Windows版が登場し、AndroidやChromebookとの
ファイル交換も可な「ニアバイシェア」
Microsoftの「近距離共有」(Nearby Sharing)とGoogleの「ニアバイシェア」(Nearby Share)は、名前もそっくりだが、機能もほぼ同じだ。
しかし、使い勝手に関しては、ニアバイシェアが有利だ。エクスプローラーでファイルを指定して右クリックしてメニューを選択し、宛先デバイスを選ぶという送信側の操作は変わらない。しかし、ニアバイシェアの方は、自分のデバイスから受信するとき、1回許諾すると、2回目からはユーザーの確認なしにファイルの受信ができる点が異なる。そのほか、フォルダーの送信が可能(近距離共有は不可)、通信相手をGoogleの連絡先から選択可能など、使い勝手の細かい点でもニアバイシェアの方が出来がいい。
Googleが提供するニアバイシェアは、もともとAndroidのファイル転送機能として2020年に登場し、のちにChromebookにも搭載された。2023年4月にベータ版が公開されたWindows用ニアバイシェアは、Windows 10/11で利用できる。登場タイミングから考えると、WindowsのProject ROMEに「インスパイア」された可能性が高い。インスパイアというよりもProject ROMEの成果を恐れたというべきか。
基本的なコンセプトは、Windowsの近距離共有と同じ。Bluetooth LEを使って、近隣のデバイスを検出し、ネットワーク(無線LAN、有線LAN)でファイルを転送する。しかし、プロトコルが異なるため、近距離共有とニアバイシェアでは接続はできない。Windows版ニアバイシェアのウェブページなどでは、Wi-Fiが必要なように書かれているが、実際には有線経由でも相手マシンと同じネットワークに接続していれば、ファイル転送が可能だ。また、近距離共有と同じく、Bluetoothのみでファイル転送をすることともできる。
ニアバイシェアでは、Googleアカウントを使った「自分のデバイス」(同じGoogleアカウントを使う)のほかに、Googleのアドレス帳による接続可能ユーザーの指定ができる点が近距離共有と異なる。
インストールすると、エクスプローラーの右クリックメニューに「ニアバイシェアで共有」というコンテキストメニューが追加され、ファイル送信の使い勝手はほとんど同じ。ただし、ニアバイシェアでは、ウィンドウにファイルをドラッグ&ドロップするという方法も使える。
メリットは、PCだけでなく、AndroidやChromebookともファイル交換が可能という点。デメリットはインストールが必要で、ARMプロセッサには対応していないというあたりだろう。
こうした違いを考えると、ニアバイシェアは入れる価値がある。インストールは面倒だがwingetも利用可能だ。
クロスプラットフォームを想定したWindowsの近距離共有は、コンセプトとしてよかったが、Microsoftの方針変更がアダになり、中途半端に終わってしまった。しかし、競合の結果として、Googleのニアバイシェアを生み出したのだとすれば、近距離共有はまったく無意味とまではいえないだろう。
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