ASCII Power Review 第243回
魚眼と超望遠も特殊レンズではなく楽しめたのだ
SIGMA渾身の最新レンズ「15mmF1.4」「500mmF5.6」「70-200mmF2.8」実写レビュー
2024年03月21日 10時00分更新
シグマからフルサイズ・ミラーレスカメラ用の大口径魚眼レンズ「15mmF1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE Art」(以下、「15mmF1.4」)と軽量超望遠レンズ「500mmF5.6 DG DN OS Sports」(以下「500mmF5.6」)が発売された。
ともに2月に開催されたCP+(カメラと写真のワールドプレミアショー)に合わせて発表された製品で、マウントはライカ、シグマ、パナソニックの「ライカL」と「ソニーE」がある。
魚眼と超望遠という両極端で、さらに個性強めな単焦点レンズを同時に新製品としてラインナップするあたりは、常にファンを驚かせてくれるシグマらしいサービス精神だ。
今回はこの2本にくわえ昨年12月に発売済の大三元望遠ズーム「70-200mmF2.8 DG DN OS Sports」(以下「70-200mmF2.8」)も試用することができたので、それぞれのレンズの特徴や実際に撮影した使用感をお伝えしていこう。
作例はシグマ「fp L」を使用し、6100万画素、9520×6328ドットで細部までチェックした。画質はJPEG FINE、カラー設定はスタンダード、ホワイトバランスとトーンコントールはオート、レンズ光学補正は初期設定(歪曲と倍率色収差はユーザーが設定できず、回折はオフで周辺光量とカラーシェーディングはオート)で撮影している。実写例はクリックすると1:1で表示される(6100万画素なのでご注意)。
世界初のF1.4を実現した大口径の対角魚眼レンズ
「15mmF1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE Art」
「15mmF1.4」は180度の画角を持つ対角魚眼で、開放F1.4という破格の大口径はもちろん世界初のスペック。すでにラインナップされている14mmや20mm、24mmの開放F1.4シリーズに属する主に星景写真に向けたレンズだ。
手にしてまず驚くのが巨大なサイズ。最大径は104mmで重量は1360gある。「14mmF1.4」も大型だったが、それよりもわずかに上回る。
側面操作系では不用意にピントが移動しないようMFのロック機能を搭載。レンズ後部にはカットしたシートフィルターが装着可能で、かぶせ式のレンズキャップにはフィルターを収納するポケットも備える。三脚座は着脱可能で、アルカスイス互換のクリックシューに対応。このあたりは「14mmF1.4」と同様の仕様だ。
魚眼レンズといえば広い画角と歪みのある写りが特徴。普段見慣れている景色も違う印象になるのが面白い。
久しぶりに魚眼レンズで撮影してみて気が付いたのがアングルによって見え方が変わるということ。特にシンメトリーな景色では撮影する角度を変えると異なる印象になるから不思議だ。
大口径を活かした作例と思い、都市の夜景を撮影してみたが、驚いたのは開放F1.4での描写力の高さだ。遠景なら中心部はもちろん周辺部も像の乱れがなく画面全域で高い解像感が得られる。周辺光量低下はあるものの夜景ならまったく気にならない。
さすがに近距離を開放F1.4で撮影すると像の甘さや周辺の乱れはあるが、F5.6程度まで絞れば整った描写になる。
魚眼レンズ特有の歪みがある写りは、絵ずらがワンパターンになりがちで、創意工夫を要求されるという難しさもあるが、大口径魚眼レンズという他にはない個性と価格やサイズに見合った高い描写力には魅かれるものがある。
1段暗いだけでここまでコンパクトに
「500mmF5.6 DG DN OS Sports」
今時の超望遠といえばズームか、単焦点だと開放F値明るめが主流だが、そこをあえてF5.6に抑えることで軽量化しているのが「500mmF5.6」の特徴だ。
最大径107.6 × 全長234.6mmとスペック上のサイズはそれなりだが、レンズ後方の鏡筒はスリムで重量は1370gと「70-200mmF2.8」クラスのズームと同等。カメラに装着して構えてみても超望遠は思えないほど軽快に感じる。
三脚座は90度ごとにクリックがあるので、縦位置横位置の切換も楽である。着脱には固定しているネジを六角レンチで外す必要があるが、鏡筒全体に固定するリングタイプに比べると三脚座自体が軽いので装着したままでも苦にならない。
実際に撮影しみると恥ずかしながら使い慣れない超望遠単焦点レンズということもあり、被写体を瞬時にフレームに収めるに苦労した。この辺りは慣れ(というか訓練)が必要だろう。
「fp L」との組み合わせでのAFはスナップ程度なら不満はない。ただ超望遠だけに一度ピントをロストすると迷いやすいので、被写体の距離によってフォーカスリミッターを活用したほうがいいだろう。
超望遠レンズなので、遠くの被写体をと安直な考えで撮り歩いてみたが、近所の川沿いに佇む鳥や街中の建物レリーフなど、標準的な画角のレンズとは違うアップの写真が撮れるのは思いのほか楽しかった。
また解像力も抜群でピントが合った部分は細部まで精細に再現され、思わず拡大して見たくなってくる。
レンズ内手ブレ補正は約5段分。しっかり構えれば1/30 秒でもブレを防止できた。とはいえ超望遠だけあって油断は大敵。ISO感度をあげて出来るだけ速いシャッタースピードで撮影する方がいいだろう。
ズームのような利便性はないが、超望遠レンズを軽快に扱えるが楽しかった。今後300mmや400mmなど他の焦点距離でもシリーズ化して欲しいところだ。
あこがれの大三元ズーム
「70-200mmF2.8 DG DN OS Sports」
「70-200mmF2.8」はズーム全域開放F2.8のいわゆる大三元と呼ばれる望遠ズーム。シグマも一眼レフ用はラインナップされていたが、意外なことにミラーレス専用レンズとしては初となる。
重量は1345gと、特に軽量ではないが、一眼レフ用よりは約460g軽くなっている。
鏡筒の主なスイッチ類の配置や、90度ごとのクリックや六角レンチでの着脱する三脚座も「500mmF5.6」と同等だ。
大三元望遠ズームといえばスポーツやポートレート向けというイメージもあるが、明るい開放F値を活かした街中のスナップも面白い。実際に撮った写真を見てもピント部の解像感をボケがより引き立ててくれ気持ちいい。
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