SaaS・デバイス管理を手がける2社が情シスの現状を本音トーク
情シスが向き合うSaaSとデバイス管理の課題 ジョーシスとマネーフォワードiが語り合った
2024年05月22日 09時00分更新
いいSaaSを使って、循環してもらう コスト削減だけが目的じゃない
大谷:情シスの課題感に対して、ジョーシスはどのようなアプローチで解決していますか?
高山:今まではどの会社も、なんらかの方法でデバイスやSaaSの管理はやってきたと思うんです。これに対してジョーシスは、人を中心とした管理台帳をまず作ります。先ほど例に出した1週間だけの期間雇用の方も、人事データベースには載ってないでしょうが、働いていたのは事実だし、デバイスも使っていたはずです。このデバイスはPCも、スマホも、アルコールチェッカーも含みます。長かろうが、短かろうが、とにかく働いている人を中心にデバイスの管理を行なうというのが、われわれの提案です。
大谷:Adminaの場合はどうでしょうか?
今井:Adminaの場合、まずはSaaSの見える化ですね。先ほどの部門内での情報のサイロ化で、見えるかを実現するのもけっこう大変。情シスも会社全体をきちんと把握したいはずですが、各部門に聞きに行くのも面倒です。「マネーフォワード クラウド」のラインナップにおいて経理部門向きプロダクトをやっている立場上、情シスと経理をつなぐことも可能です。だから実現すると7割くらいクリアで、お客さまもかなり満足されます。
その次は最適化のフェーズで、ここでコスト削減の話が出てきます。ただ、われわれもSaaSベンダーなので、SaaSを減らしたり、SaaS市場を小さくするのが目的ではありません。単純に無駄をなくし、どうせならいいSaaSを使ってもらいたい。使わなくなったら解約できるのがSaaSのいいところなのだから、いいSaaSを使い続ける循環を実現したい。だから、Adminaでそうした循環を支援し、お客さまが最適化、再投資まで進めたら、満点だと思っています。
大谷:なるほど。「SaaSを減らして、コストを削減するツール」と考えていたのですが、それが目的ではないんですね。
今井:先ほど話したクリエイティブな業務という話に近いのですが、今後どのようなSaaSを導入するか、どう運営していくかを考える仕事って、情シスにとって戦略立案とも言えるコア業務だと思ってます。会社の進む方向と課題、それに対してのソリューションという位置づけなので。われわれも可視化、最適化にまで進んでいきたいです。
情シスが把握できれば現場のITはシャドウITじゃない
大谷:先ほどはデバイス管理の話がメインでしたが、SaaS管理に関してはジョーシスはどう考えているんでしょうか?
高山:意図せず増えてしまうSaaSって、いわゆる「シャドウIT」なんですけど、逆に情シスから検知できればシャドウITじゃなくなるはず。いち早く把握すべきというのが、われわれのスタンスです。
禁止されているのをかいくぐって使うのもシャドウITだけど、必要だから使い続けているけど情シスから見えないのもシャドウIT。いずれにせよ、シャドウITでありながら使い続けるのって、現場の意思だと思うんです。こうした現場の意思を止めるのは簡単かもしれませんが、やっぱり使い続けている理由があるはずです。
大谷:確かに。そんなに現場が使いたがっているなら、情シスとしては検証して、追認してもいいくらいですよね。
高山:だから、われわれはそのSaaSの評価まで踏み込むべきだと思っています。世界各国でレギュレーションが異なるので、それぞれの国で安全かどうか。単純に使っているSaaSを検知できるだけじゃなく、使い続けても大丈夫なのかまでをセットで提供していきたいです。これにより、「シャドウだったITがきちんと使われている」というところまで進めたらいいなと思います。
大谷:なるほど。長らく「シャドウIT=悪いもの」と考えてきたので、とても新鮮な意見だと思いました。
高山:どのSaaSも一番危ないのはコンテンツの共有なんです。だから、アクセス権限やパスワードの有無など、こうした共有の機能をきちんと評価してあげれば、情シスにとってもわかりやすいし、ユーザーも安心して使えると思います。
情シスのコア業務とはなにか? 学び、発信し、啓蒙していきたい
大谷:では、最後に今後の展開について教えてください。まずは今井さんから。
今井:目の前にある作業の手間は、Adminaでどんどん解消していきたい。これによって情シスにはコア業務に専念してもらいたくて、その1つがAIの利活用だと思っています。
現在ってSaaSの開発コストって、ものすごく低くなっています。私も実際にアプリを作りますけど、確かにとても簡単に作れてしまう。将来的にはSaaSはなくなって、ユーザー自身が自分でスクラッチし出すのではないかと言われています。これは現実にあり得る世界だと思っています。だから、われわれも、ユーザー企業も、よりAIを活用して、付加価値の高い方向に行かなければという危機感があります。
大谷:ジョーシスさんはいかがでしょうか?
高山:私はもっといいSaaSを使ってもらいたいです。先ほど話したとおり、昔は「シャドウIT」としてSaaSの利用ってブロックされていましたが、今後は使いたいSaaSをどんどん現場から上げてもらうような流れがよいと思っています。これを実現するため、SaaSをきちんと把握しつつ、リスクをマネジメントできる存在になりたいです。
確かにツールで自動化が推進されると、ノンコアの情シスの「作業」は減り、DX戦略立案のようなコア業務に専念できるはず。とはいえ、コア業務ってなにという情シスは多い。そのため、われわれは「ジョーシスラーニング」というコミュニティ、「ジョーシスアカデミー」という教育プログラムという2つの学びの場を提供しています。プロダクトフォーカスだけでなく、情報提供というギブを続けていきたいし、Adminaさんとも協調して「コア業務」に専念しようというメッセージを発信していきたいです。
今井:ジョーシスさんのような存在はすごくありがたいです。確かに競合する部分はあるとは思いますが、お互い切磋琢磨でして、市場を盛り上げていきたいです。
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