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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第212回

マジシャンがSquareでキャッシュレス決済を導入してみた

2024年02月14日 16時00分更新

文● 前田知洋 編集●ASCII

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Squareのキャッシュレス決済

Squareでキャッシュレス決済を導入してみた

 キャッシュレス化がどんどん進んでいます。コンビニをはじめ、レストランや個人商店などでもクレジットカード決済で会計できる場所が増えてきました。

 それならマジシャンも……と心に浮かんだことがありますが、「クレジットカードの加盟店になるにはハードルが高い」という話も聞きます。

 そんなとき、「対面でカードで支払いしたい!」と要望をいただいて、クレジットカード決済に挑戦することになりました。マジックの出演料を対面で支払うのではなく、メルカリshopで販売しているコレクション用のビンテージトランプの購入を希望されたケースです。

 はたして、フリーランスのマジシャンは、無事に対面でのキャッシュレス決済(支払いを受ける側)ができるマジシャンになれるのでしょうか?

欧米ではiPhoneと共に個人のカード決済が普及

 米CNNによると(『IPhone credit card swipe war heats up』)、iPhoneに接続できるクレジットカードリーダーの競争が激しくなったのは2010年頃からだそう。こうした欧米での個人商店やフリーランス向けのサービスは、大手クレジット決済会社などがまず参入しました。

 その中でも、旧Twitter(現X)の創業者、ジャック・ドーシーが生み出した新サービス「Squre」が大きな話題になったのを覚えています。

Squareのキャッシュレス決済

2010年の初期のSquareデバイス。iPhoneのイヤフォンジャックからカードナンバーを読み取る

 話題になった理由は、iPhoneに接続するカードリーダーが100円硬貨サイズと小さいことと、スワイプされたカードナンバーが音声に変換されることでiPhoneのイヤフォンジャック(マイク端子)から読み取れることにありました(現行のリーダーはBluetoothを使用)。iPod touchでもAndroidスマートフォンでも利用できるサービスと製品が大きな特徴だったのです。

 このタイプのカードリーダーは筆者には馴染みがあり、特に欧米のマジックのコンベンションに行くとディーラー(マジックの道具を売る人)がよく使っていました。

 外国のコンベンションで買うマジックの道具は、財布の現金が少なくなっても「ここでしか買えない!」という思いと、「クレジットカードが使える」の合わせ技で、つい買いすぎてしまうんですよね。

筆者もSquareを選ぶことに

 さて、クレジットカードの支払いを可能にするべく、筆者が申し込んだのはSB Payment ServiceとSquareでした。

 しかし、SB Payment Serviceからは、「オンライン決済サービスにつきましては、日本国内に所在地を有する法人さまとのご契約のみとなります。 店舗向け決済サービス『端末決済サービス』は個人事業主さまでも可能です」と断られました。残念! でも、それは申し込む前に明記しておいてほしかったなあ……。

 一方、Squareは創業理念が「フライトインストラクター、ピアノの先生、花売り、屋台の経営者、Craigslist(米国の『ジモティー』みたいなサイト)の売り手、カフェで働く人々など向け」とのこと。結果的には、筆者にピッタリでした。審査もなんとか通り、電話やメールなどの問い合わせもすぐにつながる。とても親切、丁寧な対応で好印象です。

Squareのキャッシュレス決済

ICチップやタッチ決済に対応している「Squareリーダー」と同梱品

 とりあえずは、メルカリshopなどでも販売実績があるトランプの販売からスタートすることにしました。

 申し込みにはマイナンバーカード、実績のあるECサイトのURL、インボイス番号、銀行口座が必要。土日を挟んで5日ほどで承認されました(筆者の場合)。

サービスや商材によってNGがある

 まず、VISA、Mastercard、アメリカン・エキスプレスが承認され、さらに1週間ほどでJCB、Diners Club、ディスカバーカードのカードブランドの取り扱いが承認されました。

 ただし、クレジットカードでは決済を禁じている商材やサービスがあり、なんでも取引できるわけではありません。

 たとえば、JCB、Diners Club、ディスカバーカードは、以下のような決済は禁止されています。

・ワシントン条約指定商品
・海外宝くじ
・薬事法・健康増進法・麻薬取締法に抵触するもの(ドラッグなど)
・性風俗(児童ポルノを含む)
・犯罪を誘発するもの(銃・刀・手錠・盗聴・盗撮・スタンガン)
・収入印紙・切手・有価証券・仮想通貨、外貨・無記名プリペイド、現金(日本銀行券)
・連鎖販売(その疑いがあるものも含む)商材
・カジノ
・政党・政治資金団体・その他の政治団体(政治献金・政治家グッズなども含む)
・新興宗教・カルト宗教団体

 少し補足すると、ワシントン条約指定商品とは「絶滅の恐れのある野生動植物」の保護を目的に、取引を規制している製品のことです。漢方薬や爬虫類などの皮革製品、愛玩用の動物や植物が含まれます。

 盗聴、盗撮は「盗聴や盗撮に使用可能なガジェット」、カジノはオンラインを含むチップ(掛け金)の購入を指しているのが推察できます。

 取引禁止商品に、コレクション用のビンテージトランプが含まれていなくて安心しました。

専用アプリで使い方もカンタン

 審査が通ったら、商品/サービスの購入者のクレジットカードを読み取るためのリーダーを購入します。今回購入したのは「Square リーダー (第2世代)」(4980円)。iPhoneやiPadと、Bluetoothで接続して使います。

 対応ソフトウェアは「予約」「POSレジアプリ」「レントランPOSレジ」「リテールPOSレジ」などに対応。筆者は「POSレジアプリ」を使っています。

Squareのキャッシュレス決済

インターフェイスもシンプルで初めてでも使いやすい

Squareのキャッシュレス決済

登録した商品から会計することもできる

Squareのキャッシュレス決済

ギフトカードやディスカウントにも対応

 インターフェースも使いやすく、下に表示される「お会計」「取引履歴」「通知」「その他」から選び、金額を入力するか、登録した商品の数量を入力したあと、リーダーにクレジットカードを挿入、もしくはタッチしてもらうだけです。

 レシートは専用プリンターで印刷するほか、SMSやメールで送信することが可能です。

クレジットカードを使ったマジックはダメ

 先日、喜びのあまり、Xで「対面でのクレジットカード決済に対応しました」とポストしたら、フォロワーから「クレジットカードマジックはされないんですか?笑」とコメントをもらいました。

 おそらく、「笑」があるので、ジョークのコメントでしょう。ただ、マジレスすると、筆者はクレジットカードを使ったマジックはしないことにしています。

Squareのキャッシュレス決済

クレジットカードを使ったマジックはNGです

 観客からマジックのために、クレジットカードを借りたとしましょう。マジックを披露したあと、そのカードが仮に不正利用された場合、マジシャンとの間にトラブルが生まれるかもしれません。「李下に冠を正さず」ということです。

 「マジシャンのクレジットカードを使う」という発想もあるでしょう。しかし、前もって用意しておくわけですから、仕掛けがあるカードだと思われてしまうことは避けられないはず。同じカードを使うなら、マジックの終わりに観客にプレゼントできるトランプの方がスマートだと思っているのです。

使う方も注意が必要ですが、使われる方はより注意が必要

 消費者として、普段便利に使っているクレジットカード。今回、クレジットカードで支払いを受ける側の立場になってみると、いろいろなルールに戸惑うばかりです。

 しかし、フリーランスでもクレジットカード決済を受けられるなんて「すごい時代が来た!」と驚くばかりです。それに負けないよう、筆者のマジックも「すごい!」といわれるように頑張りたいと思っています。ただし、しつこいようですが、クレジットカードを使ったマジックはやりませんので……。

前田知洋(まえだ ともひろ)

前田知洋

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、チャールズ英国王もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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