DX支援などの「NEXTコア事業」売上高は3割成長、業界別DXソリューション提供も促進へ
新ブランド「KDDI BUSINESS」でKDDIが法人事業を強化へ
2024年02月05日 12時15分更新
KDDIは2024年2月2日、新たな法人事業ブランド「KDDI BUSINESS」を展開すると発表した。クラウドやデータセンター、5GやIoTなどのモバイル通信サービスを提供する国内外の法人事業強化を目的としたもの。
同日の決算発表会見において、同社社長の髙橋誠氏は、KDDI BUSINESSブランドを通じて「KDDIが持つ通信の強みを生かしながら、お客様のDX推進と社会課題解決に貢献する」と語り、パートナーと共に業界別DXソリューションを強化していく姿勢も説明した。
新ブランド立ち上げで法人事業を強化、「社会の持続的成長にも貢献」
KDDIでは、長期ビジョン「KDDI VISION 2030」で掲げた「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」の実現に向けて、KDDI BUSINESSブランドの立ち上げで法人事業を強化する。
髙橋氏は「世界的な潮流として、通信会社のビジネスがBtoCからBtoBへと拡大している」と語る。たとえば米ベライゾンがVerizon Business Solutions、米AT&TがAT&T Businessを立ち上げ、日本においてもNTTドコモが2022年1月から、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアの法人事業を統合したブランド「ドコモビジネス」を展開している。
「KDDI BUSINESSブランドは、(法人向け事業に)キャリアビジネスとして取り組むことを明確化したもの。これまでは企業に対する課題解決(ソリューション)に手段を置いてきたが、DXによって社会の持続的成長にも貢献できるという姿勢を打ち出した」(髙橋氏)
こうした事業姿勢の変更にあわせて、法人向け事業を担当するソリューション事業本部の名称を、2024年4月1月付で「ビジネス事業本部」に改称することを発表している。
また、2月にスペイン・バルセロナで開催される「MWC Barcelona」に初出展し、KDDI BUSINESSブランドをアピールするDX展示を行う考えも示した。同社のデータセンターブランドである「TELEHOUSE」や、コネクティッドカーとの接続、モビリティや宇宙、メタバースなどの“LX(Life Transformation)”展示も行う。
IoT回線やデータセンターを強みに、業界特化DXソリューションを創出へ
髙橋氏は、KDDI BUSINESSの強みとして「IoTやモバイル、データセンターといった国内外の数多くの顧客接点に加えて、培ってきた運用体制にある」と語る。
「顧客接点から得られる膨大なデータに、豊富なグループアセット、AIやデータ基盤を掛け合わせて、付加価値となるデータビジネスを推進していく。また、パートナリングを強化することで、各業界に特化したDXソリューションを創出することができる」(髙橋氏)
具体的な取り組みとして、コネクティビティデータセンター事業を拡大。すでに2023年度第3四半期(2023年4月~12月)累計の売上高は21.7%増と、高い伸びを達成している。欧州、北米、アジアにおけるデータセンター投資を積極的に進めており、2023年にはフランクフルトとパリに新棟を開設した。
IoT分野でも、グローバルにIoT回線数を拡大している。KDDI単体の全世界でのIoT回線の契約数は2023年12月時点で3950万回線に達しており、KDDIグループのソラコムが有する600万以上の回線契約を合わせると、4550万回線以上になる。「とくにコネクティッドカーの伸びが好調」(髙橋氏)であり、国内外合わせて2400万回線(前年同期比700万回線増)となっている。
各業界へのDXソリューション提供に向けて、パートナリングも強化している。
たとえば2024年1月には、物流業界におけるDX推進に向けて、椿本チエインと合弁で「Nexa Ware」を設立。同年4月から事業を開始する。新会社では、両社の強みを掛け合わせて、物流倉庫DXを実現。ベンダーフリーの最適設計とデータドリブンな物流倉庫自動化ソリューションを通じて、効率化と最適化を目指し、物流業界の課題解決に貢献するという。
「物流業界における労働力不足は大きな社会課題。これらの課題解決をするのはDXの力だ。データ解析に強いKDDIグループのフライウィールの力も活用していく。今後は、物流業界以外にも、業界別ソリューションやプラットフォームを構築する時代になってくる。KDDIはそこに注力していく」(髙橋氏)
さらに、ドローンの社会実装に向けて、日本航空とKDDIスマートドローンの資本業務提携を発表している。日本航空が培ってきた航空運送事業の技術と、KDDIの運行管理システム、通信インフラを生かして、安心安全なドローンの利用を目指すという。
DXを支援する「NEXTコア事業」は前年同期比30.4%増の大幅な伸び
KDDIの決算発表によると、ビジネスセグメント(法人向け事業)の第1~第3四半期累計業績は、前年同期比10.6%増の9121億円、営業利益は7.7%増1591億円。そのうち「NEXTコア事業」の売上高が、30.4%増の3690億円と大幅に伸長した。「IoT、データセンターが法人事業の成長を牽引したほか、モバイル通信料収入も増加した。通期では2桁成長を目指す」(髙橋氏)。
KDDIが次世代の基幹事業としての育成を目指すNEXTコア事業は、多様な働き方を支援する「コーポレートDX」、IoTやクラウドの活用によるビジネス変革を支援する「ビジネスDX」、データセンターやコールセンターなどのサービスで顧客の事業基盤を支援する「事業基盤サービス」で構成されている。
能登半島地震における回線復旧状況、NTT法を巡る議論にも触れる
なお今回の決算発表会見では、能登半島地震の被災地における、通信回線の早期復旧の取り組みにも触れた。移動基地局や既存基地局に200台の「Starlink」を活用したほか、避難所や災害対応機関などにも550台のStarlinkを提供。避難所での無線LANおよび充電設備の設置、通信事業者間の連携などを行ったと報告した。
「現時点で97%程度まで復旧している。残りのエリアについても、道路が開通したら3日以内に改善する体制を敷いている。現場が自走し、私の承認なしに対策を進めている。関係各所と連携し、通信サービスの早期復旧と支援に取り組む」(髙橋氏)
またこれに関連して、NTT法をめぐる議論にも触れた。
「Starlinkや船上基地局を駆使して応急復旧を行っているが、安定的に通信を復旧するには光ファイバーの確保が前提になる。光ファイバーの管路、電柱、局舎はNTTだけが保有しており、これを利用することで5Gをはじめとしたモバイルなどの通信サービスが届けられる。光ファイバーを含む特別な資産は、通信事業者間の公正な利用を担保すればいいというものだけでなく、災害時や有事に国民生活を脅かすような緊急事態においても利用が確保できるように、NTTが特殊法人としてしっかりと維持、管理する責務を国民に対して負っている。国が関与して、これを担保する仕組みを法的に支えているのがNTT法だ。研究成果の開示義務など、時代遅れと言われる点は見直すべきであり、そこに異論はないが、2025年を目途にNTT法を廃止するという、廃止を前提として時限付きで議論が進むことには違和感がある。非公開の自民党のPTの議論のみを反映した提言に沿って、強硬に進められることがないように意見をしていきたい」(髙橋氏)
KDDIでは2024年4月付の人事で、髙橋氏が渉外・コミュニケーション統括本部長を兼務することを発表している。この人事については「NTT法の課題があり、私が陣頭指揮を執りながら対応したいという気持ちを込めた人事である。ブランド力をより高めていく狙いもある」と説明した。