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印南敦史の「ベストセラーを読む」 第28回

『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』(内田也哉子 著、文藝春秋)を読む

樹木希林さんが亡くなった後、内田也哉子さんが考えたこと

2024年03月07日 07時00分更新

文● 印南敦史 編集●ASCII

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「死というものがないと、生きることは完結しない」

 そんななか、とくに響いたのは「死」や「人生」についてのフレーズだ。

 たとえば詩人の谷川俊太郎さんのことばは、いまさらながら人生の残り時間を意識するようになってきた鈍感な私にとっても意味をもつものであった。

 「死というものがないと、生きることは完結しないんです。僕は死んだあとが楽しみ」(40ページより)

 また、解剖学者としての立場から人の生死と向き合ってこられた養老孟司さんについての著者の文章、そして最後に登場するご本人のことばにも強く納得させられた。

 今回、しばらくぶりに養老先生のバリトンヴォイスを電話越しに堪能しながら、身内との別れ、死ぬということ、戦争、コロナウィルス、社会、友達、子育て、家族などについて語らい、気づけば、なんだか、ずしりと柔らかい「まる」を抱いているような心地よい錯覚をおぼえた。言ってしまえば、今、こうして私が感じていることはすべて錯覚にすぎないのかもしれない。けれども、82年(筆者注:執筆時。現在は86歳)もの歳月、この世の理不尽と素晴らしさに付き合ってきたオモシロイオトナは、確かに言った。
 「マイナスの出来事をプラスに変えることはできるはずで、人生も同じことです」(100ページより)

 なるほど、たしかにそのとおりかもしれない。

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筆者紹介:印南敦史

作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。
1962年、東京都生まれ。
「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.jp」「マイナビニュース」などで書評欄を担当し、年間700冊以上の読書量を誇る。
著書に『遅読家のための読書術』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。

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