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ローソンにAIドローン配備で警察の捜索に協力 石川県とKDDIが「地域防災コンビニ」

2024年12月24日 13時30分更新

文● 佐野正弘 編集●ASCII

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ドローンとコンビニで警察の捜査に協力

 石川県と石川県警察、そしてKDDIとローソンは12月23日、AI技術を活用したドローンを用い、警察活動の高度化に向けた「地域防災コンビニ」の実証に成功したと発表した。

ドローン

石川県と石川県警察、KDDI、ローソンは12月23日、ローソン店舗にドローンを配備し、行方不明者の捜索や事故の初動対応などに活用する「地域コンビニ」の実証の様子を報道陣に公開した

 この実証は、石川県とKDDIが2024年10月に締結した包括連携協定に基づいて実施されたもの。石川県の七尾警察署の近隣にあるローソン七尾小島店に、KDDIが出資するSkydio製の自立飛行型ドローン「Skydio X10」を配備し、七尾警察署からの指示によって行方不明者の捜索や事故現場と見立てた場所まで飛行。

 Skydio X10のカメラを用いて遠隔で現場確認までの初動対応をするもので、同日には報道陣に実証の様子が披露された。

 石川県警察本部の警察本部長である大嶌正洋氏は実証に先立って、今回の実証の狙いについて説明。石川県では2024年、能登半島地震に奥能登豪雨と大規模な自然災害が相次いで発生したが、その際にもドローンを利用して、被災現場を確認するなどして有用性を確認してきたという。

 それだけに今回の実証実験が、将来的に警察がドローンを活用するユースケースを広げることにもつながると、大嶌氏は大きな期待を寄せている様子を示していた。

ドローン

石川県警察の大嶌氏は、今回の実証が警察のドローン活用を広げる取り組みの1つになると期待を示している

 石川県庁のデジタル推進監である成瀬英之氏も、大規模災害時にドローンを活用した事例を評価するが、一方でドローンを災害対策に活用する上では「フェーズフリー」の取り組みが重要とも実感したと話している。

 フェーズフリーとは、平常時と非常時を区別することなくドローンなどの新しい技術を活用する取り組みで、日常利用しているものと同じシステムが、大規模災害などの非常時にも大きな力を発揮するという考え方になる。

ドローン

石川県庁の成瀬氏。災害時にドローンを活用する上では、平常時と非常時を区別せずにドローンを活用するフェーズフリーの取り組みが必要と話している

 そして今回の実証で、フェーズフリーのドローン運用を担うのがKDDIグループとなる。KDDIの取締役執行役員常務CDOである松田浩路氏は、石川県との包括連携協定を締結し「創造的復興」を実現するうえで、災害発生時の備えとしてフェーズフリーでのデジタル技術活用をどう進めていくべきか検討。その結果として能登地域における防災のデジタル化、そして地域防災コンビニの展開を打ち出すにいたったとしている。

ドローン

KDDIの松田氏。アメリカでの事例などから、ドローンは災害時だけでなく日常的にも活用できるとし、地域防災コンビニの取り組みを石川県と積極的に進めていく考えを示した

 そのフェーズフリーを進めるうえで、最初に白羽の矢が立ったのがドローンであるようだ。先にも触れたように、ドローンは能登半島地震や奥能登豪雨でも活用がなされた実績があり、災害時の有用性が示されているだけでなく、アメリカでは産業向けの点検業務や警察の事件対応など、日常的に活用されている実績もある。

 それだけに、日本でもドローンの活用が当たり前になると考えていると松田氏は説明。社会実装を進めるべく、ローソンと共同で地域防災コンビニの取り組みを打ち出したのだそうだ。その地域防災コンビニを石川県から全国に発信していく最初の取り組みが、今回の実証となるようだ。

行方不明者の捜索や事故現場の確認にSkydioを活用

 その実証は大きく2つ実施されており、1つはドローンによる行方不明者の捜索である。これはローソン七尾小島店から1kmほど離れた小丸山城址公園付近で行方不明者が遭難したことを想定し、現地にSkydio X10を飛行させて行方不明者を捜索するもの。

ドローン

実証の様子。右側にいるKDDIスマートドローンの担当者がドローンを操縦し、左側や後ろにいる警察官とコミュニケーションしながら捜索や事故現場の確認などをする

 石川県警察から七尾警察署に通報が入ると、ドローンを運航するKDDIスマートドローンの担当者がドローンを遠隔で操作。約1kmの航路を高度50m、50km/hで飛行し、2~3分程度で現地に到着する。

ドローン

Skydio X10はローソン七尾小島店に設置されたドローンポートから飛び立ち、現場に向かって自立飛行する

 なお、今回の実証はいずれもドローンの飛行レベル3.5での運航となり、飛行ルートはいずれも無人の場所が選ばれている。目視外飛行するうえではドローンのカメラで周囲を確認する形が取られているが、それが実現できたのもSkydio X10が4G/5Gのモバイル通信機能を搭載しており、通信を活用しての遠隔操作ができることが大きい。

ドローン

実際に飛行しているSkydio X10。事前に設置されたルートを飛行しているが、今回は飛行レベル3.5とのことで、基本的に無人のエリアを飛行する形が取られていた

 Skydio X10は通常のカメラに加え、サーマルカメラ機能も搭載している。そこで行方不明者を見つける際には、通常のカメラによる目視だけでなく、サーマルカメラを活用し体温を基に人物を探し出す様子も披露されていた。

ドローン

Skydio X10はサーマルカメラも搭載しており、サーマルカメラを用いて行方不明者を捜索する様子も披露された

 もう1つの実証は交通事故の衝動対応で、こちらはローソン七尾小島店から約5km離れた大規模駐車場で事故が起きたことを想定し、そちらにドローンを急行させリアルタイムで事故の状況を確認するものとなる。

 石川県警察によると、事故現場の近くには能登島大橋があり、付近で事故が起きるとそちらで渋滞が発生する可能性があるためパトカーですぐ現場に向かうのは難しいという。そうした場所で素早くドローンで現地の状況を確認し、対策を立てるというのが実証の狙いとなるようだ。

 こちらの実証ではSkydio X10が高度約50~65mを50km/hで飛行し、途中渋滞の様子を確認しながらも、現場には10分程度で到着。飛行レベル3.5で飛行する際には通常、国土交通省に事前の許可を得る必要があるのだが、今回の実証のように緊急性のある用途での飛行には特例措置が適用され、許可を得る必要なく飛行させることが可能とのこと。

 Skydio X10が現場に到着したら、本体のカメラ機能を用いて状況を確認。このカメラは250m先のナンバープレートも確認できる性能を持つそうで、高いカメラ性能とドローンの機動性を活かして車両の破損個所、そして乗車人数などを確認する様子が披露されていた。

ドローン

高い性能のカメラを活用し、事故現場の細かな破損個所や、乗車人数なども確認できるという

 加えてSkydio X10は本体のカメラを用い、10分程度飛行することで周辺環境を3D化する機能も備わっている。そこで3D化した事故現場のデータを活用し、より詳細な被害状況を確認する様子なども披露されていた。

ドローン

Skydio X10の機能を用いて事故現場を3Dデータ化し、そちらを用いて現場の状況を確認する様子も示された

将来は全国展開も検討も
実装はまだ当分先になりそう

 今回ローソン店舗に設置されたドローンポートは、実証ということもあって店舗に臨時のやぐらを組むなどして臨時に設置されたものとなる。だがフェーズフリー実現のためとはいえ、ドローンを常時そのまま屋外に置いておくのは難しいだろうし、実際の利活用を考慮するならばドローン自体の充電も必要だろう。

 それゆえ実利用の際には、2025年に発売予定の専用ドローンポート「Dock for X10」を活用することが検討されている。こちらはドローンの自動離発着に対応し、充電も自動でできるほか、寒冷地での使用に備えサーモヒーターも搭載している。

ドローン

今回の実証のドローンポートはあくまで臨時のものだが、今後Skydio社が発売予定の専用ドローンポートを活用する考えも示された

 今回の実証は、あくまで地域防災コンビニの展開に向けた第一歩というべき取り組みであり、その実績を石川県警察がいつ、どのような形で取り入れるかはまだ分からないという。また、実証ということもあって、電波環境の影響などによってドローンの飛行準備に時間がかかるなど、運行がスムーズに進まない様子も時折見られた。

 それだけに、地域防災コンビニの具体的な実装はまだ先の話となるようだが、KDDIでは今後、より多くのユースケースに関する実証を進め、将来的には全国にドローンポートを展開し社会インフラへと進化させていきたい考えを示している。

 今回の取り組みを機として、将来のドローン活用に向けた施策がより積極的に進められることにも期待したい。

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