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「アジャイル開発」や「クラウドネイティブ化」の効果を実感している企業が国内でも増加

ITモダナイゼーションに成功した「先進」企業の違いとは? PwC調査

2023年12月18日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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「先進」企業とその他の間には大きな格差が

 「先進」企業とそれ以外の企業との間に、いくつかの成果で大きな格差が生じていることも浮き彫りになった。

 たとえば、社内デジタル人材の育成および採用において「期待以上の成果が出ている」と回答した企業は、「先進」では82%に達したのに対して、「準先進」では13%、「その他」は4%にとどまっている。

 またアプリケーションの更新頻度を見ても、「毎日」あるいは「都度/随時」と回答した企業が、「先進」では67%だった一方で、「準先進」では26%、「その他」では10%だった。つまり、ITモダナイゼーションの成熟度が高い企業ではアプリケーションの俊敏性が高まっており、経営環境の変化にITが追随できる環境が整っていることが裏付けられた。

「先進」企業とその他の企業の格差が浮き彫りに(社内デジタル人材採用/育成、アプリケーションの更新頻度)

 パブリッククラウドの活用効果(コスト削減や生産性向上、イノベーションの加速、顧客体験の向上など12項目)についても、「すでにそうした結果が出ている」という回答が、「先進」で63%、「準先進」で29%、「その他」で16%となった。なお米国における調査では、42%が効果を実感していた。

 「『先進』企業ではパブリッククラウドをうまく使いこなしており、リターンを得ている。日本の先進企業は、米国企業の平均を上回っている」(中山氏)

パブリッククラウド活用の効果を享受している割合にも大きな格差があった

「先進」企業とその他の取り組みの違いは

 それでは、「先進」企業とそれ以外の企業の取り組みはどこが違うのか。

 今回の調査において、50ポイント以上の差が出たのは5項目だったという。PwCコンサルティング ディレクターの鈴木直氏が、それぞれについて解説した。

 まず「パブリッククラウドの活用方針・戦略を全社レベルで策定」が、「先進」企業では95%に達しているのに対して、準先進では45%、その他では20%にとどまった。鈴木氏は「『先進』ではほぼすべての企業が全社レベルで戦略を策定している。パブリッククラウドの効果を享受している企業は、活用方針や戦略をきちっと策定している」と分析する。

 「システム開発におけるテストやデプロイの自動化を、ほぼすべてのシステムで導入済」という回答も、「先進」企業では92%に達したが、準先進では21%、その他では5%だった。「パブリッククラウドでは自動化を推進する技術が浸透しており、活用することでシステム改修時の生産性と正確性が向上する。全社レベルでCI/CDを実現することで、アプリケーションを高頻度で更新できる」(鈴木氏)。

 「アジャイル開発の活用を、複数チーム・大規模プロジェクトにも展開済」、「アジャイル開発を前提とした社内規程やルールを整備済」の2項目では、それぞれ「先進」企業が82%、90%を占めている。鈴木氏や「ウォーターフォール型や請負契約を前提とした予算計画、調達計画、開発/品質などの社内プロセスは、アジャイル開発と適合しにくいのが実態」としたうえで、「しかし『先進』企業ではこれを解決して、アジャイル開発を大規模プロジェクトや複数チームでの活用にまで広げている」と説明する。

「先進」企業では、すでに大規模プロジェクトでもアジャイル開発を活用している

 「システム開発の企画から運用までを主に自社社員が担当し、アジャイルも基本内製化」という点も、「先進」企業では、企画から開発、運用に至るシステム開発を、自社社員により実施しているとの回答が87%。アジャイル推進において、ブロダクトオーナーやスクラムマスター、エンジニアのすべてを自社社員で実施している企業は79%を占めた。

 「システム開発やアジャイル推進を、自社社員が中心となって実施することにより、座学に留まらず実際の経験を積むことが可能となり、社内のデジタル人材育成が促進されることにもつながっている」(鈴木氏)

自社社員主導でのシステム開発、アジャイル推進が、人材育成などの成果を生んでいると分析

ITモダナイゼーションの阻害要因は「経営層」「人材」「マルチクラウド化」

 ITモダナイゼーションの加速を阻害する要因として、PWCでは「経営層やリーダー陣の理解不足」「デジタル人材不足」「マルチクラウド化」の3つを指摘している。

 まずは、経営層やリーダー陣における、アジャイル開発やクラウドネイティブ技術に対する理解不足だ。鈴木氏は、これまでは現場からのボトムアップにより限定的な範囲で取り組まれてきたものの、全社レベルでの改革を実現するにはトップの強いリーダーシップが不可欠だと指摘する。「技術に明るいだけでなく、ビジネスにどう生かされるのかを理解し、それを社内で啓蒙するリーダーが求められている」(鈴木氏)。

 2つめのデジタル人材不足については、採用市場も人材確保の競争が激しく、大きな課題だと指摘した。「自社で担当する戦略領域を決めて、そこを対象に内製化を拡大し、それ以外は外部リソースを活用し、人員の最適化を行う必要がある」(鈴木氏)。

 3つめのマルチクラウド化では、既存システムとの連携、現状がIaaSとしての活用にとどまっていることでのコスト増加といった、新たな課題が認識され始めているという。「システム連携や、システム全体のガバナンスについては、テクノロジーやツールを活用することで解決できる」と提言した。

パブリッククラウドの普及に伴って、新たな課題が浮上している

 鈴木氏は「クラウドネイティブ化の試行やアジャイル開発の試行、テストや運用の自動化の推進といった取り組みまでは進みやすいが、そこから次のステップに移行するところに大きな壁がある」とし、「この壁を超えるには、社内のデジタル人材の育成や、内製化へのシフトが重要な要素になる。そこではトップの覚悟と強力なリーダーシップが不可欠。成功体験を蓄積し、それが次の挑戦を誘発する仕組みにつながれば、多くの成功体験を重ね、その成功体験を次のチャレンジの促進につながるという好循環が生まれる。この好循環が、 ITモダナイゼーションを加速する」とまとめた。

 なお、システム開発/運用における生成AIの適用領域では、「ユーザーからの問い合わせ対応」「各種規程やガイドラインとの整合性チェック」「他社事例およびベストプラクティスなどの動向調査」といったユースケースが上位に入り、既存業務の側面的支援に使われていることがわかった。

 その一方で、「エラーやバグ発生時の分析および解析」「プログラムコードのレビュー」といった人手がかかる部分、手作業からの転換で大幅な生産性と品質向上が見込める領域での利用が遅れていると指摘。「生成AIは利用範囲は、今後、拡大していくことになるが、この動きが、ITモダナイゼーションを加速するひとつの鍵になる」と述べた。

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