大森貝塚を発掘し、日本の人類学・考古学の基礎をつくったアメリカ人動物学者、エドワード・S.モース(Edward Sylvester Morse)が、1877(明治10)年に日本へやって来て驚いたことのひとつとして、日本人が身の回りの動物をとても丁寧に扱っていることを著書『日本その日その日』に以下のように記しています。
「何度となく人力車に乗っている間に、私は車夫が如何に注意深く道路にいる猫や犬や鶏を避けているかに気がついた。また今迄の所、動物に対して癇癪を起したり、虐待したりするのを見たことが無い。」
人が路上の猫や犬などに気を遣い、わざわざ避けて通行するといった日本ではごく当たり前のことも、アメリカ人には思いも寄らない驚きの光景だったのです。また動物の名に「さん」づけをして親しみを込めて呼んでいることも非常に興味深いこととして、モースは記録に残しています。
古来、動物や植物といった身近な自然と共に生活を営んできた日本人にとって意識しない何気ないことも、海外からはるばるやってきた外国人の眼にはアメージングなこととして認識されたのでしょう。それほど動植物と人との距離が近かったことになります。そのDNAは現代日本人にも受け継がれ「ちいかわ」や「くまモン」などを無条件で愛でる文化を生んでいるのは説明不要でしょう。
モースも驚いた日本人と動物との関わりを物語る美術品や工芸品など約240件を紹介する展覧会「どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより」が、JR東京駅丸の内北口改札前にある東京ステーションギャラリーで好評開催中です。タイトルにある通り両国にある江戸東京博物館コレクション(収蔵品数61万点)のなかから、動物が表された浮世絵、工芸品、染織などがテーマ毎に展示されています。
江戸東京博物館の最新の調査研究と初公開作品を含む充実した作品群から、江戸・東京では、人々が動物をどのようにとらえ、表現していたのかを知る絶好の機会です。現在、江戸東京博物館が大規模改修工事のため休館中だからこそ開催可能な、充実した内容となっています。
展覧会の構成は以下の通りです。
外国人が見た日本人とどうぶつ
江戸のどうぶつ~「江戸図屛風」の動物を探してみよう
飼育されたどうぶつ
野生のどうぶつ
見られるどうぶつ~見世物から動物園へ
デザインのなかのどうぶつ
東京の鉄道馬車
浮世絵だけでなく、たばこ入れ、型紙、ミニチュア玩具など人々の生活を彩った様々なものに、動物が登場しています。あらためてこうして見ると、モースの驚きも納得いくものがあります。
巨大都市江戸・東京における動物は、共生するだけでなく、さまざまに表現されて人々の生活と共にありました。動物たちへの日本人独特の愛情は、デザインモチーフへと昇華され現代へも受け継がれているのです。
ちなみにこの展覧会は、2022年にパリ日本文化会館(フランス)で開催され小規模ながら大変好評を博した「パリ日本文化会館開館25周年記念展Un bestiaire japonais - Vivre avec les animaux à Edo-Tokyo (XVIIIe-XIXesiècle) 展 (日本語名称「いきもの:江戸東京 動物たちとの暮らし」展)」の内容を拡充した凱旋帰国展となっています。
https://www.mcjp.fr/ja/un-bestiaire-japonais-jp
東京駅構内にある美術館へ、どうぶつたちに会いに行きましょう! 大人も子どもも自然と笑顔になるとても楽しい展覧会です。
どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより
開催期間:2024年4月27日(土)〜2024年6月23日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
東京都千代田区丸の内1-9-1(JR東京駅 丸の内北口 改札前)
時間:10:00~18:00(金曜日~20:00)*入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(4月29日、5月6日、6月17日は開館)、5月7日(火)
入館料:一般1,300円、高校・大学生1,100円、中学生以下無料
*障がい者手帳等持参の方は200円引き(介添者1名は無料)
*チケット販売
オンラインチケット www.e-tix.jp/ejrcf_gallery/
当館1階入口
TEL:03-3212-2485
URL:
東京ステーションギャラリー|公式サイト https://www.ejrcf.or.jp/gallery/
SNS https://www.facebook.com/tokyostationgallery/
主催:東京ステーションギャラリー(公益財団法人東日本鉄道文化財団)、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館、NHK、NHKプロモーション
協賛:T&Ⅾ保険グループ
【巡回先】
山梨県立博物館(2024年7月13日~9月2日)
愛知県美術館(2025年4~6月)
富山県水墨美術館(2025年7~9月)
東京会場だけの特別展示:東京の鉄道馬車
1882(明治15)年から1903(明治36)年まで、東京の大通りではレールの上を馬車が走っていました。「東京馬車鉄道」は、最盛期には300両の車両と2000頭の馬を擁していたといい、都市の交通を鉄道馬車も支えていたことがうかがえます。鉄道馬車の開業を知らせる華やかな錦絵3枚続、名所絵、玩具絵など、当時の版画を展示します。
近現代日本の中心・東京駅丸の内駅舎にある美術館の矜持 丸の内のアート人に聞く! ~東京ステーションギャラリー編~
https://lovewalker.jp/elem/000/004/161/4161885/
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