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佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第217回

AppleWatchに話しかけて聴ければ便利、生成AI活用例

2023年09月10日 09時00分更新

文● 佐々木喜洋 編集●ASCII

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roomと生成AIをつなぐrooAIDJモジュール

 なにかと話題のAIはもちろんオーディオの世界にも影響を与えている。

 そのひとつが検索である。ストリーミングでは膨大な数の曲を再生できるが、同時に“聴きたい曲”をどうやって見つけるのかが問題ともなる。例えば、ジャンルで“ロック”と検索する際、自分の気分は“ロックというジャンルに該当する曲”を聴きたいのではなく“躍動的な曲”を聴きたいというあいまいな場合も多い。

 現在ではシューゲイズとかダウンテンポとかジャンル自体が細分化してはいるが、やはり聴きたい曲にぴったり当てはまるかはわからない。

 受動的に再生する曲を選ぶ際に役立つのは、ストリーミングサービスのおすすめ機能だが、このキュレーションにも、AIが活用されている。そして、より能動的に“こういう曲が聴きたい”という要求があるときに役立つのはAIを利用した検索である。

 例えば、Volumioは最新版のソフトウェアで「ChatGPT」を統合したAI検索「Super Search」機能を実現している。これは、Volumioの検索機能に統合されたモジュールで、生成AIのプロンプトのような自然言語の文を入力することで、聴きたい曲を選べる機能である。

 また、よく知られた「Roon」でもAI検索のオプションが用意されている。RoonのAI検索機能を紹介する。

Apple Watchに話しかけておすすめ音楽を聴くスタイルがいい

 紹介する「rooAIDJ」というモジュールは、Roonが標準で提供する機能ではなく、Carl-Werner OehlrichというRoonのユーザーが製作/公開しているRoon拡張モジュールのひとつだ。使いたい場合は、ウェブページでライセンスを購入し、必要なソフトウェアのインストールが必要になる。

 端的に言うと、ChatGPTのようなAIチャットボットに自然言語で指示しながら聴きたい曲のリストを作成し、そのリストをRoonの再生キューに挿入すると言うものだ。

 実際にどういうものかを知るためには、ミュンヘンで開催された「HIGH END Munich」のデモ動画を見るのがわかりやすい。この動画で質問をしている左の人物が、実は開発者のOehlrich氏で、Oehlrich氏の質問の内容を、右の人物がiPadに入力していく進行になっている。

 この動画でオペレーターは、手に持ったiPadに自然言語で質問文を入力。アプリであるrooAIDJがそれに回答して、曲のリストを作成するのが分かる。オペレーターはキーボードではなく、音声で入力をしている。最初の例では「1970年代の名曲を教えてほしい」と聞いている。するとrooAIDJはレッド・ツェッペリンの「天国への階段」やクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」など10曲ほどをリストアップする。

 これらの曲はリスト化されてRoonの再生キューに入る。この再生キューから先は普通のRoonの操作となり、ゾーンを指定してオーディオ機器で再生できる。

 アプリはApple Watchのバージョンもある。自然言語で音声入力してその結果をAIが再生リストに入れる様子はなかなかガジェット的と言うか面白い。

 このrooAIDJの内部では、OpenAIが提供するChatGPTの商用ライセンス(ChatGPT3.5)を使用している。

 実はRoonには、すでにRoonが自社開発した「Valence」というモジュールが組み込まれている。ValenceはAIを使用したインテリジェントなソフトウェアで、膨大なクラウド上のメタデータから、コンテキストや意味を考慮した検索をし、市場のストリーミングサービスのお勧め機能を超えるような精度を実現していると言う。

 しかし、rooAIDJのように、日進月歩の生成AIを応用することで、また新たな進歩や可能性を期待できると言う面もまたあるのではないかと思う。

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