身近な事柄について考える習慣を身につけること
なぜバッシングの原因になるのか? それは、「不道徳」の基準は人によって異なり、もっといえば、自分の考えがない人ほど“声の大きな人”の意見になびいてしまいやすいからだ。しかし、それは善し悪しの問題ではなく、ある意味においては人間の本質だと考えることもできるのではないか?
だとすれば、そんな社会のなかで私たちが心がけるべきは、SNSで叩かれている誰かを大多数の人々と一緒に叩くことではないはずだ。それよりも意識するべきは、いま、自分の近いところにあることがらについて、「自分はどう感じるか? それはなぜか?」ということを考える習慣を身につけることだ。という意見もまた、ある人からみれば間違っているのかもしれない。だが少なくとも、私はそう考えている。
もちろんそれは簡単なことではないし、ましてやそうすることでキャンセルカルチャーがなくなるわけでもない。だが、各人がそういう意識を持つことこそが──それは小さな動きかもしれないが──大切なのではないだろうか。
そして、自分がどのような考え方を持っているのかを理解するにあたって、本書は助けになってくれるかもしれない。もちろん著者の意見のすべてに共感できるわけではなく、「ここはちょっと自分と考え方が違うかな」と感じる部分は私にもあるにはあった。しかし、それもまた当然なのだ。私たちはみなそれぞれが「個」であり、そうである以上、さまざまな考え方があることこそが自然だからだ。
つまり、個々人の考え方や主張がどうであれ、それもまた他の誰かからキャンセルされるべきものではないはずなのである。
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世界はなぜ地獄になるのか (小学館新書)橘 玲小学館
筆者紹介:印南敦史
作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。
1962年、東京都生まれ。
「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.jp」「マイナビニュース」などで書評欄を担当し、年間700冊以上の読書量を誇る。
著書に『遅読家のための読書術』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。
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