2つめの「固定費の圧縮」では、携帯端末事業からの撤退にあわせて人員を最適化したことが大きな鍵になる。
2022年末には213人だった社員数は、2024年3月末時点での社員数は約140人にまで縮小。約3分の2の規模にスリム化する。
「バルミューダの事業環境や置かれた立場、しなければないないことに合わせて人員を最適化した」と寺尾社長は説明する。
さらに、BALMUDA The Lightの生産拠点の移管や、広告宣伝費の削減、各種経費の削減などにも取り組み、販管費比率は2022年度の37.5%から、2024年度には30.7%に改善する方針も示した。
3つめの「家電カテゴリーの積極的な展開」では、先に触れたように主力製品のリニューアルに加えて、新たな家電分野に対する新製品投入に余念がない。
2023年10月に発売したBALMUDA The Plate Proは、6.6㎜厚の3層クラッドプレートと正確な温度制御の採用により、ステーキを絶妙な焼き加減で調理できたり、お好み焼きもお店で食べるのと同様のおいしさを実現できたりするホットプレートとして注目を集め、これまでに2万台を販売するというヒット商品になっている。また、2024年2月には、買ってきたパンや冷めてしまった揚げものなどを温め直すReBakerを発表し、ここでも新たな提案をしてみせた。さらに、新たな扇風機としてGreenFan Studioを3月19日に発表することを公表しているほか、新たな挑戦と位置づけている小型風力発電機については、JAXAの風洞施設での実験などを進めており、将来の普及に向けた取り組みを継続していることも示す。
家電カテゴリーの展開では、すでに成果も出始めている。
2023年度第4四半期(2023年10月~12月)における国内家電カテゴリーの販売実績は32億8600万円となり、四半期実績では過去最高を更新してみせたのだ。
さらに、2024年度は、第2四半期および第4四半期での黒字化を想定。「2024年春も新たなラインアップの製品群を投入する。下期にも複数の新製品の発表を予定している」とする。
また、海外展開も強化。中国や北米、台湾市場において製品ラインアップの拡充を実施したのに続き、タイやシンガポール、マレーシアにおけるブランド展開を開始。韓国ではProシリーズの販売を新たに開始するなど、海外での取扱製品を増やしている。
「2024年度は、7つの国と地域で、製品ラインアップを拡大する」と、寺尾社長は海外事業の拡大も視野に入れている。
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