ゲームにおける影響を検証
最後にPCゲームにおけるIntel Baseline Profileの影響を検証しておこう。今回はCPUの使われ方の異なる2本のゲーム「Cyberpunk 2077」および「F1 23」で検証した。どちらも解像度は1920×1080ドットに固定、画質はプリセットの一番低い設定とし、極力CPU Boundな状況での検証とした。フレームレート計測はすべて「CapFrameX」を使用している。
まず、Cyberpunk 2077は画質“低”をベースにアップスケーラーやフレーム生成はオフに設定。内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。また、ベンチマーク計測中にCPU/GPU/システムそれぞれが消費した電力の平均値をPowenetics v2で計測した。
Intel Baseline Profileを適用することによりパフォーマンスが下がるのはCINEBENCH 2024やHandbrakeと同じだが、どの程度低下したかという点に関していえば、CINEBENCH 2024等よりもインパクトは小さい。
例えばCore i9-14900Kの場合Intel Baseline Profileを適用することで無制限運用時よりも平均フレームレートは約4%減、Core i7-14700Kの場合は約3%減、Core i5-14600Kに至ってはほぼ同じという結果となった。
感覚的にはGPUのOC/非OCモデルの差程度の感じだろうか。PL1/PL2を絞ればフレームレートも下がるが、消費電力的にはさほど旨みはない(CPUは大きく下がってもGPUの消費電力はあまり変化しない点にも注目)。
F1 23では画質“超低”とし、アンチエイリアスは“TAA&FidelityFX”、異方性は16Xとした。内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートとベンチマーク計測中にCPU/GPU/システムそれぞれが消費した電力の平均値を計測した。
Cyberpunk 2077よりもF1 23のほうがCPUパワーへの依存度は少なめである関係で、Intel Baseline Profileがフレームレートに及ぼす影響はCyberpunk 2077よりももっと小さい。この程度であれば「PCゲーマーとしては」Intel Baseline Profileを適用しても許容範囲と言えるのではないだろうか。ただ、ゲームの裏でOBSやDiscord等を動かすような場合はもっと大きな影響が出てくる可能性はある。そうした“マルチタスク”な状況下での検証は最終報告の後に出てくるであろう最終的緩和策を待ってからとしたい。
業界に与えるインパクトは大
簡単ではあるがIntel Baseline Profileの影響を検証した。CPUパフォーマンスは確かに下がるが、特にCore i9-14900Kに関してはCPU温度の低下など、扱いにくい部分が改善されるというメリットもあった。同時にいくつかの矛盾(Core i9-14900のPL1問題など)もあり、BIOS 2202のIntel Baseline Profileは急造感が否めないものだった。
今後インテルがどんな緩和策を出してくるかは不明だが、ネットは「Intel Default Profile」なるプロファイルがデフォルトになり、MTP無制限運用は警告画面(AMDのPBO設定にあるようなもの)入りでユーザーに選択させる形になるであろうと噂されている。
それが出てくるまでCPUが壊れたらどうする! という人や現在進行形でトラブルが出ている人は今すぐIntel Baseline Profileの適用を考慮すべき(無論自己責任で)だ。もしIntel Baseline Profileを適用して不具合が解消されればCPUのせい、と絞り込める。CPUの製品保証を使えるのか否かは不明だが、不具合が起きているなら購入店に相談すべきだろう。
筆者の率直な感想は「インテルよ、何年CPU作ってきたんだ?」なのだが、インテルがIntel 7(10nm)を6GHz近い超高クロック&大電力で長期運用した際の挙動を十分に予測しきれていなかったという事も推測できるので、フリーハンドでインテルを責めるつもりはない。
パワーリミット系を上限なしで運用することを良しとしていたマザーボードメーカー、ひいては高パフォーマンスが出るマザーボードを評価してきたメディアやユーザーにも負い目はある。パワーを無限に使わせるような運用は危ういと業界をリードしなかったインテルのスタンスにも原因がある。単純に何(誰)がEvilだと決めつけることはできないのだ。
インテルがどこまで踏み込んだ報告書を出し、安心して利用できる緩和策を出していくのか、今後の動向に注目したい。

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