TDPを下げても影響は小さい
ここからは「UL Procyon」を利用して検証する。最初に「Office 365」の「Word」「Excel」「PowerPoint」「Outlook」におけるパフォーマンスを見る“Office Productivity Benchmark”だ。TDPを170Wから65Wに下げてもCINEBENCH 2024のシングルスレッド性能はまったく変化しなかった、という前掲の結果から、シングルスレッド頼みの処理の多いOffice 365ではスコアーへの影響も小さいと予想することができる。
予想通りTDPを65Wに絞っても、PPTを230Wに盛ってもスコアーはほとんど変化しない。強いていえばPPTを230Wに設定した時は定格時よりもスコアーが伸びているが、1%程度の違いはこのベンチマークにおいては誤差の範囲である。
ただテスト別スコアーを見るとマルチスレッド処理の比重がやや多いExcelだけはTDPの影響を強く受けていることがわかる。しかしExcel以外のテストはシングルスレッド性能が重要なので、Excelでの評価は総合スコアーに反映されにくくなっているのだ。
続いて「Photoshop」および「Lightroom Classic」を動かす“Photo Editing Benchmark”で検証する。Photoshop(Image Retouching)はシングルスレッドが、Lightroom Classic(Batch Processing)はマルチスレッド性能が効きやすいことが経験上わかっている。
総合スコアーではTDP 65WとRyzen 9 7950X以外のスコアーはほぼ横並び。CINEBENCH 2024やHandbrakeではRyzen 9 9950XのTDPを65Wまで絞ると7950Xよりもパフォーマンスが下がってしまったが、処理の並列度が低い実アプリではTDPを65Wに絞ってもなお、Ryzen 9 9950Xは7950Xに対しアドバンテージを持つ。CINEBENCH 2024のシングルスレッド性能で示された通り、Ryzen 9 9950XでTDPを絞っても体感性能にダイレクトに響くことはないようだ。
テスト別のスコアーに目をむけると、Batch ProcessingテストではTDP下げの影響が強く出ている一方、Image Retouchingではまったく関連がないことが読み取れる。これは前述の通りPhotoshopとLightroom Classicではコアの使い方が違うからだ。
TDP 105W設定時のImage Retouchingが一番高スコアーになった理由は不明だが、PPT 230W時とTDP 105W時のスコアーの違いは1%程度なので誤差といっていいだろう。総合スコアーで上から4位までのスコアーが横並びなのは、Image Retouchingの差がBatch Processingの差で埋められプラスマイナス0になったため、といえる。