今回のひとこと
「ムーアの法則に限界が訪れているとの指摘があるが、それを超えるためのキーテクノロジーのひとつが光電融合技術である。通信だけでなく、データセンターやサーバーなどのコンピューティング領域、コネクテッドカーやPC、スマホなどのコンシューマ領域にも適用することになる」
IWON構想の実現に向けて
NTTが推進するIOWN構想に実現に向け、光電融合デバイスの開発、生産、販売などを行うのがNTTイノベーティブデバイスである。同社が2023年8月から本格的に始動した。
IOWN(アイオン=Innovative Optical and Wireless Network)構想は、光を中心とした革新的技術を活用した高速大容量通信、および膨大な計算リソースなどの提供が可能な端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想だ。ネットワークから端末までのすべてをフォトニクス(光)ベースの技術で構成する「オールフォトニクス・ネットワーク」、実世界とデジタル世界の掛け合わせによって未来予測などを行う「デジタルツインコンピューティング」、あらゆるものをつなぎ、その制御を実現する「コグニティブ・ファウンデーション」を実現することになる。
超低遅延および超低消費電力化を実現する光電融合技術は、IOWN構想で目指すオールフォトニクス・ネットワークの鍵になるとともに、デジタルツインコンピューティングや、コグニティブ・ファウンデーションの実現においても重要な技術に位置づけられている。
NTT研究所の光電融合技術部門が独立
NTTイノベーティブデバイスは、NTT研究所の光電融合技術部門を切り出して、2023年6月12日に設立。8月1日には、デバイス事業会社のNTTエレクトロニクスを統合し、光電融合デバイスの専業メーカーとして事業を開始した。
光電融合技術のNTTデバイスクロステクノロジや、アナログICのfJscaler、シリコンフォトニクスのAloe Semiconductorといった技術会社を傘下に持つほか、製造会社として、古河電工との合弁会社であるNTTデバイスオプテックおよび古河ファイテルオプティカルデバイス(FFOD)などのグループ会社があり、社員数は566人、グループ合計で1148人の規模を持つ。
NTTイノベーティブデバイスの塚野英博社長は、「ハードウェアの構成部品であるデバイスを扱う企業という点では、NTTグループのなかでは異端の存在である。培ってきた光電融合技術を、しっかりと事業化するために、関連する事業をひとつにまとめた会社である」と位置づける。
さらに、「もともとNTTエレクトロニクスは、長距離伝送を中心にした企業であったが、ここに、コンピューティングの世界を狙うためのアクセラレータを持ち込んだ。いわば、これまでのビジネスに、ターボチャージャーを搭載したようなものだ。コストを下げ、ボリュームを出す。これまでのNTTの事業とは異なるビジネスを行っていく」とも語る。

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