売上高1兆円は中長期の視点では射程距離に入りつつあるが……
大塚商会が、「中・長期経営方針」を発表した。
同社は、2022年度実績で約107万台のPCを販売。国内PC市場全体の約9%を占める事業規模を誇る企業だ。複写機も年間約3万7000台を販売しており、市場全体の8%を占める。これらのシステム系、事務機系のビジネスだけでなく、インターネットサービスやPBXなどの回線系、インターネットで消耗品などを販売する「たのめーる」などのサプライ系、LED照明などの電力系など、取り扱い商品はオフィス全般に広がっている。
だが、これまでに、大塚商会が中長期での経営目標を打ち出すことはほとんどなかった。
2000年7月の上場直後に、中期経営計画を発表したことがあったが、それから約20年間に渡って、中期経営計画を対外的に発表したことはない。また、決算発表の際には、「営業利益率、経常利益率ともに7%定着」という経営目標を長年掲げてきたが、2019年度に7.0%を達成したものの、その前後は6%台が続いており、「定着」という目標は未達のままだ。
大塚商会の大塚裕司社長は、「中期経営計画を出しても、市場の変化が激しく、3年計画と矛盾するようなことが頻繁に起こる。計画策定や矛盾の説明に時間をかけるよりは、本業である販売に努力した方がいいと考えた」と、これまで対外的に発表してこなかった理由を説明する。
今回の中・長期経営方針の発表は、東証プライム上場企業の義務として開示したものであるが、大塚社長自らが、「あまりびっくりするような数字はない」というように、想定できる範囲のものであったのは確かだ。
掲げた経営指標は、営業利益では年平均成長率6%増、営業利益率および経常利益率は7%、ROEで13%以上、顧客企業数は2%増、企業あたり売上高は3%増を目指すという。しかも、これらの数字について、達成時期や期間などは明確にはしていない。その点では、迫力にかける内容だともいえる。
また、2022年度実績で売上高8610億円の同社にとって、売上高1兆円は中長期の視点では射程距離に入りつつあるが、これについても一切言及しなかった。
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