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「鵼の碑(ぬえのいしぶみ)」百鬼夜行シリーズ最新作(京極夏彦 著、講談社)

17年ぶりに京極堂に逢える MacBook Airと同じくらいの重さがあるようだが特に問題はないだろう

2023年09月14日 07時30分更新

文● ADさとー/ASCII(こーのス)

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それは、本と言うにはあまりにも厚すぎた
ぶ厚く、重く、そして京極堂だった

 「鈍器がとどくよ、鈍器がとどくよ。もうすぐ鈍器がとどくんだ」

 妻が満面に笑みを浮かべて言うのです。

 「京極堂の新作が、鈍器がお家にやってくる」

 前作『邪魅の雫』から17年、京極夏彦の最新作『鵺の碑』が9月14日に発売されるのです。

 ああ、実体本(物理的な実体としての本)を買うなんて久しぶりです。蔵書量が収納の限界を突破し、ひとたび震災に見舞われれば本の雪崩と床の崩落で生き埋めになる末路が予見できるようになって以来、私たちは読書環境を電子デバイスへと置き換えました。

 小説はKindleで。マンガはFireで。

 しかし、夫婦ともに読む小説は実体本で買った方がいい──というよりも、京極夏彦の新作はずっしりと重たい鈍器として手元に置いておきたいと思ったのです。

 総ページ数832ページ、厚さ4.7cm。それが『鵺の碑』のスペックです。このページ数からすると、『鉄鼠の檻』や『絡新婦の理』とほぼ同じ。手元の新書版を計測してみたところ、約620g。

Image from Amazon.co.jp
鵼の碑(ぬえのいしぶみ/講談社ノベルス)


 いいですね、ずっしりと重たい。

 “製本の暴力”とさえ言えるそのページ数で、私の腕には筋肉痛を起こすほどの負荷がかかり、脳は不可解な謎と民俗学的な蘊蓄(うんちく)に翻弄されつつも、そのすべてを嬉々として楽しむことでしょう。

 素晴らしい鈍器にして至高のエンターテイメント。
 ああ、届くのが待ち遠しい。

 ──などと書いていたところ、担当編集こーのスさんのメールに気がつきました。

 “ちなみに、予約しているのは1.2kg版ですか?”

 え、1.2kgって何?

 念のため自宅にある『鉄鼠の檻』ハードカバー版を計測してみたところ、約1.2kg。まさか、ハードカバー版も同時刊行されるのでしょうか? 

 慌ててAmazonの販売ページを見に行くと、ハードカバー版もあるではありませんか。……うかつでした。新作発表の報に浮かれて、新書版のことしか頭にありませんでした。

 総ページ数1280ページ、厚さ6.5cm。

 鈍器に相応しいのはこちらではありませんか。これはもう……買うしかない。

 発売日以降、私たち夫婦は物理的な重さに悲鳴をあげながら『鵺の碑』の世界に耽溺するのです。

百鬼夜行シリーズ新作長編「鵼の碑」

■書籍解説(Amazonより)
殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。
消えた三つの他殺体を追う刑事。
妖光に翻弄される学僧。
失踪者を追い求める探偵。
死者の声を聞くために訪れた女。
そして見え隠れする公安の影。

発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆は、縺れ合いキメラの如き様相を示す「化け物の幽霊」を祓えるか。

シリーズ最新作。

■種類・価格・ページ数
単行本(ハードカバー)版 3960円(1280ページ/14.5cm×6.5cm×19.4cm)
新書版 2420円(832ページ10.7cm×4.6cm×17.3cm)
Kindle版 2290円(1135ページ/容量6490 KB)

■Amazon.co.jpで購入

この記事を書いた人──ADさとー(Art Director sato)

雑誌「週刊アスキー」創刊アートディレクター/デザイナー。夫婦共々サブカルチャーの住人であり、小説やSF映像作品にも精通。京極夏彦の百鬼夜行シリーズも読破している。

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