東京国際フォーラムを中心に、東京・丸の内エリアで開催されるクラシック音楽の祭典『ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024』。5月3日(金・祝)から5日(日・祝)までの3日間、無料公演まで含めると90以上の公演が楽しめる音楽祭なんです。
クラシック初心者から通(ツウ)まで楽しめるイベントですが、今回はクラシック通のみなさんにおすすめの注目公演情報をお届けします。しかし私はかなりのクラシック初心者。そこで編集部のクラシック通、モーダル小嶋さんに注目リサイタルを尋ねました。どれもまだチケット購入可能な公演ばかりなので、ぜひ参考にしてくださいね!
オーケストラの妙技をラヴェルで堪能!
5月3日 (金・祝) 18:15〜19:00 公演番号:114「精密な音は愛と共に自らのルーツへ」
(曲目)
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
ラヴェル:ボレロ
https://www.lfj.jp/lfj_2024/performance/timetable/detail/114_modal.html
『ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024』は有料公演だけで90公演もあります。気になるものが多すぎてどれを選べばいいか迷ってしまう方は、まずオーケストラの魅力を堪能できる広い会場「ホールA」で行われるものをチョイスするのがおすすめ。その中でもモーダル小嶋さんが気になったものがラヴェルのプログラム。
モーダル小嶋さん「ホールA公演の中で、真っ先に気になったのがラヴェル。『オーケストレーションの天才』『管弦楽の魔術師』と言われた作曲家で、音色の重なりや、楽器の活躍する場面などが実に効果的に飛び出してくる作風が魅力です。
楽曲も定番から選びぬかれています。美しい旋律が楽しめる『亡き王女のためのパヴァーヌ』、多くの人に知られている名曲『ボレロ』も良いのですが、イチオシは『ピアノ協奏曲 ト長調』。
ムチの音で始まるという斬新な開始や、ジャズの影響を感じさせる進行、バスク地方の民謡を思わせる旋律など聴きどころはさまざま。とくに第2楽章のピアノ独奏の美しさは、ラヴェルの作品の中でも際立っています。
『オーケストラの妙技を堪能する醍醐味』を大きな会場で味わえるとあって、(私の好みもあるのですが)定番の楽曲だからこそ、ぜひ聴いておきたいコンサートですね」
近代ロシア作品でピアノの“鳴り”に浸りたい
5月3日 (金・祝) 11:45〜12:55 公演番号:122「静かな才が明らかにする近代ロシアの魂」
(曲目)
スクリャービン:ピアノ・ソナタ第5番 op.53
ラフマニノフ:ショパンの主題による変奏曲 op.22
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番 イ長調 op.82「戦争ソナタ」
https://www.lfj.jp/lfj_2024/performance/timetable/detail/122_modal.html
モーダル小嶋さん「スクリャービン、ラフマニノフ、プロコフィエフ……。クラシック好きなら知っているけれど、ちょっと地味かも、という人たちかもしれません。ところが、この3曲には、それぞれ聴き逃せない魅力があるのですよ。
スクリャービンの『ピアノ・ソナタ第5番』は、調性に乏しく、現代音楽にも通じる独特の魅力を持ちます。また、演奏にはかなり技巧が求められる難曲であり、ピアニストの技量も問われますね。
ラフマニノフの『ショパンの主題による変奏曲』は、自らも名ピアニストだったラフマニノフの手による、ショパンの原曲を複雑に展開させる大曲。この作曲家ならではのピアニズムが満喫できます。
プロコフィエフの『ピアノ・ソナタ第6番』は“戦争ソナタ”と呼ばれる楽曲群の一つで、ガッシリとした構造とロシア的な旋律が楽しめる作曲家の(ピアノ作品における)代表作です。
このように、三者三様の魅力があるプログラムになっており、どの楽曲でもピアノの“鳴り”が心地よく楽しめるはず。ピアノ好きなら、押さえておく価値があるでしょう。まだ若いピアニスト、マリー=アンジュ・グッチがどのような解釈を聴かせてくれるのかにも注目です」
ベートーヴェンの定番曲をどう料理してくれるか楽しみ
5月4日 (土・祝) 18:45〜19:30 公演番号:214「世界に新たな一歩を踏み出した霊妙のコンチェルト」
(曲目)
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61
https://www.lfj.jp/lfj_2024/performance/timetable/detail/214_modal.html
モーダル小嶋さん「『ヴァイオリン協奏曲』というジャンルの中でも、ベートーヴェンのものはとりわけ有名です。クラシックが好きな人なら、聴いたことがない……ということはまずないでしょう。
しかし、演奏家でもなんでもない私が言うのもなんですが、この曲はむずかしい。ベートーヴェンといえば交響曲第5番(「運命」)や交響曲第9番(「合唱付き」)の荒々しいイメージがある人も多いハズ。ですが、このヴァイオリン協奏曲では、どちらかというと優美で落ち着いた印象が強いのです。
楽曲としては有名、作品自体もとっつきやすいのですが、この曲を演奏する際は「どういうベートーヴェンの姿を描こうとするか」で出来上がりがかなり変わってくるように思います。『あの大作曲家が書いた名曲!』と構えるのか、『上品で、優雅にまとめよう』とするのか……。
指揮者とオーケストラ、そして独奏者がどのような解釈を聴かせてくれるのかがとても気になります。あっ、もちろん、そんなことを意識しなくても聴きやすい一曲ですよ。クラシック通から初心者まで、『どんなベートーヴェンが聴けるかな?』と足を運ぶ価値があるコンサートでしょう」
「ロマンティック」な魅力を室内楽で味わう
5月5日 (日・祝) 13:45〜14:30 公演番号:323「室内楽で描くロマンとモダン、対照的な美」
(曲目)
ヴェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章
シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 op.44
https://www.lfj.jp/lfj_2024/performance/timetable/detail/323_modal.html
モーダル小嶋さん「これは通好みの曲目のように思えるかもしれませんが、すごく聴きどころがありそうというか、押さえておきたいコンサートとしてぜひ挙げたいです。
ヴェーベルンは20世紀前半の作曲家。知的かつ前衛的な作風で名高く、楽曲はどれもきわめて緻密でシャープ。それゆえに『クラシック音楽』と考えると、とっつきにくい印象があるかもしれません。しかし、『弦楽四重奏のための緩徐楽章』は作曲家が若かりし頃に書いたもので、甘美な旋律が特徴的です。
一方、シューマンのピアノ五重奏曲は、このジャンルの中でも傑作とみなされており、親しみやすさも楽曲の構成も高い評価を受けています。
一見、まったく異なる楽曲が並んでいるように思えるでしょう。しかし、共通点としてはそれぞれの時代背景に即した『ロマンティック』な美しさがあるということ。それらを続けて聴くことで、クラシックの歴史の奥深さを感じられるはず。分かりやすい派手さはないかもしれませんが、私がこのイベントに訪れる人に『どれか1つだけ』勧めるとすれば、このコンサートかも」
クラシック通といっても好みは人それぞれあるかと思いますが、ぜひモーダル小嶋さんおすすめの公演もチェックしてみてくださいね。ちなみに私はモーダル小嶋さんの話を聞いて、ベートーヴェンのプログラムが一番気になっています。
残念ながらすでに売り切れてしまった公演もありますが、ここでご紹介したものを含めてまだまだチケット購入可能なステージはたくさんあるので、公式サイトをチェックしてみてください!
ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024
開催日:2024年5月3日(金・祝)・4日(土・祝)・5日(日・祝)
会場:東京国際フォーラム、大手町・丸の内・有楽町、東京駅、京橋、銀座、八重洲、日比谷
公演数:90公演(有料公演のみ)
主催:ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024 運営委員会 (三菱地所株式会社/株式会社東京国際フォーラム/株式会社KAJIMOTO)
特別協力:三菱地所株式会社
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