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銀河系に降り積もる水素ガスの起源を検証=名大

2024年03月07日 06時54分更新

文● MIT Technology Review Japan

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名古屋大学の研究チームは、銀河系に落下するガス雲の重元素(水素・ヘリウム以外の元素)量分布の、全天にわたる精密な地図を作成。中速度雲(視線方向の速度が毎秒30~100キロメートル以上の雲)が銀河系外に起源を持つ証拠を初めて検証した。

名古屋大学の研究チームは、銀河系に落下するガス雲の重元素(水素・ヘリウム以外の元素)量分布の、全天にわたる精密な地図を作成。中速度雲(視線方向の速度が毎秒30~100キロメートル以上の雲)が銀河系外に起源を持つ証拠を初めて検証した。 研究チームは2015年ごろから欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げた「プランク衛星」国際共同チームに参加し、星間ガスとサブミリ波のダスト放射の相関を研究している。今回は、中性水素が放射する21センチ波と、プランク衛星によるダストの2種類の高解像度全天地図を使って高速度雲(視線方向の速度が毎秒100キロメートル以上の雲)、中速度雲、太陽系周囲のガスのそれぞれについて、ダストと水素の比を示す地図を作製した。 その結果、「重元素量が太陽系周囲のガスとほぼ同じであり、超新星爆発などによって吹き上げられた銀河系噴水モデル的な物質の循環である」と説明されてきた中速度雲について、重元素量が太陽周囲の3分の1以下である成分が多く含まれていることがわかった。さらに、中速度雲が重元素量の多い銀河系のガスと混合している証拠を示し、中速度雲の大部分が系外由来の始原的ガスである可能性を明らかにした。 今回の研究成果によって、銀河系に落下するガス雲の起源について、二十年来の膠着状況が打開され、100億年規模の銀河系の成長進化について新たな研究展開が期待されるとしている。研究論文は、王立天文学会月報(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)に2024年2月28日付で掲載された

(中條)

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