Ryzen 9000シリーズはエネルギー効率を追求
7000シリーズよりもTDPが低い
AMDはRyzen 9000シリーズを立ち上げるにあたり、性能やSocket AM5プラットフォームの持続性といった要素のほかに、エネルギー効率を追求していると力説していた。
Ryzen 9000シリーズのTDPはRyzen 7000シリーズよりも大きく下げられている(最上位のRyzen 9 9950Xは例外)が、前シリーズよりTDPが低くてもより高いパフォーマンスを達成できると主張している。
その理由については、ヒートスプレッダーの素材や設計を見直し続けたことでRyzen 9000シリーズでは熱抵抗を従来より15%下げ、同TDPではCPU温度を7度下げることに成功したという。単純にこの温度の余裕をクロック増に転嫁するのではなく、エネルギー効率を最大化するよう調整したという。
Ryzen 9000シリーズにおいて電力効率の重要さをアピールするスライド。電力効率と性能はトレードオフではなく、両立させるものだというライバル(言うまでもなく、インテルのことだ)への強いメッセージのようにも感じる
電力効率を上げればCPU温度は低くなるし、ファンノイズも抑制できる。Ryzen 7000シリーズではTDPを高く設定し、温度の余裕を全部性能に振った結果、高負荷時の温度が高止まりしていたが、Ryzen 9000シリーズではどうなったのだろうか?
Ryzen 9000シリーズではダイの設計のみならず、ヒートスプレッダーの素材や設計も見直すことで熱抵抗を15%改善。結果として同TDPならCPU温度を7度下げることに成功したという
Ryzen 9 9950Xを除けば前モデルよりTDPが低くなった(左グラフ)にもかかわらず、前世代のRyzenに比べマルチスレッド性能(Blenderによるレンダリング)は2ケタパーセントの伸びを達成した
TDP 105WのRyzen 7 5800X3DとTDP 65WのRyzen 7 9700Xによるゲームパフォーマンス比較。TDPが40Wも低いのにゲームのフレームレートは平均12%向上したという。ただこのグラフには各ゲームにおけるCPUの実消費電力が記されていないので、鵜呑みにするのはあまりよろしくない
Core i9-14900KとRyzen 9 9900Xとの性能比較。これはCOMPUTEXでも出てこなかったデータだ。Core i9-14900Kは“インテルのデフォルト”な設定を使っている
これはCore i7-14700KとRyzen 7 9700Xとの比較。こちらもインテルのデフォルトに対しての性能をアピール
最後にCore i5-14600KとRyzen 5 9600Xとの比較
業界全体がAIを連呼している関係か、Ryzen 9000シリーズでもAIに関する言及はあった。すでにZen 4世代でAVX512やVNNIに対応しており、Zen 5では特別な命令セットは追加されていないが、Ryzen 9 9900XはCore i9-14900Kに比べLLMにおけるパフォーマンスが良いとアピールしている。
Core i9-14900KとRyzen 9 9900XをLLM(LlamaおよびMistral)の“1秒あたりのトークン”スループットで比較したもの。これもCore i9-14900Kはインテルのデフォルト設定だが、TDP 120WのRyzen 9 9900Xは17~20%高いスループットを発揮できるとしている
ストレージ(NVMe)やビデオカードの接続に妥協が必要ないのはAMDだ、と訴えるスライド。右の図はPCI Express Gen5接続のSSDにおいて、Ryzen 9 9900XがCore i9-14900Kを上回る(14900Kは設計上Gen 4接続)のは良いとして、左のグラフは帯域においてRyzenが有利、という話を強引にグラフにしたようだ