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印南敦史の「ベストセラーを読む」 第24回

『三省堂国語辞典から 消えたことば辞典』(見坊行徳、三省堂編修所 著、編集 三省堂)を読む

辞書から消えたことばたち「MD」「コギャル」など

2024年02月08日 07時00分更新

文● 印南敦史 編集●ASCII

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辞書から消えたことばたち

 エムディー[MD](名)①〔←Mini Disc=商品名〕デジタル録音・再生のための、直径六・四センチのディスク。「プレーヤー」②〔←missile defense〕⇨ミサイル防衛。
 第五版(2001)で採録。MDレコーダーの生産期間は1992年〜2020年で、家電量販店でも見かけなくなったことから知らない世代が増えつつあり、第八版(2022・令4で②(ミサイル防衛)もろとも廃項となる。他の記録媒体では「MO」、「磁気テープ」、「レーザーディスク」が一つ前の第七版(2014)で削除されている。(34ページより)

 こギャル[コギャル](名)〔俗〕顔を黒く焼いたりする、ファッションがはでな女子高校生など。〔一九九〇年代からの言い方。もと、大人の女性のまねをして遊女子高校生をさした〕⇨:ギャル。
 1990年代に世を席巻し、第五版(2011)で「流行のファッションやことばづかいをする女子高校生など」として採録されるに及んだ。しかし一時の風俗語であり、第八版(2022・令4)で削除。女子中学生の「マゴギャル」、顔を黒くした「ガングロ」、そして髪を銀色などにした「ヤマンバ」は掲載に至らず。また同版では「ルーズソックス」に〔一九九〇年代に流行〕という注記が加わった。
 ただし第三版(1982)で再録された「ギャル」は令和でも健在で、第八版の項目でも「テニスギャル」の「ギャル①」と「ギャル系メイク」の「ギャル②」とは、意味を分けて記述する。また、「きゃぴきゃぴ」の用例が「きゃぴきゃぴのむすめ」から「きゃぴきゃぴしたギャル」に変わった。「キャンペンガール」の短縮形としては「キャンギャル」を揚げる。21世紀になって「黒ギャル」「白ギャル」という言い方も広まるなど、「ギャル」概念の底堅さがうかがえる。(82〜84ページより)

 せきがいせんつうしん[赤外線通信](名)携帯(ケイタイ)電話どうしを近づけて、赤外線によってデータをやりとりする通信。
 携帯電話の普及で「メールアドレス等を交換する機能」という限定的な意味が日常的に用いられるようになって第七版(2014)で掲載された。その後、赤外線通信機能を持たないスマホの広がりによって上記の意味は聞かれなくなり、第八版(2022・令4)ですぐに削除。刊行後、「赤外線による通信」自体はリモコンなど幅広く現役なのに廃項とした判断への疑問も見かけたが、上記のような事情だったためと考えられる。
 携帯電話は1990年代以降、必需品への地位を駆け上り、2000年代前半には年間約4千万台以上が出荷された。第五版(2001)では「iモード」、「着メロ」、「Pメール」、「ピッチ」、第六版(2008)では「携帯メール」、「着うた」、第七版では「携番」が立項。しかし08年発売のiPhone 3Gを皮切りにスマートフォンへの代替が進み、世相の移ろいを反映して上記各項目は削除されている。「メル友」(第六版立項)、「写メ」(第七版で「写メール」から見出し語変更)はなお命脈を保つが、今後の動向を見守りたい。「ワン切り」は第六版で立項、第七版で削除、そして第八版で復活と忙しくしている。
 なお、90年代によく使われた「ポケットベル」「ポケベル」は第三版(1982)で立項され、現在も消えていない。(121〜123ページより)

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