その腹の中を聞いてみる
今回の「中・長期経営方針」の発表において、大塚商会の大塚社長は、売上高1兆円には、まったく言及しなかった。
会見終了後に、その理由を聞いてみた。
答えは、「Excelで線を引っ張れば、その時期は自ずと見えるでしょう」というものだった。メディアの立場からすれば、1兆円のマイルストーンの達成時期を、社長コメントとして明確に示してもらいたいところだが、大塚社長は煙に巻く。だが、その発言からも1兆円が達成可能な数字として捉えているのは確かだ。
実際、大塚社長の言葉に倣って、Excelで線を引いてみた。2022年度実績の売上高8610億円をベースに、7月26日に上方修正した2023年度見通しの売上高9540億円を当てはめると、前年比10.8%増の成長率となる。そして、この延長線上で、同じ成長率を当てはめると、2024年度には1兆570億円となり、1兆円に到達する。
これが狸の皮算用ではなく、現実的なのは、その実現に向けた追い風が吹くからだ。大塚商会の主要商材のひとつであるPCでは、2025年10月にWindows 10のサポート終了が予定されており、旺盛な買い替え需要が2024年度から始まると想定されている。これも1兆円到達を現実的なものにする要素だ。
ただ、「100年企業」を目指すという宣言が、今回の「中・長期経営方針」の本質的な意図であれば、大塚社長が、1兆円達成時期について、あえて明言しなかった理由もわかる。
100年企業をゴールとすれば、売上高1兆円はあくまでも直近の経営目標であり、その先の2兆円、3兆円、あるいはそれ以上の数字の方が、目標として意味を持つことになるからだ。今回示した営業利益率や顧客数増加といった経営指標についても、期間や時期を明確にしなかった理由も同様であり、大塚社長の視座がその先にあるためとも受け取れる。
大塚社長が言うように、「あまりびっくりする数字がない」のは、そこに理由がありそうだ。そして、それを補足するように、「短期業績の良し悪しではなく、中長期目線で確実な成長を果たしたい」とも語り、「今回の重要なメッセージは、100年企業になることを打ち出した点にある」とも発言する。
今回の会見のタイトルを、「中期経営方針」ではなく、「中・長期経営方針」としたところに、「100年企業」という長期的方針を宣言した大塚社長の意図が込められているといえそうだ。
「100年企業の実現」が、「中・長期経営方針」のメインメッセージであるとともに、「売上高1兆円達成」は財務上の通過点に過ぎないという裏のメッセージを感じ取ることができた方針説明でもあった。
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