ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第796回
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU
2024年11月04日 12時00分更新
スクラッチパッドを384KBに増強
補助電源コネクターが必須に
問題はその性能だ。1.35GHz動作で、PEは64個のままで変わらない。これでGEMM(General Matrix-Matrix Multiplication:汎用行列乗算)が354TOPSとなっているから、1サイクルあたり4096Opsとなる。要するに行列乗算のエンジンの性能が2倍に強化され、それと動作周波数の向上(800MHz→1.35MHzで68.75%の向上)で3.375倍にピーク性能を高めた、という仕組みだ。
その中核である行列演算エンジンの性能は、FP16で2.77TFlops/秒なので、INT 8なら5.54TOps/秒となり、4096 Ops/サイクルでつじつまが合っている。ちなみにPE内部のスクラッチパッドも384KBに増強された。
MTIA v1に比べて1サイクルで処理できる能力が2倍になったから、最低でもスクラッチパッドの容量を2倍にしないとつじつまが合わない。実際にはさらにモデルが複雑になっていることを考慮して3倍にしたのだろう
消費電力がチップあたり90Wまで上がると、さすがにデュアルM.2では収まりきらないようで、アクセラレーターカードはPCIeのフルハイト/フルレングスのものになった。ここに2つのMTIA v2チップを搭載する格好になる。220WではPCIe x16コネクターだけでは電源を供給しきれないので、補助電源コネクターは必須となっている。
なぜ片方のMTIA v2チップだけ90度回転させて搭載しているのかは不明。昨今のGPUを考えれば、1枚のボードに4つくらい載せられそうだが、Meta(というか、物理設計を請け負っているという噂のMarvell)にはそこまでの設計能力がなかったと思われる。無理して4つ載せてもHost I/Fに困るという話もあるので、妥当な設計だとは思う
当然ここまで大きいと、MTIA v1の時のようにYosemite V3のシャーシには入らない。説明では、2 CPUのシャーシに、片側6枚づつ合計12枚のMTIA v2のカードを装着。このシャーシをラックに3つ搭載する、としている。
Host CPUがなにかは不明だが、例えばGen 4/5 EPYCならPCIe Gen5レーンを48本出すのは容易なので、間にPCIe Switchを挟む理由は不明である。単に配線が大変だから、というあたりが理由かもしれないし、あるいは直接MTIA v2カード同士で通信するケースもあってレイテンシーを下げたかったのかもしれない
2024年前半からこのMTIA v2の展開をスタートしたそうだが、現状はまだMTIA v1とv2が混在している環境の模様だ。それもあって、まだソフトウェアの最適化をしている段階との話だが、7ヵ月目でやっとベースラインに達したレベルでまだ最適化は十分でないようで、性能のベンチマーク結果などは示されていない。
このあたりはもう少しして、最適化が一段落した段階でまたなにかしら示されることになるとは思う。価格あたりの性能や消費電力あたりの性能の改善、Metaのさまざまなサービスへの展開、それと開発の効率化を目指したのがMTIA v2であり、現在はその途中での経過報告といった感じの発表であった。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ














