農業といえば「危険」というイメージを持っている人もいるかもしれない。この点について調べてみると、農業に5年以上従事している人のおよそ7割は、農作業中のヒヤリハットを経験していることがわかったという。JA共済では、農作業中のけがや事故のリスクへの対策も強く意識しており、農作業でのけがや事故を防ぐためのプログラムも提供している。このプログラムの体験意向をたずねる項目では、農業未経験者の72.5%、農業従事者の69.5%が「体験したい」と回答した。
危険を避けるためのプログラムには、一定数以上の需要があることがわかる。危険を危険のまま放置するのでなく、危険をマネジメントすることで、より就労しやすい環境を整えていこうとするJA共済や就労希望者の意図がわかる。
今回の調査結果について、フリーアナウンサー、エッセイスト、農業ジャーナリストとして活動する小谷 あゆみ氏は、若い世代が地方暮らしや農業に注目している理由として「地方暮らしというライフスタイルへの憧れと、ビジネスの視点で見る農業へのチャレンジがあると思います」と解説。
「経済が停滞している中で育った今の若い世代は、モノを所有することよりも『誰かの役に立つこと』に価値を見いだす傾向があると感じます。都会の1000人が働くオフィスより、田舎の10人のコミュニティーで過ごす方が、存在意義や自己有用感が感じられるという人も多いのではないでしょうか。
また『アグリビジネス』と呼ばれるように、今、農業は経済の視点からも見直されており、就業人口が少ないからこそチャンスも多い状況です。農業経営の第三者継承システムも整備され、地域や行政の支援も厚く、新規参入のハードルはぐっと低くなっています」とコメントした。
近年、従事者の高齢化などから就労人口の減少が問題視されることも多かった農業だが、今後、社会全体のウェルビーイングに価値を見出していたり、分野そのものにビジネスチャンスを感じている次の世代が参入し、業界全体の変革を引き起こすことも十分に考えられるだろう。かつて言われた「3K」から「3Y(やりがいがある、やくにたつ、ゆめがある)」に移り変わっていく農業に注目だ。