古舘社長は「VMware買収」の影響による国内でのアプリモダナイゼーション促進に期待を示す
2024年のVeeam、BaaSの「Cirrus」やコンテナ保護「Kasten」にも注力
2024年02月09日 07時00分更新
データ保護ソリューションベンダーのヴィーム・ソフトウェア(Veeam)は、2024年2月8日、日本法人における2024年の事業戦略説明会を開催した。
今年、新たに注力するソリューション領域として「BaaS(Backup as a Service)」と「Kubernetesソリューション(コンテナバックアップ)」を挙げ、「Cirrus(シラス)by Veeam」や「Kasten K10」といった製品の特徴をアピールした。好調な既存ビジネスをさらに加速させるため、パートナーエコシステムもさらに強化していく方針。
またゲストとして、Kubernetesディストリビューションの「Red Hat OpenShift」を展開するレッドハットも出席し、OpenShift向けバックアップソリューションとしてのKastenの優位性を紹介した。
グローバルでついにNo.1ベンダーに、日本でも「2年以内にはトップに」
同社社長の古舘正清氏はまず、2023年のビジネスの振り返りから行った。
グローバル市場におけるVeeamは、IDCが発表した2022年下半期のデータレプリケーション/保護市場シェア調査において、ついに「単独No.1ベンダー」の地位を獲得した。古舘氏は、日本市場においてはまだシェアNo.1を達成できていないが、「早ければ来年、遅くとも2年以内にはトップになると考えている」と自信を見せる。
古舘氏によると、Veeam日本法人の成長率はグローバル平均を6年連続で上回っており、国内市場における他社との比較でも「業界平均のおよそ5倍のスピードで伸長している」という。そうした強い成長の背景には、ハイブリッドクラウド化の進行やランサムウェア被害の拡大をきっかけとして、既存のバックアップシステムを見直す動きが活発になっていることがあるという。
「昨年度は大手エンタープライズ企業、さらに中央省庁での大型案件がかなり受注できた。加えて、最近ではランサムウェア被害の多発を背景に、中堅企業市場でもシェアの拡大が加速してきている」(古舘氏)
またパートナーエコシステムにおいても、日立製作所とのOEMビジネス開始とサポート体制の強化、チャネルパートナービジネス拡大といったトピックを紹介した。
「VMware買収がアプリモダナイゼーションの促進につながることを期待」
仮想化/ハイブリッドクラウド環境に対応する「Veeam Backup & Replication(VBR)」を中心としたこれまでのビジネスも堅持しつつ、今年のVeeamが新たに注力していくのがBaaSとKubernetesバックアップの2領域だ。
古舘氏は、クラウドシフトやSaaS利用の加速に伴ってBaaSのニーズが、またアプリケーションモダナイゼーションの加速に伴ってKubernetesデータ保護のニーズが生まれつつあると説明する。特にアプリケーションモダナイゼーションに関しては、「BroadcomによるVMware買収」というニュースも影響を与えているという。
「VMwareの買収に伴って、国内の顧客やパートナーでは大きく3つの動きが起きていると見ている。(これまでVMware環境でホストしていたアプリケーションの)クラウドへのシフト、ほかのハイパーバイザへの移行、そして(コンテナ環境への)モダナイゼーションだ。これまで日本はモダナイゼーションを非常に躊躇して、仮想化で延命してきた側面がある。今回のVMwareの買収が、(国内でモダナイゼーションを促進する)ひとつのきっかけになるといいなと、心から思っている」(古舘氏)
レッドハット「KastenがOpenShiftのDay 2オペレーションを改善」
アプリケーションモダナイゼーションの基盤となるのが、Kubernetesで構成されるコンテナ環境だ。ゲスト出席したレッドハットの三木雄平氏は、エンタープライズ向けKubernetesとしてのOpenShiftの優位性を強調する一方、その採用拡大に向けた課題として、セキュリティやモニタリング、障害対応、バックアップといった、いわゆる“Day 2オペレーション”の改善を挙げた。
「OpenShiftも、Googleが提供するオープンソースの(オリジナルの)Kubernetesと比べればかなり使いやすい。ただしそれは“デベロッパーフレンドリー”という意味であり、エンドユーザーが触れて使いやすい製品かと言われると、まだまだ至らないところもある」(三木氏)
その課題をカバーするのがKastenだ。三木氏は、OpenShiftとKastenの組み合わせは「Day 2オペレーション向上のベストプラクティス」だと評価し、海外ではすでにその導入事例が増えているとしたうえで、次のように語る。
「Kastenは(OpenShiftの)Day 2オペレーションのための機能を、ユーザーフレンドリーなかたちで提供している点が非常に良い」「(コンテナの)バックアップやリストア、ディザスタリカバリ(DR)、ランサムウェア対策といったオペレーションが、直感的に実現できる」「クラウドで動かしていたアプリケーションをオンプレミスに動かす、あるいはその逆、といった操作も直感的だ」(三木氏)
シンプルなBaaS「Cirrus」を提供開始、日本向けローカライズも
もうひとつのBaaSについては、クラウドシフトによってオンプレミスインフラを持たない企業が増え、バックアップについてもクラウドサービスとして利用したいというニーズが高まっていると、古舘氏は説明する。
VeeamではこのBaaS領域において、オーストラリアのCT4から買収したCirrusを展開してる。現状ではMicrosoft 365向けのデータ保護サービスを提供開始しており、今後、Microsoft Azure向けサービスも提供を予定している。
Veeam ソリューション・アーキテクトの高橋正裕氏は、Cirrusの特徴として「直感的で自動化されたセルフサービスUI」「メンテナンス作業が不要」「オールインワンの価格設定でコスト予測可能」といった点を挙げた。
なお日本市場におけるBaaSビジネス強化に向けて、Cirrusのローカライズも行っている。GUIを日本語ローカライズしたほか、バックアップ先として日本リージョンのクラウド環境が選べるようになっている。