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東北大発ベンチャー、ハイブリッドスラスターの長時間燃焼に成功

2024年03月27日 05時50分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東北大学と同大学発ベンチャーのエレベーションスペース(ElevationSpace)の共同研究チームは、小型人工衛星を地球に帰還させることができる「ハイブリッドスラスター」の試験モデルによる長時間燃焼と、真空環境下での推力計測に成功した。エレベーションスペースが2025年に打ち上げを予定している無人小型衛星で実用化を目指す。

東北大学と同大学発ベンチャーのエレベーションスペース(ElevationSpace)共同研究チームは、小型人工衛星を地球に帰還させることができる「ハイブリッドスラスタ」の試験モデルによる長時間燃焼と、真空環境下での推力計測に成功した。エレベーションスペースが2025年に打ち上げを予定している無人小型衛星で実用化を目指す。 2023年10月から2024年2月にかけて宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力のもと実施した今回の燃焼試験では、燃焼室の内部をより実機に近い試験モデルとしたことに加え、同モデルに合わせて精度の高い推力計測システムを構築。さらに、燃料に酸化剤を流すための穴(ポート)を実機と同様の複数にして、大気環境下での長時間燃焼試験を実施することで、より信頼性・再現性のある推力データを取得できたという。 開発チームは、これまでに得られた各種試験の結果を受けてエンジニアリング・モデル設計の詳細化を進め、さらに実機に近い状態での燃焼試験を複数回実施することで、最終的なフライト・モデルの設計・製造を進めていく計画であるとしている。 固体燃料と気体/液体酸化剤を用いた今回のハイブリッドスラスターは、毒性の高い物質を使用しないため、取り扱いにかかる危険がなく、他の化学スラスタと比較して安全性が高い特徴がある。さらに、軌道離脱を実現する高い推力と、小型衛星に搭載可能な大きさ、経済性、安全性を兼ね備えることで、打ち上げ数の急増する小型衛星のデブリ回避や非デブリ化に寄与することが期待される。また、固体スラスタでは実現できない推力制御や再着火が可能であるため、月以遠の深宇宙探査といった長期ミッションにも利用できるという。

(中條)

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