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「Google Cloud Next 2023」レポート

LLM「PaLM 2」やコード生成/補完モデル「Codey」、画像生成モデルの「Imagen」ほか

「Vertex AI」の生成AI向け機能を強化、「AIを作る」発表まとめ

2023年09月11日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 Google Cloudが2023年8月末に開催した年次イベント「Google Cloud Next 2023」。前回記事で触れたとおり、初日基調講演では、「AIを作る」「AIを使う」「AIエコシステム」という3つの柱でGoogle CloudのAI戦略を進めることが明かされた。

 前回に引き続き今回も「AIを作る」、特に「Vertex AI」と生成AIに関連する新サービスや新機能についての発表をまとめる。

Google Cloud CEOのトーマス・クリアン(Thomas Kurian)氏

「生成AIモデル向けの構築ツール」としてのVertex AIを強化

 「AIを作る」の中心となるGoogle Cloudのサービスは「Vertex AI」。2021年の「Google I/O」で一般提供開始(GA)となった、マネージド型の機械学習プラットフォームだ。

 今年3月にはVertex AIでの生成AIサポートを発表しており、今回のGoogle Cloud Nextでは「生成AIモデル向けの構築ツール」という側面を強調した。Google CloudのCEO、トーマス・クリアン氏は「開発者はVertex AIの生成AIモデルやエンタープライズサーチ、会話などの新しいサービスを使って、AIモデルの発見、トレーニング、チューニング、テスト、評価、管理、実装ができる」と説明する。

 クリアン氏によると、すでにBox、DocuSign、Estée Lauder、Vodafoneなどの企業が、Vertex AIを利用して生成AIのプロジェクトを進めているという。たとえばEstée Lauderでは、ソーシャルメディアとレビューのデータを活用したセンチメント分析(感情分析)を行うことで、コンシューマーグループが持つ懸念などの理解を深めているという。

 会期中、Vertex AIではLLM(大規模言語モデル)「PaLM 2」のアップグレード(GA)を発表した。アップグレードにより、インプットのトークンの長さが4倍になり、38の新しい言語もサポートした。論文や法的な文書など、長いドキュメントの処理も容易になったという。

 またプログラムコード生成/補完モデルの「Codey」では、コード生成とチャットの品質が25%改善するという。画像生成モデルの「Imagen」もアップデートし、生成イメージの品質を改善した。

Imagenでは「Style Tuning」として、ブランドイメージに合わせたイメージを生成できる機能も加わった。

画像にデジタルウォーターマーク(電子透かし)を追加。Google CEOのスンダー・ピチャイ氏は「Google Cloudは、生成した画像にデジタルウォーターマークを付与できる最初のクラウドプロバイダー」だと述べた。

 そのほか、業界特化型のモデルとしてサイバーセキュリティ向けの「Sec-PaLM」、ヘルスケア向けの「Med-PaLM」も発表されている。

 合わせて、Anthropicの「Claude 2」、Metaの「Llama 2」、Technology Innovation Institute(TII)の「Falcon」といったLLM群も新たにサポートすることを発表した。これらを含め、Vertex AIではパートナーやオープンソースのモデルを100以上提供するという。

VertexAIのライブラリ「Model Garden」では100以上のLLMを利用できる

 顧客データの安全性についてクリアン氏は、Vertex AIを使って自社のドキュメント、SaaSにあるデータ、プロプライエタリデータでトレーニングやファインチューニングを行った場合でも、そのデータが汎用の基盤モデルに取り込まれることはないと説明する。「データ、コード、知的所有権を分離してコントロールできる。データの漏洩はゼロだ」と強調した。

 検索/会話機能を提供する「Vertex AI Search and Conversation」(GA)では、検索結果に対して追加の質問ができる「Multi-turn Search(マルチターン検索)」、複数のリポジトリやアプリケーションからさまざまなフォーマットでサマリを作成できる機能などが加わった。

 ベクトル検索を用いるグラウンディング(Grounding)も新しくなり、自社データとカスタムモデル、検索、会話を組み合わせることで、より精度の高い回答を得ることができると言う。基盤モデルの学習データで補完するかどうかを決定でき、ハルシネーションを削減できると言う。

 Google Cloudはすでに、製品や顧客情報などのデータを自社データベースからエクスポートするための「Vertex AI Embeddings」を発表している。

 また、プロプライエタリデータ、MongoDB、Redisなどのサードパーティのデータとモデルを接続するエクステンション開発ツール「Vertex AI Extensions」も発表した。モデルをAPIに接続し、リアルタイムのデータを得ることができる。Google CloudのデータやBigQuery、さらにはConfluent、Salesforceなどのサードパーティのアプリケーションとのコネクタ「Vertex AI Data Connectors」も紹介した。

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