていても、避けられないほど忙しい時期は誰にでもあるはずです。そういった時の乗り越え方を、吉武さんの実体験をもとに教えてもらいました。

 「私自身も、初めて著書を執筆していた時期に、自治会長の輪番が回ってきたことがありました。執筆にどれだけ時間がかかるかもわからない中、学童の保護者会の役割も重なり、その頃は常に何かに追われていました。

 そんな状況でも意識していたことが2つあります。ひとつは『終わりがある』と自分にしっかり認識させること。もちろん、その渦中の大変さは変わりません。でも『自治会長も学童の役割も1年で終わる、執筆も数ヶ月で終わる。この期間だけ頑張ればいい』と意識的に言い聞かせることで、悲観的になるのを防ぎ、自分を落ち着かせることができます。

 もうひとつは、役割がどれだけ重なっていても、一日の中で自分が主導権を持って過ごせる時間を5分でもいいので作ることです。

 『5分もゆっくりできる時間がない』と感じる時こそ、落ち着いて、どうにか5分捻出できないか考えてみてください。スマホを置いて、食事中や歯を磨く間に好きな音楽を聴くだけでも十分です。まず5分、自分のための時間を意識的に確保することから始めてみてください」

時間について考えることは、ライフシフトの土台になる

 最後に、ミドル世代女性に向けて伝えたいことを伺いました。

 「私は、何か大きなことを達成することだけが人生の成功ではないと思っています。自分が大切にしたい『もの』や『こと』、『人』のために時間を使うことができる生き方の方が、ずっと大事です。だからこそ、タイムコーディネートでは、その考えを軸にしています。

 タイムコーディネートやライフシフトを始めるのに、遅すぎることはありません。今日からでも始めて、それぞれが持つ生きがいに、最大限の時間を使えることを願っています」

 シリーズを通して吉武さんが伝えてくれたのは、時間を効率よく使うテクニックではありませんでした。振り返りを重ね、自分の心地よさを知り、主導権を持って時間を使えるようになること。それこそが、これからの人生を豊かにする時間の過ごし方であり、それはミドル世代女性にとってのライフシフトの土台になるのかもしれません。

著書『「時間がない!」から「余裕のある毎日」へ 24時間が変わる朝の30分』(大和書房)。朝時間をテーマに、5タイプに合わせた実例がわかりやすく紹介された一冊。

 

Profile:吉武麻子

よしたけ・あさこ/TIME COORDINATE株式会社代表取締役、作家、タイムコーディネーター

神奈川県生まれ。大学卒業後、旅行会社勤務を経て、26歳で韓国留学。その後、現地法人でキャスティングディレクターとして24時間365日仕事に追われる日々を過ごす。帰国後、キャリアとライフイベントの狭間で葛藤した経験から、疲弊せずに毎日を楽しみながら仕事のパフォーマンスもあげていく「タイムコーディネート術」を考案し、のべ4000名以上に指南。著書に『1年・1カ月・1週間・1日の時間術』『時間デトックス』『24時間が変わる朝の30分』など。その他『時短・効率化の前に今さら聞けない時間の超基本』などの監修や、タイムコーディネート手帳の製作販売、企業研修、時間の専門家として各種メディアにて掲載・連載執筆を行っている。プライベートでは小学生2児の母。


吉武さんのInstagramはこちら。

 

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